富士時報
第65巻第12号(1992年12月)

保護制御技術の動向

竹村  健,松本 俊郎,伊原木永二郎

最近のマイクロエレクトロニクス技術の進歩により、高品質の電力を安定に供給するための保護制御技術と装置の機能は年々高度化している。監視、制御の基本コンポーネントであるプログラマブルコントローラ、保護リレー用のハードウェア系列などとともに、その応用製品の開発経過および最近の技術動向について述べる。また、電力を供給する関連装置を含めた総合ディジタル化システムの技術課題、将来動向についても概説する。

保護制御装置用ハードウェア

竹内 玲治,尾崎 修二,千原  勲

電力を供給する設備の保護制御装置の性能、機能は年々高度化しており、これらの技術の基盤となるハードウェアも高性能になってきている。マイクロプロセッサを使ったディジタル形保護制御装置の開発経緯と最近の代表的なハードウェア系列について述べる。
装置形ディジタルリレーでは、32ビットマイクロプロセッサを中心に比較的大規模な保護制御システムを構築でき、ユニット形はコンパクトな構造で電気所内の分散形保護制御システムを構成できるようになっている。

多端子形フォルトロケータ

吉田  高,戸井 雅則,川尻 幸一

電力系統においては送電線の長距離化、複雑化が進展してきており、送電線上の故障地点を迅速かつ正確に特定することが要求されている。
富士電機では最新のディジタル技術を駆使した多端子形フォルトロケータを開発し、多くの納入実績をあげてきた。多数の分岐点を有する複雑な送電線に対しても、高精度の標定が可能であるという特長を有している。 

ディジタル形VQ自動制御装置

吉田  高,根岸 久方,金森 重晴

電力系統の巨大化、重潮流化に伴い、基幹変電所に設置されるVQ自動制御装置の使命、役割はますます重要化してきている。
富士電機では、静止形VQ自動制御装置の機能向上を図るため、プログラマブルコントローラを適用したディジタル形VQ自動制御装置を製品化した。ディジタル化により、多機能化、高精度化、高速化を実現している。

ディジタル形監視制御システム

湯谷 浩次,上蔀 誠二,天笠 弘一

最近のマイクロプロセッサ、LAN技術の急速な進歩に伴い、送変電所における監視制御システムは、運用保守面での機能、性能、信頼性など、その内容は一層高度化してきている。
本稿では、ディジタル化された監視制御システムに求められるニーズ、システムへの適用技術、システム構成などを中心に概要を紹介する。 

発電所用保護リレーシステム

伊原木永二郎,井口 研二,西山  聡

発電所をはじめ、高品質の電力を安定に供給するための設備、これら設備の監視・制御・保護装置の機能は年々高度化しつつある。
発電所には、他の電気所にない特有の保護・制御装置がある。本稿では、水力発電所の保護リレーシステムを主体に、発電機用電流差動リレー、界磁地絡リレーなどを例に、幾つかの保護リレーの特性、保護リレー装置の構成など、最近の技術について述べる。

受変電設備用保護制御システム

尾崎 修二,小野 隆之,深井 裕幸

本稿では、保護・制御・計測・監視機能を一体化した機能や伝送機能を備えたディジタルリレーについて紹介する。
本ディジタルリレーは、
(1)システム機能の向上
(2)情報の一元化による保守運用性能の向上
(3)ハードウェアの小形化とシステムの簡素化によるコストダウンを目的として開発した。

電気鉄道変電所用保護制御システム

津田 信吾,宮田 三史,木村 隆幸

電気鉄道は非常に多くのサブシステムから構成される巨大システムであり、電気鉄道変電所(電鉄変電所)をはじめとするサブシステムはマイクロエレクトロニクス(ME)化の進捗(ちょく)が著しい。
本稿では、この電鉄変電所の分散形ME形制御配電盤の概要と、そこで適用しているユニット形ディジタル保護リレー、また交流き電保護用の距離リレーユニットについて概説する。

配電系統用保護制御技術

竹内 玲治,浅見  隆,小野 隆之

電力会社の配電設備に対する保守・運用の省力化、効率化、信頼性向上などのニーズにこたえることを目的として、分散形システム構成が可能な配電用変電所のディジタル形保護制御装置について概説した。
さらに、エネルギーの多様化の一環として、個人住宅に太陽光発電システムを設置して低圧配電線と連系する系統連系保護装置の研究動向について紹介する。

系統解析と保護リレー装置の検証技術

斎藤 満雄,宮田 三史,戸井 雅則

電力系統の保護リレー装置を開発・設計するためには、電力系統の諸現象を解析し把握することが重要である。さらに、開発過程や製品化した保護リレー装置が、目的とする現象を的確に補そくして適性に動作し、目的以外の現象に対して不都合な応動がないかを検証する必要がある。
電力系統で発生するいろいろな現象を解析するためのアナログシュミレータやコンピュータによる解析技術を紹介し、さらに保護リレー装置を検証するための装置やシステムを紹介する。

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