一歩先へ!富士電機の基盤技術

製品開発力強化に向けた、基盤技術を紹介します。

メガソーラシステム用 出力安定化技術

蓄電池を使い再生可能エネルギーの出力を制御

2012年に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)がスタートし、異業種からの発電事業参入が増える一方、電力系統の運用・整備の在り方が問われています。例えば太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる発電は、気象条件の変化により発電量が大きく変動するため、電力需要に合わせた発電・供給が課題です。また、電力の需給バランスが崩れると、周波数の乱れが生じ、電力系統の異常、工場や家庭の設備・機器の動作不良などにもつながる恐れがあります。

そうしたなか注目を集めているのが、蓄電池で電力需給のバランスを整える仕組みです。例えば電力供給(発電)が需要(消費)を上回れば蓄電池に充電し、足りないときには蓄電池に貯めていた電気を放電し活用します。当社は、この「充放電」を高精度でコントロールする制御技術に強みがあります。ここでは本技術の適用事例として、北海道日高町で今年4月に稼働した「日高庫富太陽光発電所(9MW)」を紹介します。

太陽光発電システム構成

電力会社・発電事業者双方のニーズを満たし、前例のない高精度の制御を実現

研究開発の成果 ①世界でも高水準である発電量変化率  「1% /分以下」を達成 ②蓄電池の容量を従来(他社)製品より「約20%削減」
このモデルを用いて、別の太陽光発電所の1年間分の発電データを1秒単位で分析し制御パラメータを調整。2年間の研究開発の結果、北海道電力㈱の定める発電量変化率を達成し、蓄電池の容量を従来(他社)製品より約20%削減することができました。実機検証を経て、2016年上期に開発を完了。この技術が、北海道における7件、計150MW規模の太陽光発電システム受注獲得(2017年9月時点)に大きく貢献しています。

北海道は国内の他地域と比べると、最大需要に占める再生可能エネルギーの割合が高いことから、太陽光発電所の運用時には、発電出力の変動に対応できる高精度の出力制御が必要です。一定期間の発電量変化の割合(発電量変化率)は、10分間で10%程度の水準が一般的であるのに対して、北海道電力㈱が求めたものは「1分間で1%以内」。世界においても高水準の要求でした。

蓄電池の容量を増やせば発電量変化率は達成しやすくなりますが、投資コスト削減を望むお客様(発電事業者)の意向には沿いません。そのため、発電量変化率を実現しながら蓄電池の容量を削減することも当社に課せられた課題でした。

こうした厳しい条件に対して、当社は業界に先駆け実証・実運用を重ねてきた風力発電施設での蓄電池制御の成果を活かしながら、北海道電力㈱向けの制御モデルを作成しました。

開発者の声

技術開発本部 先端技術研究所 システム技術研究センター 高度アルゴリズム研究部

高い制御技術をビジネスの付加価値に

国内では、FIT導入を背景に拡大した太陽光発電に加え、今後は風力発電への期待も高まっています。太陽光で培った高度な制御技術を風力発電向けにもフィードバックし、開発期間の短縮につなげていきます。また、制御技術を付加価値として、東南アジアなどの海外で、事業部門とともに競争力あるソリューションビジネスを展開していきたいです。

記事の内容と所属は取材時のものです。