富士電機製品コラム
インバータとコンバータ

インバータとコンバータ

基礎から学ぶインバータとコンバータの違い

インバータとは? 装置か回路か、それで話も大きく変わる

「インバータ」というと、狭義では「直流(DC)から交流(AC)に逆変換する回路(機能)」を指します。しかし日本では、インバータは電圧や周波数を自在に変える「装置」として捉えている方も多いでしょう。

広義でのインバータ装置は、一定の電圧や周波数の交流(例えば、家庭用コンセントから供給されるAC100V/50Hzまたは60Hz)を入力し、異なる電圧と周波数の交流に変換して出力するものです。そうなると、狭義の「直流から交流に逆変換する」という定義とは異なってしまい、ちょっと混乱しそうです。

なぜ、このような話になってしまうのでしょうか?それを理解するには、まず、装置としてのインバータ内部を知る必要があります。インバータ装置は前段部と後段部に分かれており、交流から直流に変換する前段部の「コンバータ回路」と、直流から交流に変換する後段部の「インバータ回路」によって構成されています。

インバータ装置の仕組み

広義でのインバータ装置は、コンバータ回路とインバータ回路がセットで使われて「交流→交流」への変換になるのに対し、狭義でのインバータは回路や機能を示しているので、「直流→交流」の変換という捉え方になるわけです。この違いを踏まえた上で、インバータ装置の仕組みを説明したいと思います。

まず、コンバータ回路で交流を直流に変換します。一方向にしか電流を通さないダイオードを組み合わせ、交流を山のような形に整流し、さらにコンデンサで充放電を繰り返して、キレイで滑らかな直流に変換していきます。

次に、インバータ回路によって疑似的に電圧や周波数の異なる交流を出力させます。パワートランジスタなどのスイッチング素子でオンとオフの比率を変え、幅が異なる短冊状のパルスを作ります。それらをうまく合成して、疑似的な正弦波(交流)を出力するのです。ちなみに、この方法は「パルス幅変調」(PWM:Pulse Width Modulation)と呼ばれています。

インバータ装置でモータ回転速度を変化させると省エネ効果も発揮!

インバータ装置の主な用途ですが、交流の電圧や周波数を変えて、機械のモータの回転速度を連続的に変化させるために、よく使われています。また、インバータ装置で回転速度を制御することで、産業用の大型ファンや大型ポンプなどの機械の消費電力を抑え、省エネ効果を発揮できます。

例えば、送風機の風量を下げる場合を考えてみましょう。もし、インバータ装置を使わなければ、機械的な開閉弁などで風量を調整しなければなりません。しかし、モータは電源周波数に基づいた速度で回転しているため、モータから送られる風はそのまま垂れ流し状態になっています。これでは電力が無駄になります。

そこで、インバータ装置を使ってモータの回転速度をダイレクトに落としてやれば、機械的に風を遮る必要もなく、消費電力が小さくなって、省エネになるわけです。ちなみに、ファンやポンプの装置では一般的に消費電力はモータ回転速度の3乗に比例するため、インバータでモータの速度を落とすことで、かなり省エネ効果を期待できます。

インバータによる風量コントロール

インバータ回路は、IH調理器(IHクッキングヒータ)や蛍光灯など、モータが使われていない機器にも利用されており、発熱や明るさなどを微妙に調整する役割を担っています。

例えば、IH調理器では鍋自体を発熱させるコイルが入っており、そこに供給する高周波の交流をインバータ回路で作り出しています。蛍光灯も交流を高周波にすることで点灯速度を早め、低消費電力でも十分な明るさが得られます。また、点灯回数が増えれば、チラツキも抑えられます。

コンバータとは?インバータに外付けして使うコンバータ装置も

コンバータ回路は交流を直流に変換するために用いられます。交流は正弦波ですから、波の向きと高さが周期的に変化します。交流を常に同じ方向になるようにダイオードに通して整流させ、コンデンサで電気を充放電させて平らで滑らかな直流に変えるのです。

なお、コンバータという言葉は、インバータ装置の内部で使われる「コンバータ回路」だけでなく、単体の「コンバータ装置」を指す場合があります。

インバータ装置とセットで使う電源回生専用のコンバータ装置にも注目

次に、単体のコンバータ装置に関しては、独立した装置として働くのではなく、インバータ装置の外側に接続して利用します。「回生エネルギー」を活用する際に、インバータ装置とセットで使います。

「回生エネルギー」とは、クレーンやエレベータの巻き下げや、搬送機の減速・停止時に勢いでモータが回され、そのモータが発電機となって返す電力のことです。そのまま回生エネルギーを放置していると、インバータ装置がエネルギーを抱え込み、電圧が上がって装置が壊れるリスクがあります。そのため「抵抗器」を接続して電流を流し、エネルギーを熱に変えて放出していました。

しかし、これではエネルギーを熱にして捨てるだけなので、電力を無駄にしています。そこで登場するのが、「回生専用コンバータ装置」です。この装置によって発生したエネルギーを電源側に戻すことで、省エネ効果が得られます。回生エネルギーは、同じ系統につながった別の機械にも使えます。
例えば電車のブレーキ時、モータ側で発生した回生エネルギーを別の電車に回して使えるようになるのです。

制動抵抗器を使用する場合
電源回生コンバータを使用する場合

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