富士時報
第70巻第12号(1997年12月)

汎用インバータの発展に想う

中野 孝良

インバータ・サーボ技術の現状と展望

柳瀬 孝雄,川畑志農夫,栗田 茂文

汎用インバータやサーボシステムは、これまでの多くの技術開発により、高性能化と経済性の両面でメリットが拡大し、めざましい発展を続けている。一方、普及の拡大につれて、ノイズや高調波の低減、取扱いの容易さなど解決すべき課題も多い。
富士電機製品の現状や技術開発の取組み状況の一端を紹介するとともに、今後の技術開発・商品開発の方向づけとして「人に優しい」「環境に優しい」「高信頼性」などがキーワードであることを提案している。  

新しい電力変換回路技術

藤田 光悦,大熊 康浩,伊東 淳一

インバータ用の新しい電力変換回路技術として、三相-三相直接変換回路の解析法と各種新変換回路を紹介する。三相-三相直接変換回路はさまざまな構成が提案されているが、本解析法を適用することにより、回路固有の機能を明確にし、最適なパルス制御方式の検討が可能となる。直接リンク形変換回路は、双方向パワーデバイスと交流スナバなしに直接変換を可能とする実用的な回路である。新方式単相高力率変換回路は、電圧形インバータの零ベクトルを利用した新しい原理による回路である。  

電力変換器の低ノイズ化技術

石井 新一,五十嵐征輝,豊崎 次郎

パワーエレクトロニクス機器は生産性の向上や省エネルギー化のために、生産工場から一般家庭に至るまで幅広く使用されている。これらの機器は今後さらなる普及が見込まれている。しかしながら、これらの機器から発生するノイズが他の機器へ与える影響が懸念されている。本稿では、これらのノイズの発生源別抑制法の一端を紹介したものである。ここで取り扱うノイズは、(1)電源高調波、(2)主電源端子妨害電圧、(3)電磁放射妨害波である。 

新しい可変速制御技術

藍原 隆司,海田 英俊,田島 宏一

最近の制御技術開発の成果として、次の技術を紹介する。
(1)インバータ出力電圧のディジタル制御技術により、超低速でも正弦波電流にすることができ、低回転むらを実現している。
(2)センサレスベクトル制御の応用により、駆動システムの能力いっぱいのトルクに制御しつつ、自動的に最短な加減速を実現している。
(3)小形・高効率のメリットを持つ永久磁石形同期電動機のセンサレス駆動に関して、停止状態あるいは回転状態からの始動方法と超低速制御方法とについて提案している。 

汎用インバータの小形化技術

市原 孝男,岡本 健次,塩川  治

電力変換装置である汎用インバータは、初めて市場へ展開された当時に比べ小形化・低価格化・高性能化・高機能化が進められ、その技術的進歩は目を見張るものがある。そのなかでも小形化に関しては、市場展開当初に比べ体積で1/10以下となっており、汎用インバータの用途拡大に大いに貢献している。本稿では、この小形化を推進してきた代表的な要素技術について紹介する。

大容量電力変換器

吉田 雅和,望月 昌人,金沢 直樹

電動機駆動用インバータは、適用分野が拡大するにつれ、大容量電動機を駆動できるインバータへの要求も強くなってきている。このような状況のもと、変換器容量の拡大を図るとともに、設置される設備の重要性を考慮し、前面メンテナンス、IGBT部のトレーへの収納などにより、保守性・保全性の向上を図った。
本稿では、大容量変換器の特長および回路構成を紹介するとともに、最近問題視されている高調波対策として、12パルス整流、PWMコンバータについても紹介する。

工作機械主軸駆動装置FRENIC5000MS5

田中 良和,林  寛明,高橋  弘

工作機械用スピンドル駆動装置のFRENIC5000V3/M3シリーズは市場で好評を得ていたが、近年は工作機械の小形化や複合加工に対応するための性能・機能の向上、またEC指令に代表される各種の規制対応などへ市場の要求が変化してきた。これらの市場要求にこたえ、従来のV3/M3シリーズの後継機種としてFRENIC5000MS5シリーズを開発した。本稿では、その特長・仕様について概要を述べる。

新形サーボシステムFALDIC-II

新美  務,篠田 誠司,遠藤  実

各種産業機械分野の自動化・省力化を支えるサーボシステムは、1990年代から制御のディジタル化が進み、適用用途も拡大してきた。多様なシステムにフレキシブルに対応するため、機能・性能の充実やアンプの小形化などがさらに強く望まれている。これらの要求にこたえるため、用途に応じたシリーズを整備し、電動機の多様化、上位コントローラとのインタフェースの充実、サーボアンプの小形・省スペース化を狙いとした新形サーボシステムFALDIC-IIを開発したので、その特長を紹介する。

電子カムモジュール

相田 忠勝,斉藤  豊,丸林 雅美

高精度位置決めを行うサーボモータについては、プログラマブルコントローラ(PLC)と専用位置きめ装置との組合せにより使用する場合が多かったが、一般産業機械の分野においては、コスト、操作性などの面からPLCへの位置決め機能の取込みの要求が強くなっている。こうした背景のもとに製品化した電子カムモジュールについて、その概要を紹介する。本モジュールは、サーボシステムとの組合せにより、機械カム機構と同様の動作を実現するものである。  

インバータ・サーボシステムの適用例

島田 喜秋,井田 貴士

小形、高精度、高速応答、多機能な可変速駆動装置に発展したインバータ、ACサーボはプログラマブルコントローラとともにシステムを構成することによりさまざまな産業機械に適用され効果を上げている。
本稿では、ベクトル制御インバータFRENIC5000VG5、ACサーボシステムFALDICについて、タイヤ製造、包装、繊維、搬送、半導体などの機械設備への適用例を述べる。  

インバータ・サーボアンプ・回転機のCEマーキングへの対応

森口 千秋,西山 誠二,崎山 貴史

EC指令が1997年から全面的に施行され、富士電機のインバータ・サーボアンプ・回転機もおのおのCEマーキング対応の製品を発売している。インバータ・サーボアンプは、低電圧指令に対しVDE 0 160、IEC664-1を適用し、感電防止強化のための仕様変更を行った。また、EMC指令に対しEN50081-1,2を適用し、制御盤・ケーブルのシールド処理など、特にエミッション対策に重点を置いた。回転機では、低電圧指令に対し、機械指令を考慮しながら、IEC34-1に基づいて製品仕様を定めた。 

可変速駆動システムの高調波抑制手法

大阿久康之

汎用インバータ、サーボアンプなどの可変速駆動システムに適用される「家電・汎用品高調波抑制対策ガイドライン」と「高圧又は特別高圧で受電する需要家の高調波抑制対策ガイドライン」について紹介する。また、高調波抑制対策の方法とその効果についても説明する。 

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