富士電機製品コラム
蒸気バルブの基本をまるっと簡単解説

蒸気バルブの基本をまるっと簡単解説

蒸気バルブの機能、特長から選定まで

加熱・加湿、殺菌、空調、機械の動力など、幅広い目的で利用され、産業分野で欠かせない存在といえば、蒸気のエネルギーです。工場内で蒸気を使う際は、配管内を蒸気が流れていきます。そのため、蒸気の流れをコントロールし、設備で蒸気エネルギーを効率よく利用するには、蒸気バルブが重要になってきます。
ここでは、代表的な蒸気バルブの機能や特長、さらには選定までを、簡単に解説しましょう。

構造上から4つに分類!代表的な蒸気バルブの特長とは?

バルブとは、一体どのような働きをする機器なのでしょうか? JIS規格では「流体(ここでは蒸気)を通したり、止めたり、制御するために、通路を開閉できる可動機構をもつ機器の総称」と定義されています。簡単にいうと、蒸気バルブは配管に流れる蒸気をコントロールするためのスイッチや蛇口のような役割をする機器と考えるとよいでしょう。

蒸気バルブと一口に言っても非常にたくさんの種類があります。用途・種類などを表す修飾語が付くものには「バルブ」だけでなく、「~弁」という名称を使うこともあります。代表的な蒸気バルブを構造上からみると、次の4つに大別されます。

ゲートバルブ または 仕切弁

流体が通る流路に弁体を垂直に差し込んで、水門のように仕切ることで流体を止めます。流路がまっすぐなので、圧力損失が小さく、完全に開けた状態で、流体を勢いよく流せるバルブです。逆に、弁体を完全に閉め、流体をきっちり止めるため「仕切弁」とも呼ばれ、全開/全閉の目的で使用されます。中間開度(弁体が半分だけ流路に出る状態)にすると、チャタリング(小さな振動)を引き起こすことがあるため、流量調整には向いていません。

グローブバルブ または 玉形弁

ボディが丸みを帯びており、「グローブバルブ」(globeは球体)または「玉形弁」と呼ばれています。バルブ内部がS字状の2層構造になっており、その通過点を円すい状の弁体で栓をして、流路をせき止める構造です。流路がS字なので流体に抵抗が起き、圧力損失が大きくなるというデメリットがあります。一方で、弁体のリフト量(弁座からの距離)で流量を調整でき、弁座に弁体を密着させて、流れをしっかりと止められます。ちなみに水道の蛇口にはグローブバルブが用いられています。

ボールバルブ

孔(あな)の貫通したボールが弁体になるバルブです。バルブのレバーとボールが直結しており、レバーを回してボールの孔の向きを回転させます。穴の向きを管路に合わせれば、流体が通り抜けます。一方、レバーを90度回すと、弁体の向きが変わり、流体を止められます。急な開け閉めを簡単に行える点が最大のメリットです。ただし、構造上から、全開/全閉の用途で使い、中間開度で流量を調節する使い方はしません。

バタフライバルブ

ボールバルブのように、バルブ内部で弁が回転することで、蒸気の流れをコントロールします。ボールバルブとの違いは、弁の形状が円板になっており、それが回転して開け閉めできる点です。この動きが蝶のようなので「バタフライ」の名を冠しています。バタフライバルブは、弁と配管の隙間を調整し、中間開度で流量をコントロールできます。サイズ的に幅をとらず、省スペースで設置できる点もメリットです。配管が複雑に入り組んでいる場所などに適しています。

蒸気バルブの選び方~種類・呼び寸法・素材・接続方法などを考慮

では、こういった蒸気バルブを選定する際には、どのようなことを考慮すれば良いのでしょうか?バルブをどこで使いたいのか、その目的に適した構造のバルブを選びます。

例えば、基本仕様としての使用温度や使用圧力の範囲をチェックするだけでなく、蒸気の流れをオン/オフしたいのか。あるいは、流量も含めてコントロールしたいのか。によっても、使うバルブの種類が変わってきます。

蒸気の流れをオン/オフしたいならば、ゲートバルブかボールバルブが適しています。蒸気発生源となるボイラーの大元から流れを止めたいときや、メンテンスで蒸気を完全に止めたいときなどに使います。一方、蒸気を使う設備の手前で流量を調整したい場合には、グローブバルブやバタフライバルブが汎用性も高くて適しています。

また、圧力損失を気にする必要もあります。バルブは、トラブルの発生やメンテンス以外では「常時開」で使うケースがほとんどなので、圧力損失が起きると困る場所では、ボールバルブやゲートバルブを使います。ちなみに、一般的な目安ですが、バタフライバルブの圧力損失を1とすると、グローブバルブは5、ボールバルブは0.2、ゲートバルブは0.7という比になるといわれています。

次に、物理面では、配管サイズからバルブを選びます。設置場所や必要な流量に応じて、口径サイズを大きくしたり、バルブを変える工夫が求められることもあります。

サイズを示す際には「A呼称」(ミリ系)と「B呼称」(インチ系)がありますが、日本独自の表記なので海外では使いません。例えば、「6A」と「1/8B」は同じ外径ですが、1インチ以下のB呼称とA呼称では、単位換算に関係性がないので注意しましょう。

(注)

外径はSGP:配管用炭素鋼鋼管の場合

また、薬品や毒性の強い流体、高温や極低温の流体、配管内圧力が非常に大きい流体など、用途に応じて、バルブの強度や硬さ、耐衝撃性、耐食性、耐熱性などを考慮し、バルブがどんな素材で作られているかを確認しましょう。場合によっては、バルブが腐食して壊れたり、流体が漏れるリスクもあります。

下表は、バルブの主要な素材と性質を示します。

バルブ選定時には、管とどのように接続するのか、という点も重要な要素になります。バルブを管に接続して配管系が形成されるため、接続後に蒸気漏れや破損を引き起こさないように慎重な作業が必要になります。バルブの接続端の構造により、「フランジ形」「ねじ込み形」「溶接型」の3つ分類されます。

フランジ形

接続する両端の部分が「つば状」(フランジと呼びます)で、つば同士をボルトとナットで締結する方式です。小サイズから大サイズ、低圧から高圧まで、広範囲で使われる一般的な接続方式になります。

ねじ込み形

「テーパねじ」や「平行ねじ」といった管用ねじで接続する方法です。主に圧力1Mpa以下、サイズが2インチ以下(50A)の低圧力・小サイズの配管で使われます。接続面をねじ加工するだけで済み、フランジ形のように締結に多くの部品が要らないため経済的ですが、壊れると修繕が難しいという弱点があります。

溶接形

バルブと配管を溶接して直接接続する方式です。高温・高圧用やパイプラインなどで漏れを完全に防ぐ際に使われます。バルブが2インチ以下(50A)の小サイズに適用できる「差し込み溶接形」(バルブ溶接端をソケット状にして管にはめて溶接)と、幅広いサイズに適用できる「つきあわせ溶接型」(バルブと管をつきあわせて溶接)があります。
このように、蒸気バルブの選定では、種類・呼び寸法・素材・接続方法など、各種バルブの特性を把握しつつ、使用目的に合った製品を選ぶことがポイントになります。最適な蒸気バルブを選定して上手に運用できれば、蒸気圧力を安定化させ、無駄なエネルギーを消費せずに省エネ対策にもつながります。
ただし、長年の経年劣化によって、バルブから蒸気漏れが起こることもあります。
しっかりとバルブのメンテナンスを行う一方で、「どこかで蒸気が無駄になっていないか?」という点にも、日ごろから注意を向けておきましょう。そこで、蒸気流量計を使って、蒸気の漏れの状況を把握することが大切になるのです。

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