富士時報
第64巻第9号(1991年9月)

制御を前提とした設計思想の確立を

示村悦二郎

計測・制御技術の動向

竹内  実,黒岩 重雄,安原  毅

計測・制御技術について、最近の技術・市場動向および富士電機の現状、展望を述べる。また、フィールド計器として、新世代電子式発信器FCXシリーズの展開、光計装システムFFIの拡充、流量計の拡大など、センサ、フィールド計装技術の展開を記述する。さらに制御技術として、トータルオートメーション(TA)、EIC統合・CIM化を推進する分散形制御システムMICREXの拡大、中小規模向けミニEICシステムMICREX-MSの投入、アドバンスト制御・AI技術の適用について概括する。

FCXシリーズ・FFIシステムの拡大

湯原 忠徳,渡部 好三

富士電機のフィールド計装システムは、FCXシリーズ発信器を中心として構成される電子式と、光ファイバ式フィールド計装システム(FFI)機器を中心として構成される光式に大別される。
本稿では、FCXシリーズ発信器およびFFIシステムに新たに加わった製品を紹介する。FCXシリーズには高温高真空用差圧・圧力・レベル発信器が、FFIシステムにはFCXシリーズ発信器の光バージョンおよび電動バルブアクチュエータが新しくファミリーに加わった。

新セラミック・スマート電磁流量計

多胡敬一郎,伊藤 悦郎

ファインセラミックスの利用、マイクロコンピュータの応用などに関する最新の技術により、セラミック測定管・白金電極で統一された検出部と積算機能、多重レンジなど豊富な機能を標準装備した変換部で構成される新形電磁流量計を開発した。
FCXシリーズ発信器で完成されたスマート仕様を採り入れており、一般仕様からスマート仕様へのグレードアップが客先現場でも容易な通信モジュールの組込みで達成できることが大きな特長である。

新世代ハイブリッド記録計

入間野泰夫,木佐 一之

インクジェット技術を応用した新世代の工業用ハイブリッド記録計PHシリーズを開発した。
独自のインクジェットヘッドの開発により、次の特長を有している。
(1) 高品質の記録(業界初の6色連続記録、6色ディジタル印字、目盛線・TAG No.の印字による見やすい記録)
(2) 業界最小・最軽量〔奥行199mm,重量2.8kg(PHC)・6kg(PHA)〕
(3) 簡単操作(大形蛍光表示管による対話方式、マニュアルレス化)

新形赤外線ガス分析計

中野 昌芳,宇津木喜弘,赤尾 幸造

新しく開発した非分散形赤外線ガス分析形(形式ZRF、ZRG)は、専用ジルコニア酸素センサにより、O2を含め最大3成分の同時測定が可能である。また、マイクロプロセッサの搭載により、多機能化と操作性・保守性の向上を図り、特に分析装置としてまとめる場合に必要とされる自動校正、O2換算など種々の機能を内蔵できる。これにより、分析装置を従来よりもシンプルで経済的に構成できるため、公害計測をはじめとしていろいろな分野に適用可能である。コンパクトな19インチサイズのZRFと、低濃度測定用のZRGの2種類あり、それぞれ計量法による型式認定試験に合格済みである。

インテリジェントβ線厚さ計

東  泰彦

最近のβ線厚さ計は、従来の品質管理機器からプロセスラインのセンサとして、省資源、省力、高品質が要求されている。本装置はこれらの要求に安価で対応するために開発したインテリジェントβ線厚さ計で、検出部、厚さ演算部、グラフィック表示部に分けて、その概要、構成、特長などを紹介する。特にグラフィック表示部は18画面を標準画面としてもっており、多様なプロセスラインごとに最適画面の構成ができるようになっている。

EIC統合化制御システムMICREXの展開

生駒 雅一

「EICの統合」という思想は、従来個別に考えられていた電気制御 (E)、 計装制御 (I)、 コンピュータ (C) の三つの分野を一つの統合化されたシステムで実現するという考えである。富士電機では主に大規模プラントや設備を対象とした「EIC統合化制御システムMICREX」および比較的小規模なプラントや設備を対象とした「ミニEIC統合化制御システムMICREX-MS」の二つの制御システムを有している。これらのシステムのEIC統合化へのアプローチについて紹介する。

アドバンスト制御技術とソフトウェアパッケージ

黒谷 憲一,高野 正心,伊藤 正満

今日では、アドバンスト制御は広く適用されるようになっているが、この分野の研究は現在も活発に進められ、その成果として、新しい理論や制御方式が生まれてきている。これらは今まで達成できなかった制御性能の実現や、適用対象外としてきた領域の自動化を進めるためのツールとして期待される。
本稿では、最近新たに開発した制御技術およびその実現を支援するソフトウェアパッケージについて紹介する。

事業用火力発電設備の計測制御技術

井上 芳範,若杉 繁実,小沢 秀二

最近の火力発電所は高頻度起動停止、迅速な負荷調整対応が可能な中間負荷運用が要求されるようになった。計測制御装置は運用の変化に伴い、自動化範囲の拡大や負荷追従性能向上を実現するうえでますます大規模・複雑化し、総合ディジタル化が不可欠となってきている。
富士電機における本分野の計測制御システムとしてボイラ制御を主体に、ボイラ・タービン制御装置、バーナ自動制御装置、ボイラ・タービン補助制御装置および運転・保守支援装置について紹介する。

エネルギー総合管理システム

田代 計利,副田 広明,田村 哲郎

製鉄業はエネルギーの多消費産業であり、製鉄所におけるエネルギーの発生と消費は生産活動と密接に連動し、複雑に絡み合っている。したがって、エネルギーの最適配分を図り、エネルギーコストをいかに低減させるかが鉄鋼業においては重要な課題となっている。
本稿では新日本製鐵(株)八幡製鐵所のエネルギーセンタにおけるエネルギー運用の最適化および自動化・遠隔監視制御化により大幅な合理化を実現したシステムを紹介する。また、本システムに適用したエキスパートシステムについても紹介する。

セメント工場におけるEIC統合化

梅基 一生

セメント工場のEIC統合化システムとして、分散形制御システムMICREXが採用される例が多くなってきている。そこで本稿では、MICREXを主体とするEIC統合化システムの概要を説明し、さらにコンピュータシステムを中心に、今後のシステムの動向についても紹介する。

昭和四日市石油(株)向けタンクヤード管理システム

小川 良美,戸田 高道

近年、製油所では、場内の統合化や自動化が多くみられるようになってきている。統合化を行うには、いろいろなシステム機器を結合する必要があり、いかに効果的に結合するかが統合化のよしあしにつながることになる。本稿では、コンピュータとテレコントロール装置、分散形制御装置(DCS)およびIBM社のACSを結合した例として、昭和四日市石油(株)向けのシステムについて、導入目的、特長、機能、構成などについて紹介する。

最近の石油出荷管理システム

島田 耕司,後藤 正晴

石油出荷管理システムは、油槽所にて灯・軽油やガソリンなどの石油製品をローリー車に定量積込みを行い、かつ、管理データを収集する装置である。本稿で紹介するシステムは、ハッチ管理機能を搭載した出荷管理用コンピュータ、積口での定量出荷制御を行う出荷コントローラとハッチ管理システムとから構成される。各構成機器の機能、ハードウェア構成などについて紹介する。本システムはすでに、昭和シェル石油(株)市川油槽所、西戸崎油槽所に納入されて順調に稼働中である。

化学プラントへの中小規模DCSの適用

菅沼 利昭,吉野  稔

近年、化学工業分野では多品種少量生産方式の合理化をめざした計測制御・運転管理システムの動きが活発化してきている。中小規模化学プラントについても変種変量生産へと産業構造が変化し、多品種少量製品、特殊仕様製品の生産に適用するバッチプロセスに対し、よりレベルの高い技術開発が要求され、これに適用される中小規模システムがますます重要になってきている。本稿では、化学プラントへの中小規模分散形制御システム(MICREX-MS)の適用について述べる。

乳業プラントにおける計測制御システム

御厨  隆,近藤 英之

近年、乳業業界では将来の畜産物の貿易自由化に対する対策として工場の合理化、FA化を推進している。富士電機は乳業プラントに長年実績を持ち、今回それをベースにして大規模計測制御システムを某社向けに納入した。本稿では、乳業プラントの概要および乳業プラント向け大規模・中小規模計測制御システムについて一般的な内容を紹介する。

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