富士時報
第66巻第7号(1993年7月)

新しい時代に向かって-地球を育む回転子

西  道弘

東北電力(株)能代火力発電所1号機600MW発電設備の概要

鈴木修五郎,木村 敏春,上戸 淑男

富士電機における火力の最大容量機である本機が良好な試運転経過を経て営業運転を開始した。本ユニットは欧州系技術をベースとした大容量タンデムタービンによる高効率、最新鋭の石炭火力である。
コンピュータによる全自動化、ディジタル式制御装置とともにCRTオペレーション、大形ディスプレイおよび現場異常監視装置を採用し、監視機能の充実を図った最新鋭の自動化プラントである。
本稿では、プラントおよび自動化制御の概要と試運転結果について紹介する。

東北電力(株)能代火力発電所1号機の蒸気タービン

能勢 正見,木沢 良弘,林田 幹雄

本タービンは4車室タンデムコンパウンドであり、この構成では国内最大容量のものである。したがって製作過程で最も注力したのは、高効率化とともに軸系の振動の安定化対策である。
試運転の結果、軸振動は、フィールとバランスを行わずに、全軸受部で30μm(p-p)以下であり、定格負荷600MWでの熱消費率は、計画値1,830kcal/kWhをクリアする、1,812.6kcal/kWhと、良好な仕上りが確認できた。

東北電力(株)能代火力発電所1号機の発電機

矢郷 昌三,小原 孝志,鈴木 忠雄

平成5年5月に営業運転を開始した本発電所1号機の670MVA発電機は、信頼性向上のために、固定子では鉄心端部の冷却やコイルの固定方法、回転子では最適設計により応力を低減したスロット形状などの新技術を適用した。また、運転と保守の簡素化のために、固定子、回転子ともガス直接冷却方式とし、ブラシレス励磁方式を採用している。さらに、コンピュータ利用の運転監視を行い、監視技術の向上を図っている。

蒸気タービンの診断技術と予防保全技術

土信田徹也,宮下 尊行,山下 満男

最近の大容量火力発電所設備では運転制御、環境保全および予防保全計画に対する最適化と有効性の重要度が増している。本稿では、富士電機が蒸気タービンプラントについて開発、実機適用した監視診断システムと運転支援ならびに保守支援システムの概要について紹介する。これらシステムの導入は、火力発電設備の高効率運転ならびに高信頼性運転を達成する重要な手段である。

火力発電プラントの改修技術

日達  旱,加藤 雅喜,矢田部信郎

火力発電設備は現在6割以上が総運転時間10万時間を超える経年設備となっており、一方プラントの運用はますます過酷化が進んでいる。このため経年設備の改修ニーズは一段と高まってきている。富士電機では設備保全について従来の事後保全から予防保全、予知保全を指向し、経年老朽化設備に対して積極的な改修を行ってきている。本稿では、経年老朽化設備の改修事例について、蒸気タービン・発電機設備の改修技術と実施例、電気制御装置については既設制御装置のディジタル化改修技術と実施例について、その概略を紹介する。

ボイラ給水の酸素処理法の実機への適用

明翫 市郎,土信田徹也,西田  新

わが国の貫流ボイラの給水処理にはすべて揮発性物質処理が用いられており、一応の防食効果を発揮しているが、一部のボイラによっては波状スケール生成により著しい差圧上昇が生じている。
一方、旧西ドイツでは給水中に微量の酸素を注入する酸素処理法が多くのユニットで適用され良好な運転が確認されている。
北海道電力(株)砂川発電所4号機においては酸素処理法の実証試験を平成6年まで継続する予定であるので、その研究概要を中間報告する。

水車・発電機の改修技術

北沢 克明,石井 久雄

今後改修、更新されるべき水力発電所の数は、増加する方向にあり、また顧客のニーズは無保守化、経済性、環境対策などにある。
本稿では、水力発電所に納入されている水車・発電機を改修、更新する場合の富士電機の対応策および技術的特徴を述べる。
特に、顧客側で改修計画をする際に、参考資料として活用できるよう便宜を図っている。

水力発電設備の運転保守支援システム

大隈 謙二

近年、水力発電所において保守の効率化、簡素化の要求が高まっているが、このような動きとともに、今までベテラン保守員に依存してきた予防保全に対して知識工学を応用する動きが出てきた。
本稿ではベテラン保守員に代わる、エキスパートシステムを組み込んだ運転保守支援システムの導入事例について紹介する。

火力・水力発電機の絶縁診断技術

井池 政則,竹田 政寛,飯島九十九

火力・水力発電機の絶縁診断技術について、プラント保全の思想の流れに沿っての発展の様子、絶縁材料の変遷と絶縁劣化の実績データに言及し、最新の診断方法を説明した。とりわけ熱可塑性コンパウンド絶縁からエポキシの熱硬化性絶縁に変化してきた背景から絶縁診断技術についても新しい課題とそれを解決する方法が見いだされつつある。特に絶縁材料の劣化状態を直接判別できる物理化学的劣化診断は今後の有効な手段となるものと思われる。

同期調相機の最新技術

井上 俊夫,矢郷 昌三

電力系統の電圧安定度維持対策設備のなかで同期調相機は、過負荷容量が大きい電圧源であり、電圧変動抑制効果が優れている長所が見直され採用されている。大形回転機であることから騒音、振動などの環境への影響、ブラシや冷却水潤滑油など保守の手間などが短所とされてきたが、現在の回転機技術を十分に盛り込むことでこれらは克服できる。東京電力(株)向け61.4MVA同期調相機設備を具体例として最新の同期調相機技術によって、低騒音、低振動と運転保守の手間の大幅軽減が実現できていることを紹介する。

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