一歩先へ!富士電機の基盤技術

製品開発力強化に向けた、基盤技術を紹介します。

材料分析技術

ナノレベルの極小箇所で生じる現象を分析し、ものつくりに貢献

材料分析は、電子顕微鏡などで、開発や品質保証の工程で生じる不具合の原因究明や、製品が設計通りに仕上がっているかの評価を行う技術です。分析で得られたデータを効果的に活用することで、製品品質向上や開発期間短縮を実現します。

分析対象はパワー半導体、ディスク媒体、インバータ、電磁開閉器、自動販売機など多岐にわたりますが、共通するのは、分子・原子レベルの小さな箇所が製品の特性を左右するという点。例えばSiC(注)パワー半導体を搭載したパワーコンディショナの場合、パワー半導体チップのゲート界面(SiC基板と酸化膜の境界)です。いずれも大きさはナノメートルレベル(ナノメートルは 100万分の1ミリメートル)で、ここに電子線やX線を照射し、形状や組成などの情報を得ることで、製品に影響を及ぼしている現象を明らかにしています。

炭化ケイ素。シリコンに代わる次世代のパワー半導体材料

材料に関する知見を活かしSiCパワー半導体チップの開発期間を短縮

材料分析を行う分析グループでは現在、生産性向上に向けた提案活動に力を入れており、最近の成果として、SiCパワー半導体チップの試作回数低減が挙げられます。

SiCパワー半導体チップの開発における重要課題の一つが、ゲート界面を安定的に結合させること。パワー半導体では、熱処理で基板に酸化膜を形成するプロセスがありますが、その際に基板と酸化膜の間に生じる異物がスイッチング(電気のオン・オフ)の性能に大きな影響を及ぼします。ある特定の元素を添加することで異物を排除していきますが、その量やタイミング、温度などの条件には多くの組み合わせがあります。

そこで、開発部門と協力し、材料分析から推測された現象に基づき数種類の組み合わせパターンに絞り込んだ実験サンプルを作成。これを活用することで、チップの試作回数を60%削減し、開発期間の短縮を実現しました。同時に、高価なSiC基板を用いた試作品の製作コスト低減にも貢献しました。

開発者の声

技術開発本部 先端技術研究所 基礎技術研究センター 応用物理研究部

常に頼られる存在でありたい
私たちは、依頼された不具合分析などにとどまらず、日々の研究で得られた成果や発見をフィードバックし役立てていただくことで、開発部門や製造部門にとって常に頼れる存在でありたいと思っています。

私たちは縁の下の力持ち。一方で、新しい分析技術を開発し、この分野で業界のトップランナーになりたいという野望も抱いています。ものつくりの課題でお困りの方はいませんか? 分析グループには多くの知見、ノウハウがあります。フットワーク良く現場を訪ね、腰を据え、依頼者に真摯に向き合うことをモットーに、富士電機の事業拡大に貢献します。

記事の内容と所属は取材時のものです。