富士電機のSDGs
生産時廃棄物の削減

ESG 環境・社会・ガバナンス

富士電機・吹上工場の廃棄物削減プロジェクト
~廃棄物を出さない「循環経済」の実現を目指して~

2023年11月公開。所属・業務内容は取材当時のものです

 事業活動における資源循環の取り組みは、3R(リデュース・リユース・リサイクル)から循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行が求められています。この世の中の流れに対応するためには、「発生した廃棄物をどうするか」から、「廃棄物を出さないビジネスモデル」へと取り組みを変えていく必要があります。富士電機は「環境ビジョン2050」において、環境負荷ゼロを目指すグリーンサプライチェーンの構築と3Rの推進をビジョンに掲げ、資源の再利用に取り組むことで廃棄物の最終処分量を削減してきました。現在は、この取り組みに加え、さらに循環経済の実現を目指す活動に着手しました。循環経済の実現には、使用する材料や製品構造の見直しなど、ビジネスモデルを変革する新たな施策が必要です。その新たな施策を進めていくためにも、これまでの3Rの取り組みを確実なものとし成果に結びつけることが重要となります。
 今日は、廃棄物最終処分量ゼロを実現した吹上工場の取り組みとそれを牽引したメンバーたちの想いを紹介します。

全社の「廃棄物最終処分量削減」に向けて

 富士電機は2019年に発表した「環境ビジョン2050」の中で「循環型社会の実現」に取り組むことを明言している。環境管理部の部長を務める池見和尚は、その方針と施策について次のように話す。

生産・調達本部 品質・環境管理センター 環境管理部長 池見和尚
生産・調達本部 品質・環境管理センター 環境管理部長 池見和尚

 「富士電機では、循環型社会の実現に向けた取り組みの一つとして、廃棄物最終処分量の削減を推進しています。生産時に排出される廃棄物の最終処分率(埋立て処分量/廃棄物発生量)を重要指標に設定しています。各生産拠点での最終処分率の結果をモニタリングし生産拠点における課題を明確にしたうえで対策に取り組み、最終処分量の削減を進めています。発生した廃棄物のうち埋め立て処分以外は、マテリアルリサイクル(回収した廃棄物から新しい物をつくり出す)、ケミカルリサイクル(化学の力で資源を分解する)、サーマルリサイクル(廃棄物を燃やしたときに出る熱を回収して利用する)に活用されています。まずは埋め立て処分ゼロの達成を最優先とし、次にマテリアルとケミカルのリサイクル比率を増やすことが必要だと考えています。同時に、3Rから循環経済への移行を踏まえた取り組みも進めていく必要があります」

2022年度、国内外の生産拠点を合算した全社の廃棄物の最終処分率は、今までで最も低い0.5%と、目標の1.0%を下回ることができた。特に国内の各生産拠点では、最終処分量削減の取り組みにより、ここ5年ほど安定して1.0%を下回ることができているのだという。

吹上工場で取り組む「廃棄物最終処分量削減」活動

 吹上工場は、主に電磁開閉器と高圧遮断器を部品加工から組立まで一貫生産をしている工場だ。部品加工は、鉄・銅・銀・プラスチックをはじめとした材料を、塑性・切削・溶接・成形などの一次加工、表面処理の二次加工といった多様な要素技術を用いて加工していく。また、組み立てにおいては、全自動、半自動、手組み立てと製品特徴に合わせて生産が進められている。製造部製造支援課・課長の高橋徹如は、最終処分率ゼロを達成した要因をこう語る。

富士電機機器制御(株)生産統括部 吹上工場 製造部 製造支援課長 高橋徹如
富士電機機器制御(株)生産統括部 吹上工場 製造部 製造支援課長 高橋徹如

 「吹上工場から排出される廃棄物は、鉄・銅・銀・プラスチックなどの主材料と、一次・二次加工から排出される廃油、有機溶剤を含む廃液、製品包装・荷崩れ防止、運搬用のビニール・木材が中心です。これらは、すべてマテリアルリサイクル、サーマルリサイクルとして処分できています。これは、過去から継続して最終処分にならないようにパートナー企業の開拓に努めてきた結果だと思います。提携する企業は40社以上で、すべて地元の企業です。密なコミュニケーションを交わしながら、最終処分ゼロに向けて試行錯誤を重ねてきました」

 各所から排出される廃棄物を徹底的に調べ上げ、「何がリサイクルできるのか」「どうすれば有価で引き取ってもらえるか」を吟味する。吹上工場のゼロという数値は、メンバーたちの地道な提案と交渉によって成し遂げられたものだ。その中心的な役割を担った製造支援課・課長補佐の臼井益己は、自らのチャレンジをこう振り返る。

富士電機機器制御(株)生産統括部 吹上工場 製造部 製造支援課長補佐 臼井益己
富士電機機器制御(株)生産統括部 吹上工場 製造部 製造支援課長補佐 臼井益己

 「たとえば、金属部品が入っているプラスチックケース。これは、プラスチック有価物業者では引き取り不可だったのですが、金属有価物業者にヒアリングしてみたところ、有価での引き取りが可能となることがわかりました。今の成果は、こうした地道な仕事を繰り返してきた結果です。大切なのは、そこに関わる私たちが『こういうことはできないか?』というスタンスを持ち続けること。パートナー企業との関係性を築きながら、一つひとつ『有価物化を促進する分別』を実現していったのです」

分別の意識向上を「仕組み」に落とし込む

 ひとつの部署の活動だけで廃棄物の最終処分率削減を実現することはできない。ものづくりに用いられる膨大な部品や廃棄物を把握することは、きわめて困難な課題であり、その解決に向けては、現場の協力や分別の意識を向上させることが欠かせない。

 「この業務を任されたばかりのころは思うように分別が進まず、異種の素材、例えば金属とプラスチックが分解可能にもかかわらず接合されたままの『混ざり物』が散見されるといった状況でした。そうした状況を打破するために注力したのが、現場を預かる部門長とのコミュニケーションです。『混ざり物』が発生したときに、分解の上回収スペースに置くように写真つきのメールで協力をお願いするなど、泥臭い仕事が結果に結びついたのだと思います」(臼井)

 ものづくりの現場に分別の意識を浸透させる。その上で大きな役割を果たしたのが、同部門のメンバーを専属の「運搬者」に任命したことだ。廃棄物の「運搬」を担うメンバーたちが、廃棄物分別について注意喚起することで、現場の意識は劇的に改善されたのだという。

 「こうしたアイデアが生まれたのは、私自身にサプライチェーンマネジメントの知識を学んだ経験があったからです。ものづくりの現場で改善を続けてきた経験を大いに活かすことができたと思います。ポイントは、意識を向上させるためのコミュニケーションを『仕組み』に落とし込んだこと。回収・運搬を担うことで、現場の手間を減らすことにもつながりました」(高橋)

有価物の分別
有価物の分別
梱包材の分別
梱包材の分別

廃棄物を出さない未来へ

 富士電機が推進してきた3Rは、「出たものをリサイクルする」というように、廃棄物が出ることを前提としている。一方、循環経済の考え方は「資源を循環的に使用し続ける」ものであるため、事業者は廃棄物を出さない取り組みが必要だ。2022年4月に施行されたプラスチック新法は、その象徴的な動きといえる。そのため、廃棄物の削減に向けた取り組みにも、さらなる進化が求められることになる。メンバーたちは、今後に向けた展望と意気込みをこう話す。

 「廃棄物が『出ないようにすること』は、私たちのチームだけでなく、工場全体で取り組むべき課題です。新たな課題を意識することは大切ですが、まずはこれまでの努力を継続していくことが大切だと思っています。排出された廃棄物をできるだけ効率のよいかたちで、有価物化する。メンバー一丸となって、社会の期待に応えるものづくりを実現していきたいと思っています」(臼井)

 「これからは、プラスチックをリサイクルするだけでなく、総排出量を削減していくことが求められます。吹上工場でも、プラスチック廃棄物を再度分析したところ、海外からの部品梱包材で多量のプラスチックが持ち込まれていることがわかりました。まずは、ここを切り口に、改善を図ろうと考えています。現在は、各部門を超えた協力体制が整えられ、具体的なアクションを起こしているところです」(高橋)

 「富士電機では、最終的に2050年ゼロエミッションの実現を目指していきます。製品の設計から廃棄物処理に至るまで、循環経済の実現に向けて取り組んでいきます。その中で、廃プラスチックの削減(プラスチック新法への対応)は大きな課題と考えており、現在生産拠点における廃プラスチック排出の実態調査を行っています。廃プラスチックの発生要因を分析し削減につなげていくとともに、排出物分別の徹底による再利用拡大や必要に応じて処理委託先の見直しに取り組んでいます。このように、循環経済の実現に向けて実態調査からスタートしていますが、次のステップとして資源を有効活用するサプライチェーンの構築に取り組む予定です。そのためにも、まずは全社で廃棄物最終処分量を限りなくゼロに近づけることが必要と考えており、国内外で取り組みを進めていきます」(池見)

貢献するSDGs目標

気候変動に具体的な対策を

当社は、企業行動基準に「地球環境を大切にします」を掲げ、地球環境保護への取り組みを経営の重要課題の一つと位置づけています。SDGs目標「12. つくる責任つかう責任」を当社が取り組む重点目標の一つに掲げており、長期的に取り組むべき環境活動の方向性として、「環境ビジョン2050」および「2030年度目標」を策定し、生産活動を含めたサプライチェーン全体での廃棄物最終処分量削減に向けて取り組んでいます。