研究開発

富士電機レポート2021

研究開発

写真:近藤 史郎

パワー半導体とパワーエレクトロニクス技術に先端のデジタル技術を融合し、
新たな顧客価値の創出と社会課題の解決に挑戦します。

執行役員常務
技術開発本部長
近藤 史郎

 富士電機は、パワー半導体、パワーエレクトロニクス、計測・制御、冷熱などのコア技術を活用して、創エネルギーからエネルギー安定供給や省エネルギー、オートメーション、モビリティの電動化など、多くの先端的なシステムを手掛け、さまざまな分野の課題解決に貢献してきました。今後も、創業以来培ってきたコア技術を中心とした現場起点のリアルの技術に先端のデジタル技術を融合してお客様に新しい価値を提供するとともに、パートナー連携やオープンイノベーションを通して社会課題の解決に取り組んでまいります。

中長期の研究開発の取り組み

 2023年度中期経営計画の達成に向けては、パワエレシステム事業と半導体事業にリソースを集中し、自動車・鉄道・船舶などモビリティ分野における新しい市場を開拓する製品と、海外事業拡大に向けたグローバル商材の開発を加速させています。
 中長期的な取り組みとしては、10年先を見据えた社会課題起点の技術マーケティング(注)を強化し、複雑化する問題に対して先端技術開発と社会受容性研究を両輪としたテーマ探索を強化しています。エネルギー変換、材料・物性、構造、絶縁、冷熱、機械システムなど、あらゆるリアルの技術に先端のデジタル技術を融合し、すべての研究部門が複合的にシナジーを追求して取り組んでいます。
 また、カーボンニュートラルのように富士電機のみでは解決できない課題に対しては、当社が持つ創エネ、省エネ、エネルギー変換などの技術を磨きつつ、戦略的パートナーシップを大切にして取り組みます。

(注)

製品を作る前に、技術起点で新しい顧客価値を掘り起こし、顧客候補とエコシステムを作り、商品市場を共創すること

図:社会課題→顧客価値→中期経営計画重点テーマ→中長期開発テーマ
研究開発の取り組み事例

パワエレシステム事業の強化に向けた研究開発の取り組み事例を紹介します。

パワーユニットの高電力密度化

 カーボンニュートラルの実現に向け、パワエレ機器の劇的な省エネ化や小型化につながる取り組みとして、モータードライブ、自動車や鉄道車両、無停電電源装置などの電力変換を担うパワーユニットの高電力密度化に向けた技術開発を進めています。SiCパワー半導体の性能を最大限に引き出すためのパッケージや冷却構造、能力を評価するための熱解析シミュレーションなどの先端・基盤技術を複合し、全体最適化することにより従来比20倍以上の電力密度を持つパワーユニットを開発しています。

写真:パワーユニットの開発品
デジタル技術による製品開発プロセスの進化

 製品の品質・信頼性・開発スピード向上を図るため、製品開発プロセスのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、従来のコンピュータ支援設計(CAE)を発展させる取り組みを進めています。
 鉄道車両ドア駆動システムの開発では、駆動部分と負荷となるドア本体、電気回路や制御ソフトウェアを併せてシミュレーションすることにより、開発の初期段階で性能のトレードオフを見極め、設計を全体最適化しています。実機評価を繰り返す従来の手法に比べて開発工数を削減し、異常時の動作を検証することで品質・信頼性が向上します。

写真:鉄道車両ドア駆動システムのモデル化。レールやローラなどの駆動部分に加え、負荷となるドア本体も含めシミュレーション

知的財産活動

富士電機は、知的財産を重要な経営資源と位置付け、事業の企画や研究開発の源流に入り込んだ知的財産活動の強化や国際標準化活動の推進などグローバルでの知的財産戦略の取り組みを推進しており、

  1. 1.

    パワエレ機器の高効率化・省エネ化に関する特許

  2. 2.

    SiC関連技術をはじめとするパワー半導体に関する特許

  3. 3.

    食品流通分野に関する特許

 などを中心に事業上優位となる特許群を構築しています。
 グローバルでの知的財産活動としては、海外における知的財産問題への対応、模倣品対策を継続しており、国際標準化活動では、電気・電子技術分野の規格を担う国際電気標準会議(IEC)を主軸に、国内外の各業界団体とも緊密に連携しながら規格開発に貢献しています。
 2020年度は研究開発部門と連携して、IPランドスケープ(注1)を活用して新たなビジネスや他社との協業、開発テーマなどを探索する取り組みに注力しました。国際標準化活動では、IEC上層委員会である適合性評価評議会(CAB)の日本代表役員に当社社員が就任し、2021年度から規格形成をリードする活動を進めています。また、特許庁との意見交換会を通じたより良い知財制度実現への貢献や、社内での積極的な知財活動、市場参入時の特許権の積極活用などが評価され、経済産業省特許庁が実施する令和3年度「知財功労賞(注2)」において、「特許庁長官表彰」を初めて受賞しました。

(注1)

知財情報やマーケット情報を活用し、事業戦略や経営戦略に役立てる手法

(注2)

経済産業省特許庁が、知的財産権制度の発展および普及・啓発に貢献のあった個人や、制度を有効に活用し円滑な運営・発展に貢献のあった企業などを毎年選定し、表彰する制度

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