富士時報
第75巻第4号(2002年)

自動販売機の現状と展望

梶村 亨・亀谷 伸彦・宮岸外志久

2000年末の日本国内における自動販売機および自動サービス機の普及台数は約560万台を超え,国民一人あたりの台数でみると,世界一の普及率である。今や自動販売機は日常生活に欠かせない役割を果たしている。自動販売機に対する最近のニーズは,(1)地球環境に優しい自動販売機,(2)循環型生産体制への移行,(3)防犯対策の強化,(4)IT(Information Technology)化の推進,(5)自動販売機1台の売上げ(パーマシン)の向上など社会的要請・課題がある。本稿では,最近の自動販売機の製品化の現状と将来展望について述べる。

組込み機器用途向けJavaプラットフォーム

武田 久孝・中谷 充良・高田 正実

自動販売機を商品流通情報管理のコアに進化させるべく,自動販売機のネットワーク化および応用機能拡張を容易に実現するための基盤としてJavaプログラムを実行できるJavaプラットフォームを開発した。Javaプラットフォーム搭載の自動販売機は,ネットワークや携帯機器などのIT(Information Technology )を利用し,迅速かつダイナミックな機能拡張が容易になり多様なシステムに対応できる。本稿では自動販売機に適用したJavaプラットフォームのハードウェア,ソフトウェアについて紹介する。

Java搭載自動販売機

槙田 幸雄・中野 竹夫・寄田 浩司

自動販売機の中身商品販売ビジネスにおいて,その運営合理化は収益向上の重要課題である。その課題解決のため,富士電機では,IT(Information Technology)を駆使し,顧客ニーズにフレキシブルかつスピーディに対応すべく,Java言語で書かれたアプリケーションソフトウェアが動作する自動販売機を開発した。本稿では,このJava搭載自動販売機の特長,具体的な応用例,主要な構成技術などについて紹介する。

自動販売機オペレーション向けソリューション

平松 純一・福岡 良輔・村上 賢哉

飲料自動販売機での売上げを向上させ,オペレーション業務の効率向上を図るソリューションのコアシステムを開発した。オンライン自動販売機からの情報をもとに,補充訪問を計画し管理するシステム,自動販売機の設置場所に合わせた商品構成の推奨案を出力するシステム,コラムへの商品割付を適性化するシステム,コラムや見本缶の配置設計をビジュアルに行えるシステムなどからなる。これらのシステムと販売管理システムとを組み合わせて,顧客の目的と新たな業務体制にマッチした営業所業務ソリューションを提供する。

予防保全機能付きコインメック・ビルバリデータ

宮坂 和好・松藤 宏

コインメック,ビルバリデータでは,市場の要求に応じて偽貨や偽札に対する識別精度の向上や機構の高信頼性に取り組んできた。最近ではもう一歩踏み込み,いたずらや故障に対する予防機能が求められるようになってきた。これらの要求に対応すべく,予防保全機能付きの機種を開発した。主な特徴は次のとおりである。(1)いたずらや汚れ,故障に対する「予防保全機能」を持つ。(2)稼動時間やトータルパス数を不揮発性メモリに記憶する「稼動履歴機能」を持つ。(3)新しい機能を「拡張コマンド」として備えるため,従来型式と完全互換を保つ。

キャッパー機構搭載カップ自動販売機

濱本 賢一・和田 雅之・伊藤 孝文

カップ自動販売機内で自動的にキャップをかぶせ,持ち運び性だけでなく,香りの保持や保温にも効果があるカップ自動販売機を世界ではじめて開発した。これによりロケーションの拡大や売上げ増などにつながるものとして顧客の評判も良く,市場の活性化が期待できる。軽量キャップの搬送と姿勢の安定化が重要技術課題であったが,キャップを導くシュータ構造とキャップをすり鉢状の二つのガイドによる姿勢制御により解決した。

ペーパーフィルタ式全自動コーヒーマシン

隠塚将二郎・川端美季雄・村木 孝之

コーヒー市場の拡大を踏まえ,世界初のペーパーフィルタ式全自動コーヒーマシンを開発した。本機は新規開発の減圧抽出方式と,ロール式ペーパーフィルタによりコーヒー本来のこくやうまみを引き出し,おいしいコーヒーを安定して大量に販売することができる。本稿では,(1)開発の背景とポイント,(2)特徴,(3)仕様,(4)構造について紹介する。

エスプレッソブリュア搭載カップ自動販売機

上野 学・竹林 正弘・松本 尚男

カップ自動販売機の1台あたりの売上げ収益向上のため,急成長のエスプレッソコーヒーブームに合わせ,エスプレッソコーヒーとレギュラーコーヒーどちらも抽出できる他社にないエスプレッソブリュア機構を完成させカップ自動販売機に搭載した。本稿では,エスプレッソブリュア機構を主体に特長,仕様,構造について紹介する。

ホット&コールド小型カップ自動販売機

高木 利夫・森 幸二・高野 晃利

カップ自動販売機に対する最近の市場ニーズとしては,小規模ロケーションをターゲットとした省スペース化を図った屋内設置対応機が要望されるようになってきた。こうしたニーズに対応するため,機構の小型化技術を完成させ,シロップ飲料販売が可能なホット&コールド小型自動販売機を完成させた。本稿では,小型化技術を主体に特長,仕様,構造について紹介する。

デュアル店舗機

中野 一清・川上 浩二・達知 裕二

オフィス,工場,病院などの売店は,福利厚生の面から採算性をあまり問題にしない場合が多かったが,近年は長引く不況による経費節減のため独立採算を求められてきている。このようなニーズに応えるべく,朝や昼の繁忙時はオープンショーケース,その他の閑散時は自動販売機として運用することにより,福利厚生の充実に加え,人件費削減による経費の節減を狙ったデュアル店舗機を開発した。本稿では,その主な特徴と構造について紹介する。

マルチパーパス食品自動販売機

小林 達也・西 正博・田村 武史

近年,職域における売店機能の省力化(無人化)ニーズが高まっており,多種多様な商品を1 台で販売できる汎用性の高い自動販売機が求められている。このようなニーズに応えるべく,パン・スナック菓子類に加え,弁当,サンドイッチ,おにぎりなどの多様な商品の販売が可能で,かつガラス越しに商品搬送過程を消費者に見せ,安心と楽しさを与える商品キャッチャシステムを搭載したマルチパーパス食品自動販売機を開発した。本稿では,その主な特徴と構造について紹介する。

新シリーズ缶自動販売機

上田 治幸・斉藤 嘉一

缶自動販売機は,飲料メーカーのルートマンや,店の人によって,販売商品の補充や変更,現金の回収や補充が行われており,使いやすいことが求められている。缶自動販売機は,子供から大人まで幅広く利用されており,消費者が使いやすいことが求められている。そこで消費者と対面する扉,商品を収納し販売するラック,商品を冷却したり加熱したりする本体,販売や冷熱装置を制御する電装品を一新した新シリーズを開発したので紹介する。

自動販売機内飲料の品質保持機構

田村 嘉忠・石田 孝史

飲料を自動販売機内で長期加温維持していると,飲料の品質劣化が進むことが知られている。この課題を解決するために従来とは異なる方式の自動販売機の開発を行った。冷却または常温状態から販売時に加熱する「販売時加熱方式」,加温状態で保管されている個数を制限して管理する「2段分割保存方式」,販売状況により加温状態にする本数を事前管理する「投入数コントロール方式」などである。本稿ではこれらの特長,仕様,構造について紹介する。

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