富士電機製品コラム
製造業におけるデータ活用とは?

製造業におけるデータ活用とは?課題と事例を解説

製造業各社では、DX(デジタルトランスフォーメーション)やスマートファクトリー(スマート工場)の実現を目指すため、工場の生産設備などを対象にしたデータ収集が行われています。収集したデータに的確な分析を加えることで、データ活用が実現できます。しかし実際にはうまくデータを活用できず、ただデータを集めただけで終わってしまうケースも多く見受けられています。そのような事態に陥ることなく、データ活用による製造業DXを実現するためにも、本記事でご紹介する製造業のデータ活用のポイントをぜひ押さえていただき、皆さまの職場での取り組みにお役立てください。

製造業におけるデータ活用の背景・目的

まずは、製造業でデータ活用に注目が集まっている背景とその目的について、整理していきましょう。

背景

ドイツ政府が2011年に提唱したインダストリー4.0(第4次産業革命)の用語は世界的に知られていますが、日本も2017年にコネクティッドインダストリーズの概念を提唱しています。2018年には経済産業省が「DXレポート」を発表し、日本企業が抱えるレガシーシステムがDX推進を妨げる課題となっており、それを克服できない場合は2025年以降に最大12兆円/年の経済損失が生じる可能性があることを「2025年の崖」と指摘しました。また、製造業に向けては、「2020年版ものづくり白書」において、不確実性の高い時代を生き残るためのDXの有効性とその取り組みの遅れが指摘されるなど、データ活用を通じたDXの実現が強く求められている状況にあります。

目的

製造業においては、日々のものづくりのなかで改善活動が絶えず続けられてきました。しかし近年は上記のような背景に加えて、IoTやAIなどのデジタル技術が浸透したことを受け、スマートファクトリーが製造業の目指す姿として挙げられています。スマートファクトリーとはさまざまなシステムや設備がネットワークによって接続された工場のことです。誰でも簡単にデータ活用できる環境を整えることで、ものづくりの業務プロセスに変革を生み出し、グローバル市場における競争力の強化・優位性の確保を図ることが、その目的です。

データ活用のメリット

データ活用のメリット

製造業でデータ活用が求められている背景とその目的について解説して参りましたが、データ活用を進めることによって、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここからはデータ活用のメリットについて、詳しく確認していきましょう。

業務効率改善

製造業におけるデータ活用のメリットは、大きく分けて2点あります。1つ目のメリットは「業務効率改善」です。よりわかりやすく言い換えると、今まで工場内で収集・活用されていなかったデータを活かして、既存の業務プロセスの効率化・省力化を図ることで、製造コストが低減するということです。

具体例としては、生産設備から収集したデータの活用により、不良品が発生する要因を分析して対策を実行し、歩留まりを改善する、また異常兆候に合わせたタイミングでメンテナンスを行い、保全コストや保全員の業務負荷を低減させる取り組み(予知保全)が挙げられます。製造業においては、以前から歩留まり改善やコスト低減の活動は続けられてきましたが、定量的なデータによる指標に基づいて、より効果的な対策を実行できる点が従来との大きな違いです。

収益向上

2つ目のメリットは「収益向上」です。つまり、最新のデジタル技術をもとにしたデータ活用により、既存ビジネスの付加価値向上や新たなビジネスモデルの創出を達成して、全社的な収益力が向上するということです。

経済産業省が2022年に発行した「DXレポート2.2」においても、既存ビジネスの業務効率改善にとどまることなく、新規ビジネスの創出や既存ビジネスの付加価値向上へとデジタル投資の対象をシフトしていくことが、DXを成功させるためのポイントとされています。同レポートでは、現状のデジタル投資が既存業務の効率化中心に振り向けられているとの課題が指摘されており、今後はデジタル社会における企業競争力を強化するためにも、「収益向上」をより意識したデータ活用の進化が求められます。

データ活用の進め方

それでは、実際にデータを活用する場合、どのようなステップで進めていくのでしょうか。製造業のデータ活用の進め方について、順序立ててご紹介します。

解決すべき課題の設定と解決策の洗い出しを行う

まずは、解説すべき課題を設定した上で、その課題を解決できそうな手段の洗い出しを行います。ゴールがはっきりしないままだと、いつの間にかデータを活用すること自体が目的にすり替わってしまい、十分な成果を得ることが難しくなってしまうため、注意が必要です。

解決したい課題が複数ある場合は、解決できた場合の効果の大小と解決手段の難易度を評価軸として、優先的に取り組むテーマを決めていくとよいでしょう。ただ、初めてデータ活用に取り組む場合に「効果は大きいが難しい」テーマを選んでしまうと、プロジェクトが途中で頓挫してしまい、関係者のデータ活用に対するモチベーションが低下するという逆効果をもたらす可能性もあります。まずは「効果は小さくてもやさしい」テーマから着手して、データ活用の効果を実感してみることがおすすめです。

必要なデータを収集する

解決すべき課題と解決策の案がまとまったら、それに対応するデータを集める段階に移ります。データはすでに収集・蓄積されている場合もあるため、まずは活用可能なデータの有無を確認しましょう。使えそうなデータが存在せず、新たにデータ収集を行う場合は、データ収集用の機材を選定・手配・設置する必要があります。ただ、最初からいきなり大規模なシステムを導入することは、大きなリスクをともなうため、PoC(Proof of Concept:概念実証)と呼ばれる検証プロセスで導入効果が得られそうかを確かめながら、徐々に適用範囲を広げていくことが一般的です。

データ収集のポイントについては、以下の記事でもご紹介しているので、詳しく確認されたい方はぜひご覧ください。

的確なデータ分析を行う

収集したデータは的確なデータ分析を行うことで、初めて成果に結びつけることができます。とりあえずデータを収集・蓄積できただけで満足してしまうことを防ぐためには、前述の課題設定の段階が重要だといえます。データ分析の手法は収集したデータの性質や解決すべき課題内容によって異なります。製造業におけるデータ分析の一例としては、稼働率などの生産指標をリアルタイムにわかりやすく共有したい場合はダッシュボードを表示させたり、特定の設備の異常予兆をとらえたい場合は波形を詳細に解析する画面を用いたりします。データ活用の目的に応じた最適なアプリケーションを前もって用意しておくようにしましょう。

成果を生かしてさらなるステップアップを図る

データ活用による課題解決が実現できたら、その成果を生かして、さらなるステップアップを図りましょう。一時的なデータ活用のプロジェクトによって、一定の成果を得られても、その取り組みが一過性のもので終わってしまっては、真のデータ活用効果は期待できません。プロジェクトでの成功体験を踏まえて、データ活用を日常的な業務プロセスのなかに組み込んで定着させていきましょう。その過程で、より実施効果が大きく難しいテーマにチャレンジしたり、成果を社内の他部門に水平展開したりすることで、全社的な業務効率改善・収益向上につながっていきます。

製造業におけるデータ活用の事例

最後に、自社工場及びお客様工場におけるデータ活用の事例をご紹介いたします。

富士電機・山梨工場でのデータ活用事例

自社工場のデータ活用事例として、山梨工場における省エネ達成の事例があります。パワー半導体のチップを生産している山梨工場では、生産工程において多くのエネルギーが必要となることから、特に省エネ化が求められているという課題がありました。

山梨工場でのデータ活用事例

そこで、エネルギー使用量の「見える化」を足掛かりとして、エネルギー使用量の削減を目指しました。センサで電力や温度などのデータを収集し、解析ソフトウェアを使用しながら、蓄積された実績データを多角的に分析することで、「見える化」を起点として「分かる化」に発展し、さらなるエネルギーのムリ、ムダ、ムラを発見できました。また、AIを活用した需要予測により、エネルギーコストを最小限に抑える運転パターンの計画を立案するなど、「最適化」のフェースまでステップアップすることができました。このような取り組みにより、生産量の増加にも関わらず、5年間で34%の省エネを達成できました。エネルギー自給率100%の達成の実績も評価され、省エネ大賞の経済産業大臣賞を受賞しました。

お客様工場でのデータ活用貢献事例(OnePackEdge)

お客様工場におけるデータ活用に貢献した実績の一例として、当社製品のOnePackEdgeを活用した組立加工分野のお客様向けのデータ収集・データ活用システムの構築があります。生産ラインを構成する多種多様な生産設備から生産サイクルと同期した一元的なデータ収集を行い、それぞれのデータを統合データベースに整理して集約するシステム構成とすることで、お客様社内の各部門で必要とされていたデータの活用が容易になりました。製品品質の管理・生産設備の稼働監視・加工不良発生要因の分析・加工機の工具管理の円滑化など、さまざまな用途にご活用いただいております。

ワンパックエッジを活用したデータ収集・データ活用イメージ図

本製品は国内の大手自動車メーカである日産自動車・栃木工場のエンジン部品生産ラインにおいて、予知保全・生産性向上に貢献しています。お客様が抱えておられた様々な課題や導入後の改善効果をお伺いしたインタビュー動画・記事を公開しておりますので、下記リンクからぜひご覧ください。

納入先:日産自動車株式会社 栃木工場様
対象:エンジン部品生産ライン

まとめ

ここまで、製造業でデータ活用に取り組む上で役立つさまざまな情報をお伝えして参りましたが、いかがでしたでしょうか。データ活用によるメリットや進め方のポイントについて、理解を深めていただけたのではないでしょうか。

富士電機では、自社工場におけるデータ活用を推進していくとともに、製造業のお客様のデータ活用にお役立ていただける製品を多数ラインアップしています。お客様の目的に応じて、最適な機器やアプリケーションをワンストップでご提供することが可能です。データ活用を通じた課題解決をご検討されている方は、以下のリンクから製品Webページをご覧いただき、ぜひ富士電機にお問い合わせください。

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