一歩先へ!富士電機の基盤技術

製品開発力強化に向けた、基盤技術を紹介します。

エポキシ樹脂フラックス

産業機器の小型化に伴い接合強度を高めたフラックスを開発

はんだ付けの際には通常、はんだ材料とともにフラックスという「はんだ付け促進剤」を使用します。フラックスには、はんだ表面の汚れ除去、母材金属の酸化防止、金属表面に対してのはんだのなじみやすさを向上させる役割があります。

産業機器の小型化に伴い、プリント板やそこに使われる電極も小さくなっています。一方、電極が小さくなるとはんだの使用量も減ってしまい、十分な接合強度が保てなくなる場合があります。また、電極が小さくなるほど、電極にかかる温度が上がります。

当社はロジンが主成分のフラックスを使用していますが、ロジンは高温に弱く、産業機器のさらなる小型化に備え、対策が必要でした。そこで、少量・高温でも耐えうる接合強度を備えたフラックスを目指し、エポキシ樹脂を主成分としたフラックスの材料開発を行いました。

従来のはんだに必要な洗浄工程を削減し、大幅なコストダウンを実現

フラックスの主成分であったロジンは、安価で入手しやすいため昔から広く使われています。ところが製品によってははんだ付け後に洗浄をしっかり行わないと、液化により金属とはんだとの間にすき間ができてしまったり、フラックスの 残渣ざんさ (注)が割れてしまったりすることで、プリント板と電極との間に水分が混入し、腐食、絶縁低下を引き起こしてしまいます。

これらの課題を補うため、近年エポキシ樹脂が注目されています。エポキシ樹脂を使用したフラックスは、フラックスの残渣自体がはんだ接合部の密着性を高めることで強度を保ち、絶縁性向上にも寄与します。

当社は2012年よりエポキシ樹脂フラックスの材料開発を始めました。原料の種類と添加量の組成を行い、その後材料メーカーが製作し、その結果を受け調整するといったサイクルを何度も繰り返しました。約4年間の研究の末、世界で初めてエポキシ樹脂を主成分としたフラックス入りはんだを開発しました。高い温度環境下で使われる産業機器向けにも適用できるだけでなく、フラックス残渣の洗浄も不要となりました。これにより、洗浄装置や洗浄液が不要となり、大幅なコストダウンも可能になります。また、洗浄装置や清掃管理が不要になるため、海外への生産移管もこれまでよりも容易になります。今後、汎用インバータなどのプリント板に適用していく予定です。

残った不要物

糸状のエポキシ樹脂フラックス入りはんだの断面図

開発者の声

技術開発本部 先端技術研究所 材料基礎技術研究センター 材料基盤技術研究部、生産調達本部 ものつくり戦略センター 設備技術部

製造からの声にも耳を傾けます
上記で紹介したクリーム状のフラックス入りはんだは、効率よく多くの箇所にはんだ付けを行うことができますが、不良品などが発生した際の細かい補修作業には向いていません。私たちはこの課題に対し、製造部門からの要望を受け、4本の糸状のはんだのそれぞれ中央にエポキシ樹脂と、はんだを固める硬化剤を注入した、糸状のエポキシフラックス入りはんだを開発しました。
今後もこのような材料開発を行い、当社の製品価値向上に貢献していきたいです。

記事の内容と所属は取材時のものです。