富士電機

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CSRの取り組み社員が取り組むCSR

川崎工場が挑む技能継承の取り組み
体系的な教育で、技を磨き、人を育てる 発電事業本部 川崎工場

富士電機川崎工場では、再生可能エネルギーである地熱発電や水力発電、環境配慮型の高効率火力発電などに使われる蒸気タービンや発電機などを生産しています。これらの製品はお客様ごとに一品一様で、加工や組み立てには人間の感覚に頼る職人的な技能が求められます。このため川崎工場では、団塊世代の退職に伴う若手・中堅技能者の早期育成、また負荷変動への対応を目的とした多能工化推進に向け、2008年に「技能継承センター」を設立。体系的な技能者育成教育を推し進めています。

当社が発電設備を納めた世界最大級のナ・アワ・プルア地熱発電所(ニュージーランド)

川崎工場で製造する発電設備(蒸気タービン)

先輩と後輩が「伝承者」と「継承者」のペアに

「川崎工場では、作業者個人の高度な技に頼る部分が大きい大型製品を多数扱っており、その製作にはミクロンオーダーの精度が求められます。当然、技能継承は難しく人材育成には時間がかかります。そこで、団塊世代が一斉退職したいわゆる『2007年問題』に際し川崎工場内に技能継承センターを立ち上げました」

センター長を務める佐藤卓充は技能継承センター設立の経緯についてこう話す。ここで計画的な技能継承を目的にスタートしたのが「From-To活動」だった。

技能継承センター長 佐藤卓充

「From-To活動」は、職場内で「伝承者」と「継承者」のペアを決め、マンツーマンでの技能継承を図ること。職場の先輩である伝承者が後輩の継承者に責任を持って技能を伝えていく。

「切削加工、溶接、組立作業など、製品ごとに求められる技能の種類やレベルが異なります。まずこれらを一覧にし、その上で誰が誰に技能を伝えるのかをはっきりさせることが重要と考えました。教育プログラムは主任クラスが職場の状況や個々の習熟度に照らして策定。伝承者になる先輩も後輩に教えることでより知識が深まり、共に成長していけるというメリットもあります」

教育結果は上司のコメントとともに月報にまとめられ、翌年度初めに各職場が活動の進捗・成果を全体に報告。皆が職場の技能レベルについて意識するようになった。また、半期ごとに技能の習熟度合いを競い合う技能競技大会を開催。同僚が互いに技能を競い合い切磋琢磨する職場風土を作り上げた。

蒸気タービン製造風景

習熟度合いは「パーン」と澄み切った音で見極める

製造部火力製造課に所属する岩田晃紀と赤間亮祐のペアは、蒸気タービンの軸(ロータ)に回転翼(ブレード)を組み込む「翼植え」という作業を担当している。蒸気タービンは火力・地熱発電設備の要となる製品だ。ブレードはボイラ(地熱発電の場合は地球のマグマ)によってつくられた蒸気を受け、ロータが1分間に3,600回転(あるいは3,000回転)する。その動力が発電機に伝わり、電気が生み出される。

伝承者である岩田は翼植えの難しさをこう説明する。

「ロータにブレードを隙間なく等間隔(ピッチ)で取り付けていかなければなりません。最後に近付くにつれて微細なピッチ調整が必要となってきます。この作業は最大約50キロものブレードを溝にはめ込み、重たいハンマーを使って打ち込んで固定していくというもの。力作業でありながら、繊細さも必要とされます」

蒸気タービン(左)。ロータにブレード(右)を取り付ける

翼植え作業の仕組みはこうだ。ロータの溝にブレードをはめ込む。接合素材である「ピース」を当て、ハンマーでたがねを叩きピースをつぶすことで、ロータとブレードを固定する。最後に、ブレードの根元を力強く叩き、高速回転中でもブレードが緩まないよう、しっかりと締め付ける。

ブレードは1周100枚近くあり、1枚のブレードを植え付けるために必要なハンマーのスイングは20回以上。たがねの打ち付け部分の直径は数センチで、ハンマーの重量は2キロを超える。的を外せば大けがにつながるし、製品にも傷を付ける。集中力が欠かせない。

残り20枚辺りからは仕上がりを意識しながら打ち込みを行う。設計上は所定の枚数がピタリと収まる計算だが、打ち込む力は千差万別。ブレード自体も温度や湿度で伸縮する。このため作業者は完成形から逆算し、叩き具合を微調整していく。「最後の1枚を打ち込む際に、少しきついくらいがちょうどいい」と岩田は言う。

作業の質は、見た目の出来栄えだけではわからない。感覚に基づく作業が仕上がりを左右する。そのため、技能継承には困難が伴う。

「なるべく言葉や文章で伝えようとはしますが、それでは伝えきれない点もあります。過去に機械を使った自動化にも挑んだことがありますが、ハンマーを打ち込む力と角度の微調整との両立が難しく、採用は見送られました。最後は作業者同士、『感覚を合わせていく』しかありません(岩田)」

利き手にハンマー、反対の手にたがねを持ち、たがねめがけて力強くハンマーを振り下ろす

製造部火力製造課 岩田晃紀(左)と赤間亮祐(右)

感覚のなかでも、最も頼りになるのはハンマーがたがねを叩いた時の「音」だと岩田は明かす。

「上手に打ち込んだ時、『パーン』と澄み切ったきれいな音が工場に響き渡ります。50メートル離れた事務所にいても、ベテランが叩く音はすぐにわかります」

翼植え技術の習得は、「3年でようやくコツがつかめ、極めるには10年でも足りない(岩田)」。さらに感覚の部分が多くを占める。そのような技術を受け継ぐ後輩の赤間は「From-To」に何を感じるか。

「もちろん最終的な性能試験は行いますが、翼植えの精度は、作業を行った自分にしかわかりません。責任が大きな仕事を意気に感じますし、もっと技術的に向上したいと思います。まずは教えられたことを確実に。メモを取り、自分なりに要領書を作るなど工夫しながら作業しています」

ものつくりの本質を伝えていきたい

入社9年目の杉村翔太と入社4年目の西岡徳哉は、火力・地熱発電向け蒸気タービン・発電機から水力、原子力発電関連の部品まで、さまざまな旋盤加工を担当している。現在、その多くはNC旋盤という数値制御された機械によって自動化されているが、二人はNC旋盤に加え、汎用旋盤と呼ばれる昔ながらの機械も操作する。

汎用旋盤は、回転する部品に旋削工具(バイト)をあてることで加工を行う。削り具合の細かな調整は手動のハンドル操作で行い、加工対象は数10ミリのボルトやナットから500ミリほどの基幹部品まで多岐にわたる。工具の選定から切削条件の決定に至る段取り(準備)を入念に行い、みずからの経験や知識、技能を発揮し部品を作り上げていく。

蒸気タービンは、火力発電であれば約600度の蒸気を受け止め続ける。長いもので40年以上使われるが、近年、当社が過去に納めた発電設備の老朽化に伴い、補修作業などアフターサービスの需要が拡大している。おのずと汎用旋盤を操る杉村と西岡のもとには特急対応の仕事が多く飛び込んでくる。

「ほとんどの部品はNC旋盤で加工できますが、汎用旋盤が求められる場面も多々あります。例えばメンテナンス。長年使用し摩耗した部品を修復するために溶接を施すことがありますが、溶接部分の仕上げ加工には大掛かりなNC旋盤より、経験が活き、小回りが利く汎用旋盤を用いた方が効率的、かつ図面の指示に合わせて高精度な加工ができます」

NC旋盤が大勢を占める川崎工場の部品加工現場において、しかし杉村は、アナログな汎用旋盤にこそ仕事の基本が凝縮していると力を込める。

「私たちが扱う部品は年間100点以上あります。大きさや形状、材質もさまざまで、それに応じてバイトの種類やハンドルを回す速度も異なります。手持ちのバイトで条件に合った加工ができないときには、みずからバイトを成形するなどして対処します。汎用旋盤には必ずしも『匠の技』が求められるわけではありませんが、正確に加工するための切削加工の基本が詰まっています。NC旋盤を扱う際も、加工条件の設定において、汎用旋盤で培った経験と知識が活きてきます」

杉村はみずからの指導方法を「細かいことは言わない」と話すが、ペアになり指導を受ける後輩の西岡は、杉村から仕事の手順である「段取り」の重要性を教え込まれていると言う。

ハンドル操作で部品を削る汎用旋盤

数値制御で自動加工するNC旋盤

汎用旋盤を操作する後輩を指導

「最も重要な段取りの一つに『芯出し』があります。汎用旋盤は、削り始める前に加工物を四方から『爪』と呼ぶ鉄材で固定しますが、この準備段階でしっかり芯(中心)が定まっていないと必要な精度の加工ができません。数マイクロメートル(マイクロメートルは1/1000ミリ)のズレが発電設備の不具合につながることもあります。手順に従い、一つ一つ考えながら進めることが重要だと日々実感しています」

マンツーマンと言えど、日々手取り足取り指導を行うわけではない。互いに持ち場があり、多くの時間は個人作業だ。だから伝承者である杉村は、「From-To」の意義をこう解釈している。

「ものつくりの原点であり本質を後進に伝えていくこと。このことが私に課せられた使命だと思います」

製造部機械課の杉村翔太

製造部機械課の西岡徳哉

ものつくりの質向上に寄与する活動を続けていく

2018年3月には、新たに変圧器などの大型製品を生産する千葉工場との、2工場合同での技能競技大会を開催する。その狙いは、異なる製品を扱う作業者同士の、技能の研鑽にある。最後に、ものつくり人材の育成に際し大切にしていることを、センター長の佐藤に聞いた。

「職人気質だった昔の人と今の若い人たちでは、考え方に違いがあるのは確かかもしれません。しかし本質は不変で、もっとも大切なのは好奇心だと思います。知らないことを知り、できないことをできるようになりたいという気持ち。ものつくりに対する好奇心が職人としての感性や想像力を育みます。ですので、私たちはこれからも技能者の好奇心を刺激し、ものつくりの質向上に寄与する活動を続けていきたいと思います」

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