富士時報
第69巻第11号(1996年11月)

100年の歴史を刻む回転機

森安 正司

回転機技術の現状と将来

井上 俊夫

 回転機を支える電気・機械両面の技術は着実に進歩してきた。材料技術と解析技術の向上を主な手段として、多様化・高度化する市場要求を満たしながら製品の小形・軽量化が実現されてきた。解析技術活用の現状を、(1)電磁気解析の例として永久磁石電動機のコギングトルク最小化で、(2)通風技術の流れ解析の例としてリングブローのケーシング形状最適化で示す。また、絶縁技術の変遷を示し絶縁種別が約20年ごとに向上してF種全含浸方式の現在に至ったことを述べる。さらに、診断技術の最近の状況を示している。

産業用回転機の開発と技術動向

鵜島 章一,千田 悦博,森口 千秋

 富士電機では市場ニーズに対応するため、大・中・小容量回転電機の新製品を開発した。大容量回転機ではVRP手法により構造・生産の管理ポイントのバラエティを削減した低速同期電動機、中容量回転機ではリブ冷却で出力2,500kWまで拡大した新R90シリーズ、少容量機ではアルミダイカストにより冷却性能の向上や省加工性を達成した誘導電動機の開発を紹介する。また、小容量機では巻線の占積率を高めるため、分割したコアにコイルを直巻きする方法など最新の技術動向についても述べる。

四極円筒界磁形自己始動同期電動機

遠藤 研二,佐藤 昭二,福地喜久雄

 円筒形積層鉄心に始動巻線を設けた自己始動形同期電動機は、始動巻線の構成を調整して始動時の平均、および脈動トルクを自在に設定することができる。このたび、500kW試作機での精度検証を経た解析手法に基づき、富士電機初の20MW実用機を製作、納入した。本稿では円筒形適用に際して生じる諸課題、および対策の概要を記すとともに、20MW機での試験にて所期の始動特性を得た状況を記す。

中容量高圧回転機用新Fレジン/G絶縁の開発

佐々木洋敏,井上 誠一,川路 康典

 高圧回転機は産業の幅広い分野で使用されており、最近は保守の省力化のためにメンテナンスフリーの要求が強い。この市場要求を踏まえ、富士電機の有する絶縁基礎技術の成果を取り入れて中容量高圧回転機用新Fレジン/G絶縁を開発した。この絶縁システムは、含浸樹脂、マイカテープを一新し、樹脂含浸用に適した副材料を積極的に採用した耐熱性や絶縁特性に優れたシステムにとなっている。本稿では、この新絶縁システムの概要について述べる。

リニアドアシステムの開発

針江 博史,稲毛 秋夫,矢田 賢治

 開発コンセプトを「人に優しい側引戸ドア」として、車両側引戸駆動用のリニアドアシステムを開発した。この装置は、乗客の安全を考えて作動中の推力パターンに変化を持たせ、満員時のドア開閉を速やかに行うことができるなど多くの優れた機能を持っている。また、メンテナンスの簡略化をめざしてモニタリング、自己診断機能も備えている。本稿ではリニアドアシステムの機能、構成、構造などについて述べる。

精密制御回転震源装置の開発

小金井義則,圓尾  等,長浜 秀昭

 近年、巨大地震が世界各地で発生しており、日本では1995年1月の阪神大震災により多大な被害を受けた。このような状況のなか、地震予知研究の必要性は増大するばかりである。富士電機では、名古屋大学理学部熊澤教授の発明による精密制御回転震源装置の実用実験レベルの装置を製作した。この装置は、偏心質量を精密に周波数制御しながら回転させることにより、単一周波数の地震波を地下に向けて定常的に放射する装置である。本稿では、この装置の概要について述べる。

ギヤードモータの開発

小鹿 正孝,向坂 宗一

 ギヤードモータの分野では、従来のFAや産業機械に加えて民生機器への採用が拡大している。民生用途では、小形・軽量化、低騒音化および短納期の要望が一般産業用に比して強いものがある。この状況に対応して、小形・軽量化と短納期を図った均一負荷(MGC)シリーズを開発・発売した。また、民生用においては、10dB以上の低騒音化を図った立体駐車場装置専用シリーズの開発を行った。本稿ではその特長の概要を述べる。

リングブローの騒音解析

太田 成昭,宮脇  基

 リングブローは小形・軽量で、高風圧が出せる特長があり、産業用機械に広く使用されている。低騒音化の市場要求はますます高まっており、富士電機ではこれに対応して、低騒音リングブローの開発を進めてきた。本稿では境界要素法(BEM)による振動放射音解析、有限要素法(FEM)による音響解析など、騒音低減のための解析技術について適用事例を中心に述べる。

インバータ駆動誘導電動機の電磁騒音

奥山 吉彦,大沢  博

 PWMインバータにてかご形誘導電動機を駆動すると、商用電源駆動時にはない電磁騒音の発生を経験する。これはPWMインバータ出力電圧に含まれる側帯波(時間高調波)電圧に起因している。本稿では商用電源駆動時の電磁騒音発生メカニズムを説明した後、側帯周波数および電圧含有率を考慮した電磁強制力を述べ、PWMインバータ駆動時の電磁騒音発生メカニズムを説明している。制御における演算周期に起因する側帯波の周波数および電圧含有率についても述べている。

インバータサージの挙動解析

奥山 吉彦,藤井 秀樹

 電動機をPWMインバータで運転すると、直流電圧を裁断したインバータ出力電圧が、電動機端子とインバータ出力端子で反射現象を起こし、電動機に過電圧(インバータサージ)が印加される。
今回このインバータサージの発生機構およびその挙動について解析を行った。また、インバータの中間回路直流電圧の最大2倍の電圧が電動機端子に印加されるが、ケーブルでの電圧減衰や電動機巻線のサージ分担率などについても触れている。

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