富士時報
第72巻第5号(1999年5月)

2極空気冷却タービン発電機特集

特集論文

2極空気冷却タービン発電機の新系列の完成に寄せて

Stefan Kulig

新系列2極空気冷却タービン発電機の完成

三村 一郎,佐藤 昭二

2極空気冷却タービン発電機は初期コストおよびメンテナンスコストが低いという特長があり,電力自由化などの状況変化と相まって,その需要は増大している。富士電機はこの2極空気冷却タービン発電機を電力機器の主力機種とすべく,出力20から300MVAに対し,新系列機を開発した。本稿では,開発コンセプトおよび開発内容の概要を紹介する。

新系列2極空気冷却タービン発電機の熱および電気設計

小原 孝志,日和佐寛道,新倉 仁之

発電機の大幅な利用率の向上は巻線温度の上昇,損失の増大および固定子周辺構造物の温度上昇を招く。本稿では固定子体積を従来より30%低減させた126MVA試作実験機の電気設計に関連する検証項目,試験結果を紹介する。試作実験機では,固定子巻線温度分布,固定子巻線内導体温度,固定子鉄心周辺構造物および回転子巻線温度を測定した。その結果,巻線温度の均一化と固定子周辺構造物の温度が許容値内であることを確認し,当初の方針をほぼ達成できることを検証した。

新系列2極空気冷却タービン発電機の電磁界解析

溝上 良一,木村  誠,村岡 政義

新系列2極空気冷却タービン発電機の開発過程において,三次元の有限要素法を用いた漂遊損の解析を行った。この結果,これまで把握できていなかった種々の漂遊損を定量化でき,設計への検証手段として活用できうる見通しを得た。本稿では,この漂遊損に関する電磁界解析の紹介と,実測結果を基にこれらの精度について検証した結果を紹介する。

新系列2極空気冷却タービン発電機の構造設計

阿久津信雄,山崎  勝

富士電機は,多くの革新的技術を盛り込んだ出力20から300MVAの2極空気冷却タービン発電機の系列化を完了した。この発電機は,各種解析プログラムを駆使したシミュレーション,126MVA試作実験機による実証データをもとに,信頼性と経済性を兼ね備えた発電機の最適化を実現した。本稿では,新系列2極空気冷却タービン発電機の構造上の特徴と新方式の信頼性検証結果について紹介する。

新系列2極空気冷却タービン発電機の通風冷却技術

山本  勉,佐藤 昭二

新系列2極空気冷却タービン発電機の通風冷却の概要および特長ならびに新系列機の開発に際し実施した通風冷却改善とその検証内容を紹介する。特に通風冷却改善の効果および品質検証に関しては,126MVA試作実験機による試験結果とこの試作実験機に対して実施された三次元流れ解析および温度解析結果を主体に述べる。

新系列2極空気冷却タービン発電機の絶縁技術

芳賀 弘二,中山 昭伸,井上 誠一

富士電機では,高性能でしかもコンパクトな絶縁信頼性の高い絶縁システムとして,従来から各種の回転機に全含浸絶縁を適用している。さらに1993年からは大形タービン発電機にも適用を開始している。新系列2極空気冷却タービン発電機には,この大形タービン発電機用全含浸絶縁(Fレジン/GII)を採用する。本稿では最近の絶縁技術を含め,採用する全含浸絶縁(Fレジン/GII)技術について述べる。

新系列2極空気冷却タービン発電機の測定技術

大久保憲悦,清野 純一

新系列2極空気冷却タービン発電機の開発は,発電機利用率の向上と品質の確保を目標としており,多くの改善が盛り込まれている。その改善の効果を検証するために出力126MVA試作実験機を製作し,1,015点の測定センサを取り付け,種々の検証試験を行った。 本稿では試作実験機の検証内容,主要部品に関する測定概要,新たに開発した光伝送方式の回転子温度測定装置および計測点数540点の多点自動計測システム装置について紹介する。

普通論文

回転機固定子コイルの余寿命診断

中山 昭伸,芳賀 弘二,村岡 政義

非破壊の絶縁診断結果から固定子コイル絶縁の残存破壊電圧と余寿命を適切に予測することを目的として,定格電圧6.6から15.4kVまでの15台の発電機から,固定子コイルを抜き取り,今日まで破壊電圧値と非破壊の絶縁診断データを求め蓄積してきた。今回これらコイルの破壊電圧と非破壊データの統計的な相関関係を算出し,非破壊絶縁特性(Δtanδ,qmax,ΔI)による残存破壊電圧予測,運転年数による残存破壊電圧と余寿命の予測,多重回帰算式による残存破壊電圧予測の方法を確立した。

1kWフライホイール発電電動機の試作

三浦  司

将来の電力貯蔵技術の一環として,超電導磁気軸受を用いた高速で損失の少ないフライホイール装置の研究が進んでいる。これに適用される発電電動機は高効率が要求され,その一つの方策として回転機の固定子コアレス化が提案されている。本稿では,1kW級のコアレス形永久磁石同期機の試作試験を紹介するとともに,コアレス機特有の問題点などについて概説する。

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