富士電機E&Cグループは、ESG経営を通じて社会課題の解決と企業としての持続的成長の実現に取り組んでおり、基本方針の一つに「自然との調和を図り、環境に配慮した事業活動を積極的に推進します」を掲げています。
現在、中期経営計画“「Progress E&C 2026」〜次の100年へ〜”における目標達成の実現に向け、気候変動や自然環境・生物多様性への対応を喫緊の課題と認識し、具体的な取り組みを進めています。

当社グループは、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献するとともに積極的な情報開示を目指しています。

取

気候変動

陸、淡水
海洋利用の変化

資源利用、
資源補充

汚染、汚染除去

侵略的外来種の
導入・除去

TNFDへの賛同

2024年1月、自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures : TNFD)提言に沿った開示を進める意向のある組織として、「TNFDアーリーアダプター」に登録し、TNFDフォーラムに参画しました。

一般要件

TNFD提言に基づく初期的な開示として、 2024年に公開されたTNFD最終フレームワーク(v1.0)を参照し、当社グループの事業で使用する主要資材のバリューチェーンにおける自然環境・生物多様性への依存・影響度の把握を行いました。

  • 対象事業は、当社グループの中期経営計画で示された事業領域を踏まえ、事業規模かつ自然環境や生物多様性との関連が高いと考えられる「電気設備工事業」と「空調設備工事業」としました。
  • まずは、特定した2つの事業で使用する主要資材「ケーブル」と「業務用パッケージエアコン」におけるバリューチェーンの上流と直接操業を開示範囲としました。

ガバナンス体制

サステナビリティの推進体制

  • 気候変動をはじめとする自然関連などサステナビリティに関する方針・施策を審議する機関として「サステナブル委員会」を設置しています。
  • 委員長に代表取締役社長、委員会メンバーは常任役員と各支社長で構成しており、全社委員会等と連携を図りながら当社グループを包括した取り組みを推進しています。
  • 「サステナブル委員会」において審議した重要課題や取り組みは「取締役会」に提案・報告を行っています。
取締役会とサステナブル委員会、全社委員会の関係図

ステークホルダーとの関わり

  • 当社グループは、地球社会の良き企業市民として、地域、顧客、パートナーとの信頼関係を深め、誠実にその使命を果たしてまいります。
  • 全社員が「富士電機E&Cグループ基本方針」や「富士電機E&Cグループ人権方針」に基づき行動し、基本的人権を尊重する責任を果たしています。さらに、すべてのステークホルダーやサプライチェーンの皆様に対して本方針へのご理解、ご支持を働きかけています。
  • また、お取引先に遵守・実践していただきたいCSRへの考え方や具体的な事項(人権・労働への配慮、自然共生への配慮など)を「CSR調達ガイドライン」に定めています。
  • 人権の尊重が企業文化として定着することを目指し、人権啓発活動の計画・実行推進を担う「人権啓発委員会」を設置しています。

富士電機E&Cグループ人権方針

富士電機E&CグループCSR調達ガイドライン

戦略

自然への依存・影響度

第一段階の取り組みとして、当社グループの電気設備工事業と空調設備工事業のバリューチェーンにおける自然環境・生物多様性への依存・影響度を把握しました。
自然との接点、依存関係、影響、リスクや機会など自然関連課題への評価を行うため、TNFDが推奨しているLEAPアプローチを活用して、Locate(発見)、Evaluate(診断)のフェーズまで実施しました。また、企業活動が自然環境に及ぼす依存や影響の有無を分析するツール「ENCORE」も活用しています。

「LEAP」とは、Locate(発見)、Evaluate(診断)、Assess(評価)、Prepare(準備)の4つのステップを表した頭文字

依存度

  • 上流の原料採取(非鉄金属鉱石、金属鉱物)では、「降雨パターンの調整」、「水質浄化」への依存度がとても高い
  • 直接操業の施工・アフターメンテナンスでは、「降雨パターンの調整」への依存度がとても高い
上流 直接操業
原料採取 輸送 原料加工 施工・アフターメンテナンス
石油 非鉄金属鉱石 金属鉱物 輸送 プラスチック製品 電気設備工事業
ケーブル
空調設備工事業
業務用パッケージ
エアコン
生態系サービス 供給機能 バイオマスの供給 VL VL
淡水供給 M H H VL L H H L L
動物性エネルギー M
調整機能 世界的な気候の調整 H H H M VL VL VL VL VL
降雨パターンの調整 VH VH M VL M M VH VH
地域の気候の調整 L L L L L L L L L
大気浄化 VL VL VL VL VL VL VL VL VL
土壌と土砂の保持 L M M L L L L M M
個体廃棄物浄化 L L L L L L
水質浄化 VL VH VH L M M M M M
水流調整 M H H L M H H M M
洪水緩和 H H H M M M M M M
暴風雨の緩和 L M M M M M M M M
騒音減衰 VL VL VL VL VL VL VL VL VL
その他の調整および維持
サービス
M M M VL L VL VL
その他調整・保守サービス L L L VL VL VL
VH

とても高い
(Very high)

H

高い
(High)

M

普通
(Medium)

L

低い
(Low)

VL

とても低い
(Very Low)

影響度

  • 上流の原料採取では、全般的に影響度が高い傾向にあり、特に石油と非鉄金属鉱石は、「淡水生態系利用」、「海洋生態系利用」、「水や土壌への有害汚染物質の排出」、「外乱(騒音、光など)」への影響度がとても高い
  • 上流の原料加工(プラスチック製品)では、「水や土壌への有害汚染物質の排出」への影響度がとても高い
  • 原料加工(銅、鉄)では、「水や土壌への有害汚染物質の排出」、「外乱(騒音・光など)」への影響度がとても高い
上流 直接操業
原料採取 輸送 原料加工 施工・アフターメンテナンス
石油 非鉄金属鉱石 金属鉱物 輸送 プラスチック製品 電気設備工事業
ケーブル
空調設備工事業
業務用パッケージ
エアコン
自然への影響 陸上生態系利用 L M M M L L L L L
淡水生態系利用 VH VH H L L
海洋生態系利用 VH VH H M M
その他の生物資源採取 H H
温室効果ガスの排出 H M H M M H H M M
温室効果ガス以外の大気汚染物質の排出 M H M L M H H L L
水や土壌への有害汚染物質の排出 VH VH H L VH VH VH M M
廃棄物 L H H VL M M M M M
外乱(騒音、光など) VH VH H M M VH VH M M
外来種の侵入 L L VL L L L
VH

とても高い
(Very high)

H

高い
(High)

M

普通
(Medium)

L

低い
(Low)

VL

とても低い
(Very Low)

リスク管理

  • 当社グループでは、リスク管理に関わる基本事項を定めた「リスク管理規程」に基づき、各リスクに対応する担当部門を明確にしています。毎年、各部門がリスクの振り返りを行い、次年度の施策を検討したうえで、「コンプライアンス委員会」へ報告するPDCAサイクルを確立しています。また、「コンプライアンス委員会」では、グループ全体のリスクを一元的に認識・評価する管理体制を構築し、適切なリスク管理を推進しています。
  • 当社グループにおけるリスクを適切なレベルに管理し持続的な成長を実現するため、「品質・環境推進委員会」、「中央安全衛生委員会」や「調達委員会」など関連する全社委員会においてリスクの認識・評価を行っています。また、「コンプライアンス委員会」や「サステナブル委員会」と連携しながら全社一丸となって取り組みを推進しています。

今後のTNFDの情報開示について

今後、自然環境・生物多様性への依存・影響度の評価結果を精査してまいります。
さらに当社グループの事業特性を踏まえた気候変動以外のリスクと機会も特定を進め、TNFDフレームワーク完全版の開示に向けて取り組んでまいります。

気候変動への対応

TNFD提言に基づく情報開示のうち、他の領域に先駆けて気候変動が当社グループの事業に及ぼす影響について「リスクと機会」、「指標と目標」の特定を行いました。

気候変動に関するリスクと機会

リスクには、CO2排出抑制に関する規制強化、ステークホルダーからの要請の高まりによる影響、自然災害や気温上昇による労働環境や生産性への影響を特定し、機会には、当社グループの中期経営計画で掲げた環境関連事業を軸に、カーボンニュートラル、デジタル、省力化や再生可能エネルギーの利用拡大を特定しています。

気候関連事象 当社事業への影響 影響
期間※1
影響
※2
対応策
リスク CO2排出抑制に関する規制強化 CO2排出量の削減要請が高まる中で、削減目標を達成できないことへの企業価値の低下 長期
  • 事業全体における脱炭素の推進
  • オフィスの省エネルギー推進
顧客からの環境に配慮した施工に対する要求の高度化
  • 省エネルギー性能の高い設備システムの提案強化
  • 環境を考慮したグリーン調達の推進
ステークホルダーの環境意識向上、情報開示要求強化 CO2排出量削減への取り組みや、情報開示への対応不十分による企業の信用低下 中期
  • 削減目標達成に向けた具体的な取り組みの実施
  • ステークホルダーへの適切な情報開示
自然災害の激甚化 台風や水害等の自然災害による当社事業所機能の低下 長期
  • 事業継続確保に向けてBCP対応を継続的に改善
社会インフラや顧客の建物被害に対する緊急対応の増加
  • 災害発生時に柔軟な対応が可能な体制の維持
平均気温の上昇 酷暑期の現場作業における熱中症発生リスクの増大 長期
  • 安全教育など暑熱順化対策徹底による熱中症未然防止
作業環境悪化による作業効率の低下
  • 作業環境の整備による作業効率の確保
機会 カーボン市場への参画 カーボンニュートラル、デジタル、省力化関連市場の拡大による工事需要の増加 中期
  • 脱炭素関連の事業拡大
建物の省エネ化 中期
  • データセンタ関連の施工技術強化、半導体事業案件拡大
再生可能エネルギーの利用拡大 長期
  • 自然エネルギー市場(太陽光・風力発電)への対応強化

※1 影響期間中期:2024年度〜2026年度、長期:2024年度〜2030年度

※2 影響度当社グループのリスク管理規程および中期経営計画に基づく

気候変動に関する指標と目標

当社グループは、2030年度までに実現を目指しているマテリアリティの一つに「温室効果ガスの削減」を掲げ、「事業全体における脱炭素の推進」を具体的に進めています。削減目標の達成を目指し、省エネルギー化に積極的に取り組んでまいります。

CO2排出量削減目標

目標年 対象範囲 削減率
2030年度 富士電機E&C
(国内関係会社含む)
Scope 1、2
2018年度比 30%

CO2排出量削減実績

Scope 1、2 単位:t-CO2

2022年度 2023年度
Scope 1※3 2,089 1,931
Scope 2※4 1,331 1,094
Scope 1 + Scope 2 3,420 3,025
削減率
(2018年度比)
6.6%減 17.4%減

※3CO2排出係数は「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル(ver.5.0)」(環境省・経済産業省)より引用

※4「電気事業低炭素社会協議会」2022年度確定値のCO2排出係数0.437kg-CO2/kWhを使用