富士時報
第72巻第6号(1999年6月)

放射線機器・管理システム特集

原子力利用における測定機器の信頼性とパブリックアクセプタンス

河田  燕

放射線機器・管理システムの現状と展望

田代  尚

放射線機器,放射線管理システムについての需要動向と技術動向について述べる。需要動向としては放射線モニタ,総合機器,応用計測器に分類して示した。全体は放射線モニタの動向に左右され, 原子力発電所の新増設がないため当面増加傾向にはならない。技術動向としては個々のモニタ類を取り上げて示した。全体としてはコンピュータ化によるシステム化や個々の機器の高機能化が定着しており,今後もその傾向が続くと考えられる。

放射線検出器

山村 精仁,石倉  剛,上田  治

半導体検出器とシンチレーション検出器の特徴と長所を他の検出器と比較して紹介する。半導体検出器としては多機能形線量計用中性子およびβ線検出器,ダストモニタ用α線およびβ線検出器,シンチレーション検出器についてはα・β線表面汚染用シンチレーション検出器について述べる。

原子力施設における個人線量当量管理システム

青山  敬,田辺 健一,小林 裕信

富士電機では,個人線量当量管理の高度化を目的とした個人線量当量管理システムを開発し,1997年に原電事業(株)に納入した。本システムは,管理区域内作業の際に持ち込む個人線量計を電子式線量計に一本化することを可能にするほか,入退域管理ゲートでの処理時間の短縮などにより作業者の負荷を大幅に軽減できるものである。また,データ管理用計算機にはエンドユーザーコンピューティング機能を設け,任意様式での集計を可能とすることで,システムに柔軟性を持たせた。

原子力施設内の放射線監視システム

藤本 敏明,神谷 栄世,高木  勲

原子力施設の安全に対する要求が高まるなか,核燃料サイクル開発機構大洗工学センターの諸施設の放射線モニタ設備の情報を的確かつ迅速に把握するための遠隔集中監視システムを納入した。システムは,各原子力施設にサーバと端末を設置し放射線監視を行うとともに,将来構内LAN経由で大洗工学センター内のWWWサーバに放射線情報を収集して共有化できるように計画している。多数の施設にかかわることから,ハードウェア構成およびアプリケーションソフトウェアについては共通で適用できるように標準化を進めた。

原子力施設周辺の環境放射線監視システム

藤本 敏明,今井 光宏

原子力発電所では,施設周辺の環境放射線を測定する必要がある。環境放射線監視システムは,環境放射線を連続的に測定し,管理することにより,放射線レベルの変動を監視するシステムである。最近は,これらの環境放射線に関するデータを,地方自治体のPA(Public Acceptance)設備などで公開している。本稿では,こうした状況を踏まえ,信頼性の向上およびPAに重点を置いて設計した環境放射線監視システムについて紹介する。

放射性物質汚染検査装置

加藤  勉,射場 浩史,佐藤 弘志

原子力発電所などでは,放射線管理区域に入った人やそこで使用される物品や作業服が放射性物質により汚染されていないことを確認するため,放射性物質汚染検査装置を設置している。本稿では, 管理区域内に入った人が退出する際の全身の表面汚染を検査する体表面汚染モニタ,管理区域内で使用した物品を持ち出す際の表面および内面汚染を検査する物品表面汚染モニタ,管理区域内の作業服などの洗濯前後の表面汚染を検査するランドリモニタ,管理区域内に入った人の体内汚染を検査・測定するホールボディカウンタについて,基本仕様,特長を概説する。

原子力発電所における分散処理形放射線管理システム

三保谷英一,明石 倫雄

原子力発電所をはじめとする原子力施設における放射線管理は, 原子力に対する一般社会の理解が進むに従って重要性が増しており,管理のために必要な情報は,正確かつ迅速に処理されなければならない。原子力発電所では,放射線管理を業務別に分けて行っており,収集される情報もそれぞれのシステムで管理される。分散処理形放射線管理システムは,汎用LANを使用し,業務別に管理されている情報を迅速かつ効率よく利用することを目的に開発したものであり,本稿ではシステム構成,機能について紹介する。

環境線量測定システム

小林 裕信,柴田 鉄生

富士電機では原子力発電所周辺の環境線量測定に関して,高機能化・省力化を実現した電子式環境線量計とデータ処理システムを開発し,幾つかの原子力発電所に納入してきた。電子式環境線量計は,屋内・屋外環境下の連続測定に適している。電子式環境線量計のデータは,携帯形のデータ収集ターミナルを使って現場で簡単に測定結果が読取りでき,さらにデータ収集ターミナルのデータはパーソナルコンピュータに伝送して,簡単に編集できる。本稿では,最近の電子式環境線量計とデータ処理システムについて述べる。

ラジオアイソトープ利用施設用放射線監視機器

山田  正,籔谷 孝志,佐藤 正昭

放射線モニタにスペクトル分析を応用するために,現場設置形のモニタ用マルチチャネルアナライザと,リアルタイム測定のために移動平均処理法と指数平滑処理法を開発した。主な5核種を対象とした核種分析機能を備え,検出部の汚染のない容器式β線水モニタを開発した。また,管理区域境界や事業所境界での空間γ線線量率の測定管理を目的としてポータブル形メモリ付き線量測定器を開発した。1か月の連続測定ができ,パーソナルコンピュータでデータ処理ができる。

ラジオアイソトープ応用計測器

門野 浅雄,澤口 睦夫,増井 馨

鉄鋼厚板ミル直近厚さ計,熱間シームレス鋼管肉厚計などに用いる検出器について述べる。これらは,富士電機の従来器よりはるかに高計数,低ドリフトを達成し,オンライン実用運転においても良好な結果を得た。引き続き,3ヘッド熱間厚さ計に同検出器を適用する計画であり,さらに,新規需要にも適用していきたい。また, トンネルシールド工法における,排水管中の掘削土量をオンラインで測定できる土量計を開発した。法規制を受けないので,あらゆる土木工事現場で利用が可能である。

本誌に記載されている会社名および製品名は、それぞれの会社が所有する商標または登録商標である場合があります。著者に社外の人が含まれる場合、ウェブ掲載の許諾がとれたもののみ掲載しています。