一歩先へ!富士電機の基盤技術

製品開発力強化に向けた、基盤技術を紹介します。

説明可能なニューラルネットワーク技術

予測結果と入力データの関連性を明確化

ニューラルネットワークとは、人間の脳における情報処理の仕組みをコンピュータ上で再現した計算モデルです。予め学習させておいたデータに対して、新たな情報が加わったときに、どのような結果が出力されるのかを予測します。例えば、電力需要予測では、過去の電力需要と気温や湿度、天候などの気象データの相関関係を学習。その相関関係と予測したい日の気象予測から電力需要を計算し、出力します( 図1 )。

従来は、相関関係の学習の際に気温や湿度などの要素が複雑に組み合わさり、それぞれが予測結果にどの程度影響しているかわかりませんでした。こうしたなか当社は、ニューラルネットワークの計算モデルを自社で構築しているという強みを生かし、業界で初めて要素ごとに学習を行う技術を実現しました( 図2 )。例えば気温の1℃上昇・低下に対して電力需要が何kW 変化するかを解析することができます。さらに、学習に使うデータのうち、予測には不要となる特異なデータを自動で取り除く技術も開発し、予測を高精度化しました。

電力需要予測システムに適用して、電力の安定供給に貢献

電力は需要と供給を常に一致させることが必要です。この需給バランスが偏ると発電所における発電機の回転数に影響を及ぼします。例えば、需要が供給を上回る場合、発電機への負担が増すため回転数が低下しますが、こうした回転数の変化が原因で発電機の回転軸が金属疲労などを起こし、発電機の停止さらには大規模停電につながる恐れがあります。

電力需要は季節や気象、時間帯により大きな差があります。一方、供給側では、地球温暖化防止に向けて太陽光や風力発電の導入が拡大しています。これらは自然条件(日射量、風量・風向など)に依存するため、発電量の急な調整が難しく、発電事業者にとってはいかに綿密な発電計画を立てられるかが課題です。

このような背景から発電計画に欠かせない電力需要予測に対するニーズが拡大するとともに、その予測結果と気象データとの関連性を明確化することが求められています。当社は、この説明可能なニューラルネットワークを活用した電力需要予測システムにより、これらの課題解決に貢献しています。今後はこの予測技術を鉄鋼プラントにおける溶銑(ようせん)(注)の温度予測などに活用するなど、適用分野の拡大を目指します。

溶融された銑鉄

開発者の声

技術開発本部 デジタルイノベーション研究所
AI ソリューションセンター AI 研究部

これまでニューラルネットワークを使った当社の予測システムは、大手電力会社など電力分野への適用がほとんどでしたが、近年、製造業のAIへの関心の高まりにより、新たなニーズが生まれ始めています。今後は、電力分野だけではなく、製造業に対して製品の品質向上や省人化に資するシステムを開発し、事業拡大に貢献していきます。

記事の内容と所属は取材時のものです。