富士時報
第76巻第2号(2003年)

環境システム技術特集

環境システム技術の現状と展望

矢内銀次郎・臼井 正和・梅本 真鶴

人類の社会経済活動における大量生産・大量消費・大量廃棄の流れと自立的生態系循環の流れのアンバランスにより,さまざまな環境破壊が発生している。これを是正していくために,各種の法規が制定され運用が開始されつつある。富士電機では「豊かさへの貢献」「創造への挑戦」「自然との調和」を経営の理念に定め,環境に関するさまざまな技術開発を行ってきている。本稿では,環境技術の動向と富士電機の取組みを紹介するとともに今後の展望について述べる。 

富士リサイクルプラザ

丸山 良介

今日,資源の有効利用と廃棄物の適切な処理について,その重要性に異論を唱える人はいない。一方,その問題の解決の難しさについても,明確に否定できる人はいないと思われる。富士電機は,この重要で困難な問題にいち早く取り組み多くの実績を納めてきた。本稿では,富士電機のこれらの問題に対する取組みの一例を紹介する。

廃棄物最終処分場における浸出水処理システム

花岡 憲一・数見 英樹

廃棄物はリサイクルまたは中間処理された後,最終処分場に埋立て処分される。埋め立てられた廃棄物の層を浸透した雨水などを設定した放流水質まで処理する施設が浸出水処理施設である。近年,放流先の要求などにより,放流水中のダイオキシン類,塩類などの高度処理の必要性が出てきている。本稿では浸出水処理システムの納入例と今後の課題について述べる。

移動態情報管理サービス

宗木好一郎・山田 成英

市町村が処理する一般廃棄物の収集管理システムを,富士電機が提供する移動態情報管理サービスを利用して容易に実現できることを示した。最近,全国の自治体で,廃棄物の収集・処理を近隣の市町村と共同で行う広域処理方式が増えている。自区処理を原則とする一般廃棄物では,このような場合でも各自治体ごとに排出した量に応じた費用が住民の税金で負担されるため,搬入した廃棄物が確かにその自治体からのものであることを確認する方法が求められており,その要望に応えるシステムとして紹介する。

焼却灰溶融処理再資源化システム

吉本 明正・藤田  満・國谷  正

焼却灰を直流電気抵抗炉にて溶解し,1,400℃の高温にてダイオキシンを分解し,かつ有害重金属を除去する。若干の還元剤と成分調整剤を溶融時に添加することにより,有害物を含まないクリーンスラグが得られる。スラグを非結晶質から結晶質へ改質することにより,天然物に匹敵する人工岩石を生成することができる。再資源化技術の一例として,魚礁を作りフィールドテストを行った事例を示す。太平洋側に設置した魚礁ではコンブの育成があり,日本海側では,モズクが繁茂した。

三重県RDF(ごみ固形燃料)焼却・発電施設

佐々木英雄

RDF(Refuse Derived Fuel :ごみ固形燃料)は,一般廃棄物の可燃ごみを乾燥し圧縮成形した固形燃料である。従来のごみを直接燃焼させるごみ発電に比べ,輸送や貯留が容易であり発電効率も向上する。富士電機が納入した三重県RDF焼却・発電施設の概要,仕様および運転維持管理について紹介する。

バイオマス発電にかかわる取組みと技術開発

石川冬比古・杉山 智弘

富士電機は,バイオガス利用のりん酸形燃料電池システムをこれまでに2 か所に納入した。さらに適用範囲を広げるべく低CH4濃度ガスに対する運転検証を行い,CH4 40%相当の低カロリーガスでも安定運転が可能であるという結果を得た。食品系廃棄物の高速・高負荷メタン発酵技術の開発では,ミニプラントを高負荷で連続運転中である。また,アンモニアストリッピングと生物処理を組み合わせた消化廃液処理システムのフィールド検証を行い,BODと全窒素を法規制値以下に安定的に低減できることを検証した。

残留塩素濃度維持装置「復活くん」

石岡 久道・出野  裕・明瀬 郁郎

富士電機は,学校,公共施設,集合住宅などの受水槽の衛生管理を,薬剤を使わず電気分解により無人で安全に行える,残留塩素濃度維持装置(商品名「復活くん」)を開発した。「復活くん」の原理は,水道水中に含まれている塩素イオンを利用して,消失した有効塩素を電気分解により再生成するというものである。「復活くん」の適用によって,末端の給水栓で残留塩素濃度を0.1mg/L以上に維持することができる。また水道施設における残留塩素濃度を適正に管理し,トリハロメタンなど消毒副生成物の発生を抑制し,安全な水を提供する。

省エネルギー型汚泥処理システム
-凍結融解脱水システムとサイホン式過濃縮装置-

山口 幹昌・本山 信行・藤嶋 正幸

凍結融解脱水システムは浄水汚泥を凍結融解処理により粗大粒子に改質し,無薬注で低含水状態に脱水するために用いられる。脱水汚泥は粒状であり,栽培土,埋戻し材として有効利用できるという特徴がある。サイホン式過濃縮装置による汚泥体積の減少やCGS排熱利用による吸収式冷凍機の運転により省エネルギー化されている。サイホン式過濃縮装置は,汚泥を高濃度にできエネルギー消費が少ないので,上下水処理施設において濃縮槽,脱水機,消化槽などの安定化,効率化,合理化に寄与できる。

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