2012ebook
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36社会報告 「トレイの先端と末端は温度が高い」。鈴木が集めたデータはシミュレータにかけられ、そんな作業者の「肌感覚」を見事に裏付ける解析結果をはじき出した。そして、均質に加工できる炉中温度・加工時間の最適条件を導き出した。試行錯誤が改善を生んだ 鈴木の分析はさらに、部材が接触する際の「抵抗」が銀の溶け方にムラを生み、溶接不良を引き起こすという事実も明らかにした。 この対処に、鈴木は部品に「おもり」を乗せるというアイデアを発想した。型式ごとの不良率を分析した際、荷重が大きい大型の部品に不良が少ないという傾向を見出したからだ。 鈴木はただちにアイデアの実行に動く。しかしそこで壁となったのがおもりの「形状」だった。おもりから生じる影が、溶接温度に影響を及ぼしたのだ。 鈴木は試行錯誤を重ねた。コスト面から日の目を見ることはなかったが、その過程では、バネで部品を押さえ付けるという斬新な案も生まれた。「おもりを試作して、炉にくべ、その結果を測る。ベストの重量や形状を探るため、とにかく粘り強くやりました」(鈴木)。 こうして生み出された「最適解」。加圧により温度の伝わりが良くなり、接合面にまんべんなく銀が広がった。これにより、溶接不良は大きく低減した。徹底したデータ管理で不良を予防 「諸先輩がこれまで手を尽くしてきた。自分に何ができるのか不安だった。でも、経験が浅いからやれることもある」。そう考えてプロジェクトに参加したのは、品質管理課の小澤秀行だった。「製造現場の作業者は日々の経験から、『ここが問題点では』と目星をつけている。そうした『カン』をデータに落とし込みました」(小澤)。 小澤が改善の対象とした製品は、サーマルリレーという、製品に流れる過電流を検知する装置だ。小澤が講じた対策の要諦は、「徹底したデータ管理で、金型の段階から原因を突き止めること」。 サーマルリレーを構成する部品は30点ほどあるが、小澤はすべての部品について、接点位置や曲げ角度、荷重等、あらゆる項目のデータを取り続けた。取得した数値はプロット化し、時系列で比較することにより、金型の日々の劣化や問題点が一目でわかるようになった。この成果はプロジェクト内で共有され、良品率向上に向けた対策や改善が施された。品質は私たちの使命 「品質」はものづくりの要である。当然、市場に送り出す製品には厳重な品質検査を施すが、不具合の発生を減らすには、工程内における徹底した品質の作り込みが欠かせない。 「工程内不良の撲滅は至上命題ですが、ややもすると、いつの頃からか、『これくらいは仕方ない』といった甘えが生じていたのかもしれません。プロジェクトはそうした既成概念打破に向けた挑戦でした」(高橋)。 鈴木は、1年間のプロジェクトを通じ、「品質は育てるものだ」と実感したという。「植物と同じ。何もしなければ衰えてしまうけれど、手をかければより高い品質に成長します」。 メーカーに求められる品質とは何か。小澤が現場の答えを代弁する。「良品率という言葉自体、不良があることの裏返し。そうした考えをリセットし、お客様にとっての不安要素を少しでも取り除くことが、私たちの使命だと思います」。溶接で銀が充分に溶けて二つの部品がしっかり固定された状態。現場の取り組みで良品率が向上した吹上工場 品質管理課 小澤 秀行重要部品の一つである「反転バネ」を手に

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