富士電機が貢献する環境・社会課題
国際標準化に関する取り組み~ルールを守るから、ルールをつくるへ

グローバルビジネスを拡大していくために。山積する社会課題を解決するために。国際標準化への対応は、メーカーにとって必須の課題であると言えます。富士電機は、この課題に対して、以前から力を注ぎ続けてきました。国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)に人材を派遣し、主要な委員を務めるなど、確かな存在感を発揮している富士電機の取り組みを紹介します。
国際標準は、健全な競争と協創を生む「ものさし」
国際標準とは、製品の品質・性能・安全性・寸法・試験方法などに対する、世界共通のルール(国際規格)のことです。世界各国の規制を踏まえて取り決められた共通のルールを守ることで、各国の事情を考慮した製品評価の手間がなくなる。製品を購買する顧客側も、製品購買の判断基準が明確になる。国際標準は、各メーカーのグローバルな事業推進に大きなメリットをもたらすことになります。
これまで、各企業では、個別の製品に関して、ISO・IECをはじめとした国際規格やJISなどの国家規格の品質・安全などに係る認証を計画的に取得する標準化活動に取り組んできました。しかし、近年では、企業自らが積極的にルールづくりに参画する「ルールメイキング戦略」が活発になっているそうです。IECの上層委員を務めるグローバル戦略室・室長の髙橋弘は、その背景について次のように話します。

事業統括部
グローバルビジネス戦略室長
髙橋 弘
〔社外役職〕
IEC CAB(適合性評価評議会)日本代表委員
IEC CAB デジタルトランスフォーメーションWG国際主査
IEC-APC CAB国内対応委員会 委員長
JISC(日本産業標準調査会) 標準第二部会委員
NITE ISO/IEC17025試験事業者認定評議会委員
「現代社会が抱える社会課題は、複雑かつ難解なもの。それを解決していくためには、各メーカーが持つ製品や知見をつなげることで、ひとつのシステムを構築することが求められます。それぞれの製品は、国際標準である国際規格を基準にして他社の製品とつながっていきますから、SDGs目標の達成やカーボンニュートラルの実現といった『社会課題の解決』を見据えてルールをつくっていこうという視点が、より強くなっていると感じます」
社会課題の解決に向けて、適切なルールをつくる。その一方で、国際標準の策定には、競争優位性を担保するという狙いも存在します。20年以上前から国際会議に参画し、現在はIECで国際主査を務める、半導体事業本部の宮下秀仁は、国際標準を取り決めていく上でのポイントを次のように語ります。

担当部長
宮下 秀仁
〔社外役職〕
IEC SC47E/WG3国際主査
IEC SC47E国内委員会委員長
IEC SC47D国内委員会副委員長
「国際標準を定めることは、たとえるなら『ものさし』をつくるようなもの。ただし、製品のすべてを規格化してしまっては、技術や性能による競争優位性がなくなり、コストで競争するしかなくなってしまいます。大切なのは、自社・自国の強みを生かしつつ、他国を巻き込んでルールを定めていくこと。途上国が持つ発展エネルギーを市場の拡大につなげることができれば、それが『コスト競争を勝ち抜くビジネスツール』となっていくわけですからね」
国際規格は、健全な協創と競争を生んでいくための「ものさし」となるもの。だからこそ、メーカー自らが積極的にそこに関わり、未来をつくっていくことが重要であることがわかります。
富士電機の国際標準化~次代を見据えた基盤構築を推進~

「パワーエレクトロニクスやパワーデバイスに関連する製品・サービスにおいて、ルールメイキング戦略を推し進め、自社の技術(強み)を業界標準にすることで、ビジネスを他社より優位に進め事業拡大を図るとともに、事業活動(自社製品・システムなど)を通じたカーボンニュートラル(CN)の実現につなげる」。それが、富士電機が掲げるルールメイキング戦略です。2014年には、その推進を担う、全社委員会である「国際標準化委員会」を設立。2022年には、具体的なビジネス戦略立案と基盤整備を担う部門として、「グローバルビジネス戦略室」を立ち上げています。
「国際標準化に伴う取り組みは、これらの組織が立ち上がる以前から存在していました。各部門のプロフェッショナルに会社からミッションが与えられ、国際規格の制定・改定の審議に参加していたのです。競合他社と議論し、共通のルールをつくっていく。その会議は実に刺激的なもの。幸いにも議長職を拝命しており、ここでの経験が自らの視野を広げてくれたと思っています」(宮下)
「グローバルビジネス戦略室」には少数精鋭のメンバーが集い、精力的な活動を行っています。新たな国際標準や認証システムをつくっていくためのルール立案はもちろん、国際標準に適合した社内基盤を整備していく社内改革推進に至るまで、多様なミッションに挑み続けているのです。
「とくに注力しているのが、グリーントランスフォーメーション(GX)です。これには、多くのイノベーションやルール形成が必要とされます。現在は、そのルール形成基盤の基本となる制御システムセキュリティーに関する取り組みを最初に行っています。グリーントランスフォーメーションを含め、サステーナブル・カーボンニュートラルな社会では、国際規格を通じて国内外の他社製品とつながり、独自の価値を発揮します。そのため、これからの製品(サービス含む)には、グローバルサプライチェーンの中で、確かなセキュリティーが求められることになります。だからこそ、ものづくりを担う現場も万全のセキュリティー体制を整えておく必要があるのです。そして、もうひとつ注力しているのが、次世代を担う人材の育成です。2050年のカーボンニュートラル実現を牽引していくのは、私たちではなく、若い世代になりますからね。経済産業省が実施する国内を対象とした『ISO/IEC国際標準化人材育成講座(YPJ)』や、IECが世界各国の若手を招集して実施するグローバルな『ヤングプロフェッショナルプログラム(YPP)』などの社外教育プログラムにも積極的に若い人材を派遣し、ここでは私も講師を務めています。それに加えて、インダストリー事業本部とエネルギー事業本部、パワエレ営業本部では、社内のルール形成も含んだ若手向けの国際ビジネス戦略スキル人財育成プログラム(IBSP)を2023年度から開始しました。第一期生は、6名の20~30歳代の事業部から推薦を受けた方が参加しております。」(髙橋)
世界で存在感を発揮する富士電機

訪問風景
富士電機の国際標準化に対する取り組みは、社外からも大きく評価されています。
IECには、経営や運営を審議する、上層委員会があります。その中の一つである、CAB(適合性評価評議会)は、プロセス、製品(システム含む)、人、組織などが、規定された基準を満たしているかを確認・実証できる仕組みを制定する委員会で、IEC加盟国から投票で選出された15名の委員他で構成されます。
髙橋は、第1期(2021年~2023年)のCAB委員に就任しており、2023年10月にエジプトで開催されたIEC総会では、継続して第2期(2024年~2026年)にも就任することが承認されました。髙橋は、IECにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)認証WGの国際主査やAI認証タスクフォースの委員にも就任しており、富士電機がGXのルール形成やイノベーションを後押ししていくことが期待されます。
2023年8月には、カーボンニュートラル事業・研究開発へ積極的な取り組みや、IECでの重要な役割を担っていることが評価され、当社の千葉工場がIEC事務総長CEOの視察訪問企業に選出されました。
富士電機の国際標準化を牽引する二人のプロフェッショナルは、今後に向けての抱負を次のように話します。
「自社の事業を発展させる目的だけでなく、次の社会をよりよくするためのルールメイキングを任される。競合でありながら、他社のメンバーと想いをひとつにする。この仕事を任されていることに大きな喜びと誇りを感じています。若い世代にこの仕事の魅力を伝えることで、富士電機の活動をさらに活性化していきたいですね」(宮下)
「若い世代の活躍にはもちろん期待していますが、私自身も日々、ワクワクしながらこの仕事をしています。これからの時代に何が必要なのか。世界の人々のために何ができるのか。その使命に真摯に向き合いながら、新しいしくみを創り出していきたいと思っています」(髙橋)

貢献するSDGs目標

富士電機の国際標準化に関する取り組みは、SDGs重点目標「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献します。