富士時報
第73巻第8号(2000年8月)

高度情報通信技術と電源IC

山沢 清人

富士電機のICの現状と展望

古森 敏夫

富士電機では,パワーとインテリジェンスとCMOSアナログをキーワードにしてICの開発を進め,高耐圧,高精度,低消費電力などの特長を有する電源ICに注力している。また,カメラ用オートフォーカスICや自動車用圧力センサといった独自のセンサ技術を用いた製品も展開してきた。本稿では,CMOSアナログ技術を生かした電源ICを中心に,富士電機のIC技術と製品について概要を述べている。

軽負荷時省電力機能付PWM制御IC

丸山 宏志,城山 博伸

近年,地球規模の環境問題に対応し省エネルギー化が重要視され,製品別に待機時消費電力の基準が決められつつある。富士電機では,低消費電力化対応のため,従来のバイポーラプロセス製品から高耐圧CMOSプロセスを用いた低消費電力製品への切換を推進中である。その関連製品として8ピンのCMOS製品である軽負荷時省電力機能付PWM制御ICを開発したので,その概要を紹介する。

1チャネルCMOS DC-DCコンバータ制御IC

野村 一郎

DC-DCコンバータは小型,軽量,高効率という特長を持つ直流安定化電源として広く使われている。しかし最近では,環境保護への配慮から高効率化が従来以上に求められるようになってきている。富士電機ではこの要求にこたえ,ICのCMOS化により動作時の低消費電流1.2 mA,待機時の消費電流40μA,低オン抵抗出力段によるMOSFET直結駆動(ハイサイド12Ω,ローサイド5Ω)を実現した。さらに電源の小型化のため,TSSOP-8パッケージの採用と外付け部品の低減(最少9個)を達成した。

同期整流対応6チャネルDC-DCコンバータ制御IC

遠藤 和弥

ビデオカメラなどの携帯電子機器は小型・軽量化,バッテリーによる長時間動作が求められている。それに伴い,これらの機器の電源装置も小型化・軽量化・低消費電流化・高効率化が要求されている。富士電機では,多出力電源装置の構成に適し,電源効率向上のための同期整流方式に一部対応した6チャネルスイッチング電源用制御ICを開発した。本稿では,この制御ICの定格,特長,応用例を紹介する。

携帯電話機用電源IC

佐野  功,加茂 宏明,藪崎  純

携帯電話機は,いつでも,どこでも,どこへでも,といった利便性を特長とし,そのうえ低価格化,低消費電力化,小型化が急速に進んだ結果,現在の高い普及率に結びついている。富士電機では,携帯電話機用電源ICとして,8個のLDOレギュレータと,電力増幅器のゲートバイアス用負電圧レギュレータ,演算増幅器などを内蔵し,48ピンのパッケージとしたICを開発,製品化したので概要を紹介する。

高周波DC-DCコンバータ用IC技術

林  善智,片山  靖,菅原  聡

近年の携帯電子機器における,小型化・薄型化・軽量化のニーズにこたえる,リチウムイオン二次電池対応の超小型・薄型のスイッチング方式DC-DCコンバータ駆動用のICを開発した。10 MHzまでの高周波PWM制御が可能(スイッチング周波数は1から6 MHzに設定可能)であり,出力部に30 V耐圧高速スイッチングMOSFETを内蔵する。単一出力の降圧型,昇圧型の回路構成が可能で,同期整流方式での駆動も可能である。また,必要外付け部品の削減によりDC-DCコンバータ回路の小型化を可能にした。

電源用アナログ・ディジタル混載IC技術

神谷  茂,佐野 友美,佐々木雅浩

ICの集積度が向上し,一つのシステムが一つのチップ上に載るようになり,アナログ部とディジタル部が混載されるようになった。今回,電源用アナログ回路にマイクロコンピュータを搭載して,電源ICのインテリジェント化を実現する技術を開発した。本稿では,その応用例として,高精度な充電電圧制御が可能なリチウムイオン電池充電ICの概要を紹介する。+-0.5%精度の基準電圧源を搭載し,充電電圧誤差+-0.7%以内と高精度な電圧制御を実現した。

電源IC用高精度アナログ回路技術

中森  昭,鈴木  健,三添 公義

近年の携帯電子機器の急速な普及に伴い,電源のコンパクト化や電池での長時間動作化などの仕様に対する要求はますます厳しくなっている。電源ICとしては,回路の低消費電力化ならびに精度の高い制御が必要となっている。これらの要求にこたえるため,富士電機では高精度のCMOSアナログ技術の開発を行ってきている。本稿では,電源ICの高精度化に特に重要となる要素回路として,基準電圧源,演算増幅器,コンパレータの三つのアナログ回路技術について紹介する。

CMOSアナログIC設計技術

藤本 英俊,藤澤  旭

高集積化・高機能化が進展しているLSIの分野では,短期間での開発のため,CAD技術を用いた設計が不可欠となっている。富士電機では,電源ICをはじめとするアナログICを高品質・短期間で開発するための,設計技術や自動化システムを開発している。本稿では,CMOSアナログマクロセル,回路シミュレーション技術,自動配線技術,およびバックアノテーション技術について紹介する。

アナログC/DMOSデバイス・プロセス技術

北村 明夫,佐々木 修

電源ICなどの分野に適用される,高精度な1μmルールのアナログC/DMOSデバイス・プロセス技術について説明する。電源ICの分野では小型化・軽量化・低消費電力化・高精度化が求められている。これに伴い,デバイスへの要求も一層厳しくなってきている。本稿ではこれらの要求にこたえて開発した高精度な1μmルールのアナログC/DMOSデバイス・プロセス技術について紹介する。

電源IC用パッケージ

河田 尚文

近年,電子機器の小型化・軽量化・高機能化を実現する高密度実装に伴い,パッケージング技術を含むIC実装技術が次々と開発されている。本稿では,富士電機のICパッケージおよび実装技術の概要とともに,電源IC用プラスチックパッケージについて述べる。また,最近話題となっている,電源IC用パッケージ製品の鉛フリー化の取組みにも言及している。

広角・小型オートフォーカスモジュール

泉  晶雄

コンパクトカメラは,ズーム機能の搭載により高性能化・小型軽量化が進められている。特にオートフォーカス(AF)システムの優劣がコンパクトカメラの性能を大きく左右する。富士電機では, ディジタルカメラや2倍ズームクラスのコンパクトカメラ向けに, アナログデータ出力タイプのセンサと新しい構造の光学系を採用した小型で広角測距が可能な低価格のAFモジュールを開発したので,その構成,構造,特長を紹介する。

EMI対策内蔵型圧力センサ

加藤 和之,篠田  茂

半導体圧力センサは,自動車,医療,計測などの分野で広く用いられている。自動車分野では,高精度,低価格で,特に近年厳しくなってきている電磁波障害(EMI:Electromagnetic Interference)への耐性の高い圧力センサの要求が高まっている。富士電機はセンシング部,増幅調整回路,さらに従来コストアップの要因であったEMI対策をチップに内蔵した,小型・高信頼性で低価格の圧力センサを製品化した。このEMI対策内蔵型圧力センサの特徴,設計,特性,仕様についての概要を紹介する。

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