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富士電機レポート2021

社長メッセージ

エネルギー・環境事業を通じて、社会に貢献するとともに持続的成長企業を目指します

 はじめに、新型コロナウイルス感染症が世界に拡大し、社会・経済、そして人々の日常生活が大きな影響を受けるなかにあって、感染対策に誠心誠意、ご尽力されている関係者の皆様に深く敬意を表すとともに感謝を申し上げます。
 富士電機は1923年の創業以来、磨き上げてきたエネルギー・環境技術で、社会・産業の発展に貢献してきました。地球社会の良き企業市民として、地域、お客様、そしてお取引先様をはじめとする多くのパートナーとの「信頼」を大切にして、「豊かさへの貢献」「創造への挑戦」「自然との調和」を使命として成長してきました。近年、国際社会が目指すSDGsは、経済・社会・環境の統合的発展を目指すものですが、まさに当社の経営理念の実践そのものであると考えています。
 また、世界の関心が急激に高まっている脱炭素社会の実現は、これも当社の本業であるエネルギー・環境事業を通じて貢献できるものです。当社の最大の強みは、さまざまなクリーンエネルギー関連商材の提供に加え、世界トップクラスのパワー半導体を搭載したパワーエレクトロニクス機器、それらを組み合わせたシステム、エンジニアリング・サービスの提供により、エネルギーの安定供給から省エネ、自動化までトータルで提供できることです。この強みを生かし、世界が目指す、2050年脱炭素社会の実現に貢献していきます。
 SDGsの発展、脱炭素社会の実現が世界共通の課題として重要性を増す今日、富士電機が持続的に成長し続けるためには、ESG課題を明確にして推進することが重要と考えています。目標の明確化と実行、適切な情報開示、ステークホルダーとの対話を通じて経営基盤の継続強化を図ってまいります。

図:富士電機が目指すもの。クリーンエネルギー、エネルギーの安定供給、省エネ 自動化 → SDGsの発展、脱炭素社会の実現

2023年度中期経営計画達成に向けて

 2019年6月に発表した2023年度を最終年度とする中期経営計画「令和. Prosperity2023」には、2024年度以降の更なる富士電機の発展に向けて経営基盤を強化し、社会とともに繁栄(Prosperity)を目指す、という思いを込めています。

2020年度減収増益はチームによる総合力の成果

 この中期経営計画をスタートした直後から、当社を取り巻く経営環境は、大きく変わりました。2019年度の米中貿易問題に続き、2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、こうした環境変化は、経営体質の点検を行う機会となりました。この2年間、売上高は低調に推移したものの、2020年度の営業利益は、全社活動「Pro-7」による利益体質向上の成果に加え、コロナ禍においても、各工場が感染対策を徹底し、操業を継続できたことによるもので、まさにチームによる総合力が成しえた結果となりました。
 2020年度当期純利益は過去最高を更新することができましたが、特別損益に関する二つの課題がありました。一つはパワー半導体の特定分野向けの一部の製品に不具合が発生し、257億円の損失計上を行ったことです。再発防止に向け、使用条件の確認、部材調達、製品設計のプロセスにおける基準や手順を見直し、その徹底を図ってきております。お客様、株主、投資家の皆様に多大なるご心配をおかけしたことを深くお詫び申し上げるとともに、安全・安心で優れた製品・サービスを提供することはメーカーの原点であることを肝に銘じ、お客様満足の向上に努めてまいります。二つ目は、政策保有株式の縮減です。投資有価証券の一部の売却で409億円の特別利益を計上しました。今後も政策保有株式の一層の縮減を進め、売却で得た資金は、事業拡大に向けた成長投資資金に振り向け、資本効率向上を図ってまいります。
 なお、剰余金の配当は、前年度に対し5円増配の年間85円(中間配当40円、期末配当45円)となり、配当性向は29%となりました。今後も中長期的な観点から、研究開発、設備投資、人財育成などに向けた内部留保の確保を図るとともに、株主の皆様に対し、安定継続配当を重視してまいります。

2021年度は勝負の一年

 2021年度は、中期経営計画で掲げた売上高1兆円、営業利益率8%以上という経営目標の達成に向け、重要な勝負の一年になります。売上高9,000億円、営業利益600億円の目標は中期経営計画達成のためにクリアしなければなりません。
 世界共通の大目標である脱炭素社会の実現は、当社にとって、大きなチャンスです。既に加速する自動車の電動化、再生可能エネルギーの導入など、当社の事業機会は拡大しています。成長ドライバーと位置付けるパワエレシステム事業、パワー半導体事業に経営のリソースを傾注し、事業拡大を目指します。
 パワエレシステムにおいては、これまでM&Aや協業で獲得してきた商流、人財を核に、パートナーシップ戦略を推進し、海外事業の拡大を図ります。アジアは、タイ工場を中核にしてエンジニアリング力を高めてプラントシステムの提案力強化、インドでは現地開発・生産体制整備により競争力強化を図ります。また、国内外で設備投資が堅調なデータセンターや半導体関連向けに受変電設備や無停電電源装置などを組み合わせた電気設備丸ごとビジネスの受注を拡大させます。電源構成の見直しが進むなか、発電プラントとパワエレシステム事業との連携強化で再生可能エネルギーの受注拡大に取り組みます。パワー半導体は、自動車の電動化などに伴う旺盛な需要拡大に対し、生産能力増強の設備投資を加速させ、お客様需要に応えていきます。昨年度、大きな赤字を計上した食品流通は、営業・工場の抜本改革に取り組み、今年度は利益を生み出せる体質に転換してきました。自動販売機の国内シェアは70%にもなります。日本社会に根付いている自動販売機をいかに社会に役立てていくのか、環境にやさしい、人々のライフスタイルの変化に応じた利便性の高い製品を提案していきます。

脱炭素社会の実現に貢献

 世界各国で脱炭素化に向けた挑戦が始まりました。当社は2019年に低炭素社会の実現を目指し、温室効果ガス(GHG)排出量80%以上削減を柱とする「環境ビジョン2050」を策定し、発表しておりましたが、2021年6月、昨今の世界的な動向も踏まえ、2050年にサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指すとの方針に見直しました。
 今後、世界で環境投資の活発化が期待されるなかで、当社が持つ多様な再生可能エネルギー関連商材と電力安定化技術、エネルギー利用の最適化、省エネ対応製品、環境配慮製品の開発を一層強化・加速し、社会のCO2排出量削減に貢献していきます。また、自社工場においては、再生可能エネルギー設備の導入、グリーン電力の調達拡大、生産技術開発によるGHG削減など、さまざまな方策を検討し、実行してまいります。
 なお、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に係るリスクと機会の分析、検討を進めていますが、中長期視点で、ビジネスチャンスや工場・サプライチェーンにおけるリスク対策など、財務影響の検討にとどまらず、幅広く経営・事業活動に生かしていきます。

図:環境ビジョン2050。富士電機の革新的クリーンエネルギー技術・省エネ製品の普及拡大を通じ「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現を目指します

(注1)

3R: Reduce(リデュース)、Reuse(リユース)、Recycle(リサイクル)

(注2)

製品によるCO2排出削減の目標値は、2022年に開示

従業員ファーストの経営

 私がモットーとする経営は、従業員ファーストです。社員の成長が会社の持続的な成長、繁栄につながり、事業活動を通じて得た利益を社員、株主、社会に還元する好循環を生み出しています。
 企業行動基準に「人を大切にする」を掲げ、人権尊重、多様な人財の活躍に向けた就業環境づくりに取り組んでいます。社会課題やお客様ニーズも多様化してきており、多様な社員がチームで仕事に取り組む環境づくりを推し進めています。経験を積んだシニア社員には、若手への技術・技能の伝承にも大いに期待しており、65歳以降も気力、体力、そして知力を生かしていきいきと働いていただくための仕組みを整えました。また、女性活躍の推進では、女性社員の採用と女性役職者数の拡大に取り組んでいます。中長期視点に立ち、社員一人ひとりが能力を発揮できる環境整備、人財育成に努めていきます。
 新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策を機に、従来から取り組んできている、サテライト勤務や勤務時間の柔軟化など、働き方改革を更に進めるとともに、ワーク・ライフ・バランスの実現に取り組んでいます。一方、感染症対策に伴う働き方から見えてきたものは、Face to Faceによるコミュニケーションの大切さです。業務品質、業務効率向上を目的とした全社活動「Pro-7」では、働き方改革推進プロジェクトを立ち上げ、全社共通的な課題と、業務の特性に応じた課題を整理して、中長期視点に立った働き方改革を推進していきます。
 会社の施策を社員はどのように受け止め、評価しているのか、社員の意識調査を毎年行っています。経年変化を経営層・管理職層は認識することが重要と考えており、前回調査の課題を踏まえて、2020年度は、更なる職場マネジメントの強化に向けた中間層のライン課長研修の継続実施、コンプライアンス強化などに取り組みました。引き続き、社員がやりがいを持って働ける環境づくりに継続して取り組んでまいります。

ガバナンスの実効性向上

 経営にとって、長期的な企業価値向上を図るために重要なのはガバナンスの実効性向上と考えており、経営の透明性や監督機能の向上を図っています。
 体制面では、2021年度の当社の役員体制は、取締役を1名増員し9名、監査役5名での構成としました。社内取締役1名の増員は、新たに技術開発部門の責任者を加え、中長期的な経営・事業戦略、技術開発などの課題に対する議論を更に活性化させる狙いがあります。また、多様性重視の方針のもと、女性の社外監査役を2012年より登用しており、女性役員1名が含まれていますが、女性の取締役任命については課題認識し、引き続き検討してまいります。
 ステークホルダーとの信頼と期待の礎となるのは、コンプライアンスです。遵法推進委員会において各法令所管の委員からコンプライアンスの取り組み計画、進捗、実績の報告を受け、その内容は取締役会で共有しています。海外事業の拡大に注力していることから、海外子会社におけるコンプライアンスの徹底が重要課題と認識し、諸ルール周知、日常監視・監査、そして継続した教育の実施など、地に足のついた実効性ある取り組みを進めていきます。
 また、経営・事業リスクによる影響の最小化を図るため、リスクマネジメントと事業継続力の観点から、大規模災害、感染症対策、情報セキュリティなど、現場が一体となり機敏な危機管理対応力の強化を図っていきます。

熱く、高く、そして優しく

 当社は、リーマンショック以降の10年間は、メーカーの原点に立ち返り、ものつくり力強化に徹底して取り組み、内製化・自働化など工場の体質改善を図ってきました。グリーン化、デジタル化が加速してきている今日では、ものつくりの強化に加え、10年、20年先を見据えた、新たな事業創出や製品開発が必要です。既にチームでの検討を始めていますが、いずれもその主役は社員であり、社員がどのような思いで、どのような未来を描くのかが大切だと考えています。
 当社の経営スローガン「熱く、高く、そして優しく」には、社員が共有する思いが込められています。新しい技術や製品を生み出し社会に貢献するという「熱い気持ち」。「高い目標」を掲げ、どんな困難でも立ち向かっていく気概。そして「優しさ」には、三つの感謝があります。一つはお客様への感謝の気持ち。二つには仲間への感謝の気持ち。お互いに尊重・尊敬し、一緒に会社を良くしていこうという思いです。そして、三つ目は家族への感謝の気持ち。この優しさこそが代々受け継がれてきた富士電機のDNAであり、揺るぎない価値観です。
 富士電機は2023年に創業100周年を迎えます。先輩方が培ってきた、お客様、お取引先様、社員、さまざまなステークホルダーからの信頼や支えによって、今の富士電機があります。これからも多様な個性、チーム力を大切にして、エネルギー・環境事業の更なる拡大を図り、安全・安心で持続可能な社会の実現に貢献し続けます。
 株主・投資家をはじめとするステークホルダーの皆様におかれましては、今後とも一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。