放射線の基礎知識と注意事項

放射線の基礎知識

放射線とは

電磁波または粒子線のうち、直接または間接に空気を電離する能力を持つものです。下記表は、代表的な放射線の種類です。また、「放射能」は放射線を放出する能力を、「放射線物質」は放射線を放出する物質を指します。

放射線の特性

物質に放射線が照射されると、様々な相互作用を引き起こします。下記のような作用を利用して、医療・工業・農業といった幅広い範囲で放射線が活用されています。

電離作用や励起作用

放射線が原子を通過する時に電子を弾き飛ばす働きを電離作用と呼び、残った原子は、プラスの電荷をもった原子(イオン)になります。また、放射線が原子を通過する時により外側の軌道に電子が遷移することを励起作用と呼びます。これらの作用を用いて原子の構造を変えることができ、例えば、プラスチックなどの高分子に放射線を当てて、原子の結び付きを変えることで、丈夫な素材を作ることができます(工業利用)。また、放射線を植物に照射して自然界で起こる突然変異の速度を速めることができることを利用して、品種改良などを行っています(農業利用)。

透過作用

放射線が物質を通り抜けることを透過作用と呼びます。 病院のエックス線撮影は、重い元素ほどエックス線を吸収することからカルシウムや水分などの透過作用の差を利用しています(医療利用)。こうした透過作用の差を利用して、液体や鉄板、紙などの厚さを測る厚さ計にも利用されます(工業利用)。

蛍光作用

励起された電子が元の軌道に戻る時に、余分なエネルギーがエックス(X)線として放出され、そのエックス線が物質に当たると、当たっている間だけ物質が光を出すことを蛍光作用と呼びます。このような物質を蛍光物質と呼びます。放射線測定器であるシンチレーション式サーベイメータは、蛍光作用を利用し、放射線が当たると測定器の中の結晶性の物質が光り、これを信号として捉えて測定することができます。

放射線、放射能の単位

放射線や放射能を表す際にはいくつかの単位が用いられ、以下のように表します。

半減期について

不安定な原子は放射線を出すことにより安定な原子に変わります。したがって、ある一定量の不安定原子があったとしても、時間がたつにつれてその量は減少してゆきます。そこで、初期状態の不安定原子の量がその半分の量に変化するまでにかかる時間を半減期と呼びます。これは個々の不安定原子によって一定であることが分かっています。

放射能の減り方

交換時期の考え方について
この表では、半減期とワーキングライフとでの短期間の方を交換時期の目安としています。ワーキングライフとは、線源の購入先である公益社団法人日本アイソトープ協会(JRIA)が推奨している、密封線源の推奨試用期間を指します。

放射線応用機器

放射線応用機器は、放射線の透過作用を利用して、物質の厚さやレベルなどの工業量を測定する計器です。放射線の透過を利用しているため、測定対象を非接触かつ連続的に測定することが可能となっています。弊社取扱の特殊計測機器では、β線、γ線、中性子線を用いた計測機器ラインアップがあります。

放射線による影響

外部被ばくと内部被ばく

人体が放射線を受けることを被ばくといい、放射性物質が外部にあり、体外から被ばくすることを外部被ばくと呼びます。一方、放射性物質が内部にあり、体内から被ばくすることを内部被ばくと呼びます。弊社製品で取扱う放射性物質は密封線源であるため、基本的には外部被ばくに留意する必要があります。

放射線防護の三原則

放射線の被ばくから自身を防護するために、放射線防護の三原則(時間、距離、遮蔽)という基本的な考え方があります。

  • 時間:作業者が放射線に曝されている時間を短縮することにより被ばく線量を低減する

  • 距離:放射線源と作業者との距離を離すことにより、作業時における空間線量率を低減する

  • 遮蔽:放射線源と作業者の中間に遮へい物を設置することにより被ばく線量を低減する

放射線取扱製品の注意事項

必要な手続き

放射性同位元素を使用しているため、原子力規制委員会に対し、下記手続が必要となります。

  1. 1.

    原子力規制委員会に対し、使用許可申請または届出をすること

  2. 2.

    放射線取扱主任者(注)の選任と原子力規制委員会への届出をすること

  3. 3.

    放射線障害予防規定の作成と原子力規制委員会への届出をすること

ただし、日立製との互換器であれば上記の申請は不要です。

放射線取扱主任者について

外国での適用法令

外国の場合は、日本の法令の適用は受けませんが、当該国での放射性同位元素の使用に関する法令に従う必要があるため、あらかじめ調査する必要があります。概ね、日本の法令と同様な対応が必要と思われます。

線源の寿命について

線源には寿命(減衰による半減期)があり、その時期に達すると線源の交換が必要となります。逆に、休眠設備や不要設備を顧客にて保管している場合はその線源の破棄もアフタービジネスとして富士電機は請負い処分を行います。半減期を迎えた線源を使用し続けると、測定に不都合を及ぼす可能性が発生します。

  1. 1.

    精度(誤差)が生じる

  2. 2.

    検出器に負担がかかり検出器本体の寿命が短くなる

  3. 3.

    測定時間に時間がかかる

管理区域の設定

放射性物質を取扱う施設や放射線発生装置を使用する施設では、作業者や周辺公衆の放射線被ばくが定められた限度を超えないようにするため、ある一定の放射線(能)レベルの基準を超えるおそれのある区域を管理区域として設けています。

管理区域の設定基準

  1. 1.

    外部放射線に係る線量については、実効線量が3月あたり1.3mSv

  2. 2.

    空気中の放射性物質の濃度については、3月についての平均濃度が空気中濃度限度の1/10
    放射性物質によって汚染される物の表面の放射性物質の密度については、表面汚染密度(α線を放出するもの:
    4Bq/cm2、α線を放出しないもの:40Bq/cm2)の10分の1以下の場所が医療法による管理区域となる。

  3. 3.

    外部放射線による外部被ばくと空気中の放射性物質の吸入による内部被ばくが複合するおそれのある場合は、線量と放射能濃度のそれぞれの基準値に対する比の和が1。

線源登録制について

放射線源の識別に関する情報と受入・払出等に関する情報を、法令に基づき各事業者から原子力規制委員会に報告させる制度のことです。放射線源の識別と所持の把握や不法取引や不法所持の早期検知と抑制、緊急時の放射線源情報の把握を目的としています。
顧客殿は、放射線源の安全とセキュリティを確実にするために、線源のやり取りを官庁に報告することが求められています。