一歩先へ!富士電機の基盤技術

製品開発力強化に向けた、基盤技術を紹介します。

電流遮断技術

さまざまな使用場所・状況を想定して研究される遮断技術

写真右側から左側へアークが移動していく様子を1/10秒ごとに撮影し、アークの挙動が確認できます。

電流を遮断する「遮断技術」。発電所や変電所、工場、ビル、家庭など、電気が使われる場所に設置される開閉装置や遮断器にこの技術が使われています。日常のスイッチの入り切りに加え、雷などの異常電流が生じた際の遮断まで、電圧や想定される異常電流値に応じてガス遮断器、真空遮断器など適切な製品が選択されます。

遮断の際には、電極間に高温のプラズマであるアーク放電が発生します。このアーク放電の挙動を正確に把握することで、最適な遮断部構造を設計することができます。特に把握が難しい事象は、落雷などがきっかけとなり通電する数万アンペア以上の短絡電流の遮断。この現象は、製品寿命10から20年のうち1回起こるかどうか。しかも、このアーク放電は100分の1秒と、ほんの一瞬です。また、日常のスイッチの入り切りにより発生するアーク放電と比較して、数千から数万倍の電力であり、大きな光と熱エネルギーが発生します。アーク放電部の温度は約1万度程度、圧力は10気圧を超えるレベルまで瞬間的に上昇するため、アーク放電を正確に計測・把握することは極めて難しい取り組みでした。

アーク放電の挙動を正確に把握する技術を開発

シミュレーション後、実験で事象を確認し、予測と結果が合っているか確認します

アーク放電の挙動は従来、電流計や電圧計で測定を行い、その波形やそれまでの経験を基に推定していました。

アーク放電から放射される光を分析してアークのプラズマ温度の測定や熱電対という温度センサーを使いアークにより生じたホットガス(高温ガス)の温度の測定は電気信号が微弱であるため、従来は不可能でした。

そこで、ノイズを除去する独自の手法を開発し、温度が測定できるようになりました。

このようにして得られた実測データと従来よりも精緻なシミュレーション技術を適用して得られる情報と組み合わせることによって、挙動を正確に把握することができるようになりました。

開発者の声

技術開発本部 先端技術研究所 応用技術研究センター 電機技術研究部

新しい技術をどんどん開発しています
アーク放電の挙動を正確に把握できるようになったことにより、さらなる機器の小形化、遮断時間の短縮、直流系統の遮断といったお客様のニーズに応えるための技術開発が、より迅速に実行可能となりました。配電盤の安全性向上など遮断器以外の当社製品への適用や、半導体デバイスを用いた新しい遮断方式の技術開発にも着手しています。

遮断技術は物理現象の理解、予測技術の開発、およびこれらを駆使した改良案の提案といった取り組みにより進化し続けています。苦労して目標性能を達成したときの喜びは大きく、やりがいのある仕事です。

記事の内容と所属は取材時のものです。