富士電機のSDGs
障がい者雇用の取り組み

ESG 環境・社会・ガバナンス

障がいのある方の雇用を創出し、社会人としての自立を促進
誰もがやりがいを持って働き、共に生きられる社会を目指して

株式会社富士電機フロンティア

2023年1月更新。所属・業務内容は取材当時のものです

富士電機株式会社(以下、富士電機)の特例子会社(注)である株式会社富士電機フロンティア(以下、富士電機フロンティア)は、障がいのある方たちを雇用し、安定した労働環境を提供することで、そこで働く社員が自立した生活を送ることを支援しています。富士電機の各拠点で働く富士電機フロンティア社員の活動を通して、富士電機の障がい者雇用の取り組みを紹介します。

(注)

特例子会社:障がい者の雇用の促進及び安定を図るため、事業主が障がい者の雇用に特別の配慮をし、設立した会社
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設立のきっかけは、障がいのある子を持つ親の願い

川崎事業所 課長 金田豊子
川崎事業所 課長 金田豊子

富士電機フロンティアが設立されたのは1994年。その当時の社会背景について富士電機フロンティア設立時から一貫して障がい者の自立支援に取り組んでいる川崎事業所の金田豊子はこう語る。

「当時は、車椅子で公共の乗り物を利用することがなかなかできなかった時代です。飲食店への入店を断られるのもごく普通の光景でした。障がいのある方は社会に出ていくことができず、ごく限られた範囲で生活することを強いられていたのです」。

1990年代、富士電機では労働組合が中心となり、障がいのある方を旅行に連れていくなどの活動を行っていた。そのような中、関係者たちの心を動かしたのは、知的障がいのある子の親御さんから労働組合に寄せられたある相談だった。

「自分たちが生きている間は面倒を見られる。でも自分たちがいなくなった後、子どもはどうなるのか。子どもが一人でも生きていけるようにしたい」。

当時、身体に障がいのある方に比べ雇用の場が少なかった知的障がいのある方の親御さんからの訴えは切実だった。これがきっかけとなり、会社として知的障がいのある方の自立支援に取り組む雇用環境をつくる必要性を痛感。「障がいのある方が継続的に働き続けることは難しいのではと考える人が多くいる中、彼らや彼女らが雇用を通じて社会に参画することで、社会全体が変わっていくのではないか」。そうした想いが富士電機フロンティアの設立に繋がった。

「障がい者」の一言で括らないでほしい

設立以来、障がいのある社員たちと向き合ってきた金田だが、もともとは富士電機で総務業務を担当していた。福祉について特別に知識や何かの経験があったわけではない。だからこそ金田は、社員一人ひとりとしっかり対話することができたのかもしれない、と振り返る。

「かつては障がいがあるというと、就業能力やその可能性についてあきらめてしまうケースも少なくありませんでした。しかし、私はそうではないと思います。できないことがある一方、できることもある。その「できること」を仕事で活かしてもらう。これが、私たちの基本的な考え方です。また、富士電機フロンティアではそれぞれの障がい特性をふまえ、自立に向け配慮が必要な部分についてのみ支援するという基本姿勢を貫いています。そのためには、社員一人ひとりとの時間をかけた丁寧な対応が何より重要です」。

仕事を通じて、人生は輝き出す

吹上事業所 課長 長谷川浩二
吹上事業所 課長 長谷川浩二

仕事を通じて、社員の人生をいきいきと輝かせたい。富士電機フロンティア吹上事業所では、そんな想いをもって、障がいのある社員たちを見守っている。業務課長を務める長谷川浩二もその一人だ。

「吹上事業所には34名の社員が所属し、組立補助・清掃・メール集配・緑化・コーヒーサーバーメンテナンス・福祉用具洗浄など、それぞれに役割を果たしてくれています。指導にあたって心がけているのは、一人ひとりの社員が『考えること』『意思表示を行うこと』『人に説明すること』ができるようにすること。それぞれが目標を持ち、それを達成したときの喜びを感じ、自信を持ってもらう。そんなきっかけを届けたいと思っているんです」。

そうした指導を行っているからこそ、社員たちのモチベーションも高い。今以上にいい仕事をするにはどうしたらいいか。お客さまや他部署からのニーズに応えるために何が必要か。社員たちと指導員がひとつのチームとして、コミュニケーションを交わす機会も多いのだという。

「お客さまや他部署から要望・課題が寄せられたときなどは、みんなでその改善策を考え、新たなアクションにつなげていきます。『マイナスをプラスに変えていこう。ピンチはチャンスなんだ』。前向きな考えを持ち、業務改善の糧にすることができているんです。社員の誰もが、真剣に、それぞれの仕事に向き合ってくれていることを誇りに思っています」。

小さな喜びの連鎖が、成長につながる

仕事風景

目的は人生に力を与えてくれるものだ。仕事を通じて得られる達成感は、社員たちのさらなる向上心につながっているようだ。

「社員たちはメキメキと成長しています。実際に組立補助業務においては、一般の製造ラインで活躍するようになった社員が3名もいるんです。驚くほどの集中力を発揮し、繊細な手作業をこなす。私たち指導員にも真似できないようなパフォーマンスを見せてくれていますよ」

インタビュー

こうした社員の成長や仕事ぶりは、指導員たちとの連絡ノートを通じて各家庭に伝えられている。

「保護者の方への連絡は、ほぼ毎週行われています。その内容は特別なことだけではありません。その日はどんなことがあったのか。何をがんばってくれたのか。彼らの日常をしっかりと伝えたい。そう考えています」

指導員と社員たち、そして、保護者の間で「がんばったね」「よかったね」という言葉が連鎖すれば、小さなできごとも喜びに変わっていくことになる。三者による絆のネットワークは、それぞれの人生により大きな力を与えてくれるはずだ。

富士電機フロンティア社員が語る仕事のやりがい

吹上事業所 関根智彰
吹上事業所 関根智彰

関根智彰は吹上工場で組立作業を任されている。ピンセットを使いながら樹脂部品の中に微細なバネを入れていく。研ぎ済まれた集中力と繊細な手さばき、スピードはもはや匠の領域だと思わせるほどだ。

「小さな部品は床に落とすだけで廃棄になってしまいます。大切にしているのは、効率を上げるために、無駄な動きをしないようにし、少しでも多くの部品をつくること。一日の作業が終わり、廃棄する部品が少なかったときは、『やったぁ』とうれしくなります。不良品を出すとお客さまに迷惑をかけてしまいますから」

仕事の先にいる「お客さま」を意識し、仕事の精度にこだわり、所作の一つひとつを洗練させる。関根はまっすぐな努力で、自らを成長させ続けてきた。そして、彼の向上心はいまだ衰えることを知らない。仕事の質を高めていきたい。さらに難しい仕事に挑戦したい。その瞳は、キラキラと輝いているようにも見える。

「私は細かい作業が好きです。複雑な型式をつくっている人の作業を見ながら勉強して、もっといろいろな型式の製品をつくれるようになりたいと思っています」

好きなことを追求し、評価される。それが、確かな自信につながっていく。富士電機フロンティアの仕事は、関根にとってかけがえのない喜びを与えてくれているようだ。そして、彼にとって、もうひとつの宝物となっているのが周囲の仲間たちだ。「職場のみんなで協力し合えることは楽しい」。少しはにかみながら、関根はそう答えてくれた。

多様な人財が能力を発揮できる職場づくりを目指して

富士電機は、「企業行動基準」(2019年6月改定)の最初の項目に「人を大切にします」を掲げている。これは、多様な人財の活躍と、一人ひとりが働きがいを持って働くことを推進することの決意の表れである。これからも、障がいのある社員が持つ能力を伸ばし、彼らが担える職域を拡大することで、多様な人財がそれぞれの力を最大限発揮できる職場づくりに取り組んでいく。

貢献するSDGs目標

働きがいも経済成長も

当社は、ダイバーシティ推進の一環として、「一人でも多くの障がい者を雇用して、定年まで就業を継続する」という考えのもと、障がい者雇用促進に取り組んでいます。これは、当社のSDGs目標「8.働きがいも経済成長も」に貢献するものであり、SDGsの理念「誰一人取り残さない」に合致するものです。