一歩先へ!富士電機の基盤技術

製品開発力強化に向けた、基盤技術を紹介します。

絶縁材料開発

あらゆる電気製品に欠かせない絶縁材料。「究極のレシピ」で品質を向上

(左)樹脂でモールドしたVCBの主要部品である真空バルブ
(右)樹脂の強度を高めるために充填剤の種類を見直した

絶縁材料は、変電設備、パワー半導体、インバータ、モータなど、さまざまな製品に使われています。電気を通す「導体」や回路部品の周りを絶縁することにより、放電(アークなど)などが引き起こす機器の故障を防ぐ役割があります。空気、油、ガスなどさまざまな絶縁方法がありますが、私たち絶縁・材料グループでは、主に樹脂による絶縁を研究しています。

樹脂材料は、主剤、硬化剤、触媒、可塑剤、着色剤、充填剤、難燃剤などを混ぜ合わせて生成されます。食材の組み合わせや調味料の加減で料理の美味しさが決まるように、樹脂においても分子構造や配合の違いなどにより、絶縁性能や強度に大きな差が生じます。無数の組み合わせの中から、「究極のレシピ」を作ります。

VCBの小型化に貢献する高強度の樹脂を開発

現在、私たちは、C-GIS(ガス絶縁開閉装置)に使われるVCB(真空遮断器)向け樹脂材料や成形方法の開発に注力しています。樹脂を使った場合、空気絶縁と比べて絶縁に必要な距離を10分の1に縮小することができます。絶縁距離が短いとVCBの中に入っている隣り合う真空バルブの間隔を狭めることができ、製品の小型化にも寄与します。ところが、樹脂をVCBに使用するには強度が足りず、空気で絶縁を行っていました。

そこで、樹脂の強度を高めるための材料開発に着手しました。さらなる強度改善を図るには、機械強度を左右する充填剤など原材料の見直しが必要であったため、新たなレシピを作るべく、何度も研究を重ねました。2016年に24kV VCB用の樹脂材料を開発。この樹脂を適用することで、VCBの部品を約50から60%小型化することが可能になります。現在はさらに84kV VCBや24kVおよび36kV C-GISの固体母線適用を検討しています。

本年度からは、樹脂の絶縁性を高めるための研究に着手しています。それには、電気の「振る舞い」を理解することが必要で、ナノメートル(100万分の1ミリメートル)よりも小さな原子・分子レベルの計算ができるシミュレーション技術(量子化学計算)を開発しています。樹脂の絶縁性を2倍以上に高めてGISなどに適用することで、変電所の大きさを1/2にすることも可能です。

開発者の声

技術開発本部 先端技術研究所 基礎技術研究センター 材料基盤技術研究部

材料開発で環境保護にも貢献します
近い将来、強度、絶縁、耐熱などさまざまな特性をトータルで高めるための計算科学に基づいた材料設計ツール(シミュレーション)を開発したいと考えています。

また、草木などの自然物を原料としたリサイクル可能なプラスチックや、樹脂の開発にも取り組んでいます。これが製品化されれば、CO2の削減にもつながり、環境保護に貢献できます。絶縁材料やインバータの筐きょう体などに使われたら、ワクワクしますよね。

記事の内容と所属は取材時のものです。