一歩先へ!富士電機の基盤技術

製品開発力強化に向けた、基盤技術を紹介します。

騒音シミュレーション技術
騒音の発生をプログラム上で再現 開発初期段階での検証が可能に

製品の騒音対策で生活・作業環境の改善に貢献

図1 ノイズの影響範囲(イメージ)

私たちの生活は、工事現場や自動車の走行、工場での生産活動などで生じるさまざまな「音」にさらされています。住民や工場で働く作業者に与えるストレスを抑制すべく、騒音に対する法令や規制が定められており、企業はこれらへの対応が必要です。

当社では、自社製品の騒音対策を進めています。例えば空冷が必要な電気機器などの騒音を低減することで、搭載される工作機械等の生産設備の騒音抑制につながります。

これを実現するのが当社の「騒音シミュレーション技術」です。騒音シミュレーションは、プログラム上で製品や周辺環境をモデル化することで、音の発生やその大きさ、音がどのように伝播するのかなどを、視覚的に分かりやすく検証できます。

図2 薄板金の自働溶接システム構成

私たちの取り組み

原理検証機を使ってデータを取得・検証

シミュレーションを行うには、まず文献や当社製品に関する報告資料などから騒音に影響する要因を推定。次に構造を単純化した原理検証機を使って試験を行い、その結果(データ)を基に、パソコン上で形状や物理現象をモデル化します。ここでは、「電磁振動」によるシミュレーションの例として、変圧器を挙げます。

変圧器は、鉄心に2本のコイルを巻き、双方のコイルの巻き数によって電圧を変える製品ですが、電気が流れると、鉄心・コイルの周辺に「磁界」が発生します。そこから生じる電磁力の影響で、周辺の部材が変形・振動することが、騒音の原因になります。

そこで、まず鉄心・コイルの原理検証機を製作して実際に電気を流し、振動、変形量、磁束密度などの項目を測定します。鉄心は薄い鉄板がミルフィーユ上に積み重ねられた「積層構造」になっていますが、この鉄板の重ね方はもちろん、コイルの巻き方、巻き数など、騒音に影響するさまざまな要因をシミュレーションモデルとして構築します。

シミュレータで解析

次に、構築したモデルを基に、シミュレータで計算を行います。ここでは「流体圧力変動」により生じる騒音のシミュレーションを紹介します。

本シミュレーションでは、冷却ファンなどを搭載しているモータや自動販売機、インバータなどを音響解析できます。例えばモータは、連続して駆動させると高温になるため、冷却用ファンでモータの表面に風を送り冷やします。このとき冷却用ファンの周辺では、空気の流れが乱れ、空気が振動することで騒音が生じます。

そこで私たちは、シミュレータを使って騒音の原因となる「空気の流れ(流体)」を見える化し、発生した音がどこに、どのように伝わるかを解析します。開発の初期段階で適用することで、製品の騒音対策にかかる時間やコストを大幅に削減できます。

開発者の声

生技術開発本部 デジタルイノベーション研究所 デジタルプラットフォームセンター デジタルエンジニアリング部

私たちデジタルエンジニアリング部は、ほかにも、流体、構造、電磁、機構、駆動制御など幅広い分野のシミュレーション技術を開発しています。また他部門からの依頼で製品のシミュレーションを請け負ったり、自力でシミュレーションができるようプログラムの構築やソフト導入の支援を行っています。

記事の内容と所属は取材時のものです。