富士時報
第75巻第7号(2002年)

決済機器・システム特集
ショーケース特集

決済機器・システムの現状と展望

小室 明夫・木内 哲夫

日本人の現金重視の伝統が,電子マネーの出現で変化しそうな時代である。この激しい変化の中で,セキュリティがますます重要になってきている。本稿では個人の決済に関する機器・システムへの富士電機の取組みと,今後の展望を述べる。また,硬貨・紙幣の簡単な歴史,最近の偽貨や偽札の話題と非接触ICカ-ドなどのトピックスを述べ,さらに決済の多様化に伴い,各分野で進んでいる決済の機械化状況を概説する。

進化する紙幣の搬送技術とシミュレーション

山縣 遵・高野 幸裕・川崎 哲治

紙幣の搬送技術が一般の紙葉類の搬送技術と異なる点は,折れたり,丸められたり,汚れたりして流通している紙幣も搬送対象であるということである。すなわち,紙幣を取り扱う自動装置には,1枚1枚の機械的特性が大きく異なる対象を確実に繰り出し,搬送し,収納できることが求められる。一方で高速化,小型化,低コスト化,静音化といった要求がある。富士電機ではこれらの問題を解決するために,1997年から,紙幣搬送のシミュレーション環境を構築し,新しい課題に挑戦して年々,紙幣搬送技術の改良を続けている。

高速紙幣入出金機(TB2000)とその高速搬送技術

大江 勝己・福島 慶之・中山 和哉

券売機用紙幣入出金機は,券売場での自動化および業務の効率化に貢献し普及してきた。最近では,集客処理のスピードアップや2,000円紙幣の対応,大容量収納でも現行機と置換え可能な小型・低価格化などさまざまな顧客ニーズに応え,高速搬送・集積技術を開発しお客様への利便性を向上させている。

サービスステーションの決済とセルフサービス化

吉崎 務・新妻 信行

サービスステーション(SS)の現金管理と作業の効率化のための装置として現金入出金機を開発・販売し,役立ってきた。1996年以降は,規制緩和に伴う低価格販売競争が激化し,その対応のため,経費削減の手段として,SSのセルフサービス化も進んでいる。本稿では,SSにおける現金入出金機を核にした現金での決済の仕組みと効果を,フルサービス型の店舗およびセルフサービス型の店舗について,紙幣・硬貨一体型の現金入出金機と併せて説明する。

決済機器におけるセキュリティ技術

池田 文幸・清沢 久・井澤 晴信

IT化社会の到来を受けコンピュータやネットワーク技術の進展と,経済活動のグローバル化やライフスタイルの変化など社会・産業構造の変革により,高度情報化社会に適した決済手段として「電子決済」が進展してきた。その中で,富士電機は少額の買物を対象とした「ICカードを中心としたリアル型電子マネー」について推 進事業者と共同で実験や実運用に参画し開発を進めてきた。本稿では,電子マネーシステムを中心とした決済機器におけるセキュリティについて,富士電機の対応と今後の取組みについて紹介する。

非接触ICカードリーダライタ

近藤 史郎・四蔵 達之

非接触ICカードのアプリケーションが急速な広まりを見せている。非接触ICカードは文字どおり外部機器との通信用の接点のないICカードである。このため,通信はリーダライタと呼ばれる無線装置によって実現される。富士電機は非接触ICカードシステムを成立させるうえでのキーコンポーネンツの一つであるリーダライタを開発し,各種決済機器に適用している。本稿ではその特徴とそれを支える技術について述べる。

札幌における電子マネー実証実験

堂面 俊則・板敷 穎二・中村 善宏

非接触ICカードがわれわれの身近なさまざまな分野で急速な広がりをみせている。特に,鉄道事業者を主とした交通系のシステムに採用され,その利便性で,電子乗車券のデファクトスタンダードになりつつある。非接触ICカードは乗車券以外にも電子マネーへの応用があるが,札幌でそれらを一体として利用できるようにする 実験が札幌総合情報センター(株)を中心として推進されており,富士電機は,これまでの経験をもとに,電子マネー対応自動販売機・小型入金機の機器の提供で参加しているのでその内容について述べる。

遊技店舗におけるバリューのフローと管理

小林 進・等々力 正行・宮下 茂光

パチンコホールは管理上,現金,貸し玉,貸しメダル,景品という媒体をバリューが転移していく場と見ることができる。富士電機はこれらの管理を自動化するシステムを1991年から提供している。このたび,遊技客の利便性を高め,店舗運営のIT化に貢献する4金種(1,000円紙幣,2,000円紙幣,5,000円紙幣,1万円紙幣)対応の新しい搬送システムとICカードで会員管理が可能な景品・会員管理システムを開発したので紹介する。

ショーケースの現状と展望

山田 英司

スーパーマーケット,コンビニエンスストア向けを主体とした冷凍・冷蔵ショーケースは,商品の売上げを増大させるための展示性,取扱い性,HACCP(国際食品衛生監視システム)対応の高鮮度管理,環境問題のフロン対応,省エネルギーなどに取り組み,製品単体および冷凍機を含めた冷却設備トータルの両面から開発を推進している。本稿では,ショーケースの現状と開発状況について紹介する。

スーパーマーケット向け冷凍冷蔵オープンショーケース
(ECOMAXシリーズ)

山田 英司・渡邊 健・浦川 典宏

商品の売上げ向上のための展示性,演出性を追求し,高鮮度管理,省エネルギー,環境問題に取り組んだ「スーパーマーケット向け冷凍冷蔵オ―プンショーケース」を開発した。主な特徴は次のとおりである。
(1)棚板構成の最適化,各部寸法の見直しにより,陳列商品の展示性,演出性を向上させた。(2)エアカーテン性能の向上,高効率エバポレータの開発,マイクロコンピュータ制御によって高鮮度管理,省エネルギーを実現した。(3)脱塩化ビニル,フロン対応,ケース質量の軽量化などによって環境保全に関する大幅な改善を行った。

コンビニエンスストア向けオープンショーケース

山口 一幸・前川 勝彦・上野 雅也

近年,コンビニエンスストアでは商品の多様化,多品種化が進み,ショーケースにおいても温度管理,展示性,陳列効率の向上が求められている。また,環境問題の高まりから省エネルギー,リサイクル,新冷媒化への取組みについても積極的である。これを受け富士電機では,コンビニエンスストア向けオープンショーケース「EFTシリーズ」を開発した。本稿では,「商品の展示性」「使いやすさ」「環境への配慮」について,本シリーズの概要と特徴を紹介する。

店舗機器センター監視システム

須藤 晴彦・草野 喜四郎・松本 進

食品流通業界では,先来の食中毒事故の発生などに対する管理強化や損益改善のためのロス低減・合理化を目的とした機器監視システムのニーズが高揚している。そのような背景を受け,店舗内におけるショーケース,冷凍機の運転状態管理を保守管理のセンターから行うシステムとして,業界で初めてWeb対応方式を導入した店舗機器センター監視システム「エコマックス‐Net」を開発した。本稿では,その概要と特徴を紹介する。

コンビニエンスストア向け冷凍空調統合蓄熱システム

石山 修・中山 伸一・藤本 裕地

コンビニエンスストアの消費電力の50%以上を占める空調機とショーケース冷却設備を対象として,24時間営業にも対応する業界初のコンビニエンスストア向け冷凍空調統合蓄熱システムを実用化した。このシステムは夜間に空調機の余剰冷房能力で蓄冷し,昼間に空調機の冷房運転と冷蔵ショーケースの冷却運転に利用する技 術,および冷蔵ショーケースの排熱を蓄熱槽に蓄熱し,空調機の暖房運転に利用する技術を開発することによって実現できた。本稿では,システムの概要と特徴を紹介する。

冷凍機外付けインバータシステム

石山 修・中山 伸一・後藤 幹生

一般のスーパーマーケット店舗では,総消費電力量の半分以上を占めるショーケース冷却設備の消費電力量の削減要求が強い。そこで,既設の一定速冷凍機に外付けして,省エネルギーを可能にした冷凍機外付けインバータシステムを開発した。後付けなので,少ない投資で工事期間もかけずに,店舗の省エネルギーを実現すること ができる。本稿では,そのシステムの概要と特徴を紹介する。

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