富士電機製品コラム
環境試験室/設備とは?

環境試験室/設備とは?

環境試験室/設備の概要

環境試験室/設備は、自動車をはじめ機器/機械の開発に欠かす事の出来ないもの。完成車はもちろん、基幹パーツであるエンジン・ミッションの他、様々な部品や電子デバイスに至るまで、燃費・性能・耐久性などの試験を実施するための設備です。

環境試験は、大小さまざまな機械・製品の開発現場で行われています。そのため試験を実施する設備も、求められる仕様や規模によって、実験室に収まる小規模なものから、建屋や専用の電力源を必要とするものまで規模/形態もいろいろです。

最近では信頼性に関わる技術が、国際的な品質保証システムの検証・妥当性確認の手段となっており、それとともに環境試験の重要性も増しています。また環境・安全などの国際的な社会的システムへの適合も同時に進められるようになりました。

ここでは、環境試験が必要な背景・種類だけでなく、環境試験室/設備に求められる制御やコストに至るまでをわかりやすく解説していきます。

環境試験が必要な背景

工業立国日本のお家芸ともいえるのがものづくり。この、ものづくりにおいて、もっとも大事な要素は耐久性・信頼性を担保する「品質」です。高い品質こそが、日本の工業製品を世界一流に押し上げる大きな要因の一つであり、それは今後も変わることはないと思われます。

このような背景もあって、製品に対する高い信頼性と耐久性を検証するための、環境試験の必要性も高まっています。それと同時に環境試験を可能にする、環境試験室/設備への需要も増えているのです。

環境試験が必要となる具体的なシーン

1.環境条件を一定に保つことで供試体の変化要因をなくして再現性を確保する場合

路面と接点を持つタイヤは、単に駆動力を伝えるだけでなく、制動(ブレーキ)・摩擦(グリップ)・緩衝(乗り心地)といった自動車に欠かせない要素を担う部品。タイヤの主な素材の一つにゴムがあげられますが、この素材は温度の変化を受けやすい特徴をもっています。ゴムのように温度の変化に敏感な製品試験では、温度を厳格に管理しつつ、様々な条件下で性能を発揮できるか否かテストする必要があります。

製品の一例

タイヤ・自動車/建機/船舶などを構成する部品類・航空産業系・建築用のコンクリートやモルタル・建物の外壁や屋根用部材など

2.環境の条件自体が試験条件の場合

極寒の極点付近・灼熱の砂漠・標高の高い地域など、温度や気圧の面で過酷な環境の中、日常的に人や荷物を載せて走る自動車やバイク。日中は50度を超す高温や凍てつく吹雪の中でも、確実な動作を求められる建機や鉱山作業に従事する機材など。このような製品の開発においては、使用環境を想定し極寒地の温度や砂漠地帯の日照を忠実に再現した試験環境が求められます。

製品の一例

自動車・トラック・バイク・船舶・トラクター・農作業機器・ブルドーザー・パワーショベル・掘削機など。

3.人為的に過酷な条件をつくり出す場合

低圧や高圧にさらされる飛行機や船舶の構造部分。紫外線の影響を受けやすい紙製品や塗料。外壁やガラスなどの建築部材。高い電圧を受けるモーターや半導体基板など。これらの製品の開発では、あえて製品を過酷な状況に置いて劣化を促進することで、短期間で劣化の度合いを確認する「加速劣化試験」が行われます。

製品の一例

自動車・飛行機・船舶・建機・インク/塗料・紙製品・電子基板・モーターを含む電機製品・各種建材など

環境試験室/設備に求められるものとは?

このように環境試験は、あらゆる製品の品質と耐久性の向上に寄与していますが、環境試験の実施には大きなコストが発生するのも事実です。したがって環境試験設備の導入においては、必要となる仕様を満たした上でイニシャルコストやランニングコストにも着目。高いコスト意識と、費用を抑えるための提案力も求められています。

環境試験室/設備の製造に携わる富士電機では、特に以下の3点を重視してユーザーのご要望にお応えしています。

「環境の再現性」:求められる環境の再現をいかに忠実に再現できるか

環境試験において最も重要な要素は、求められた要件条件をどれぐらい忠実に再現できるか?という再現性にほかなりません。一言で再現性といっても、求められる仕様は様々。低温や高温・湿度・風速・日射など、ケースや規模によって単一の条件だけでなく、複合的な環境の再現を求められることもあります。

「環境の安定性」:指定された環境をどれだけ安定させられるか

耐久・劣化といった時間に関わるテストにおいて、環境の安定性は外せない要素です。どれだけ高い温度や低い温度をつくりだしたとしても、その状態を安定して維持できなければ意味がありません。

温度の例でいうと精度±5℃もあれば±1℃の場合もあり、要求精度のシビアさは実施する試験や製品によって異なります。

要求がシビアな場合、試験前は環境が揃っていたとしても、供試体からの環境への影響によっては、条件を外れていくことも珍しくありません。

例えばタイヤであれば、環境試験を行う中で摩擦その他の要因で供試体が発熱する場合があります。供試体の発熱が進めば、周囲温度もそれにともない条件温度から外れていってしまいます。

そこで富士電機では、供試体から受ける環境変化の負荷に対して、試験室や設備の性能もそれに追従するシステムを構築しています。

「環境試験室/設備に対するコスト」:導入/ランニングコストの低コスト化を実現

環境試験室/設備は製品開発に携わることの多い機器。一般的にこのような試験設備は、流通数が少なく、仕様要求にあわせて製作するため、仕様や設備の規模によって価格も様々です。

一例をあげると・・・

  • 恒温槽のような単体の試験設備においては、温度範囲や精度が限定的な仕様のもので、数十万円~数百万円。

  • 温度範囲が広範囲かつ高精度で供試体の負荷に追従する高性能仕様のものでは、数千万円以上となっています。

(注)

単体の試験設備の枠を超えて、試験室や試験棟の建屋も含めて構築する場合は、億単位での費用がかかることもあります。

設備導入/ランニングコストの具体的な削減方法

いかに高精度・高機能の設備であっても、イニシャルコストやランニングコストが高価であればユーザーは導入するのが難しくなります。
また当然のことながら、試験設備の導入・運用費用も各製品価格に反映されます。それもあって、導入におけるコストは絶対無視できない要素だといえるでしょう。
このような背景から、富士電機では、ユーザーが実施する試験で必要な性能を考慮した上で、最適なイニシャルコストでの提案を実施しています。
具体的には、実際の運用状況と照らして過剰スペックとならないよう最適な設備の能力を設定し、設備の導入費用を削減します。ランニングコストにおいても、省エネ化やメンテナンス効率向上も考慮して、トータルでコストダウンが可能になるご提案を行っています。

環境試験室/設備の制御性について

環境試験室/設備は、温度・湿度・風速・日射など過酷な環境を再現する設備。供試体の負荷への追従を想定する上でも、設備の「制御性」は大いに注視しなければならない要素となります。

一方、多くの場合試験室/設備は、メーカーの研究所や工場の一角に設置されることになります。そのため設備導入にあたって、設備単体の制御性だけでなく、設置される施設の中央監視システムとの連携が必要になります。そのほか、遠隔操作・状態監視のために、データ連携を図る必要もあります。

環境試験室/設備の製造メーカーに求められる制御対応とは

環境試験室/設備を製造するメーカーは、単に機器の製造だけでなく、このような施設内の連携にも対応できるノウハウと実績が求められます。

具体的には・・・

  • 試験環境を緻密に再現するため、設備同士のインターフェイスを確立する

  • ダイナモの車速指令値を受け取り、送風機の出力を設定風速となるよう制御する など。

環境試験室/設備に求められるパラメータ制御の重要性について

ユーザー視点でみると、設備のパラメータ制御に関するノウハウを持つメーカーか否か?という点は気になるところではないでしょうか?

富士電機は制御ソフトのプラットフォーム構築に強みあり

富士電機では設備導入にあたり、一般的なセンサー値からのフィードバック制御に対応するのはもちろん、自社で標準化された制御ソフトのプラットフォームを構築しています。
ハード・ソフト両面を自社で手掛けることができる点が大きな強みです。あらゆる機器・機材・設備を一貫対応する重電メーカーならではのスケールメリットを活かし、ユーザーの仕様や価格の要求に柔軟に対応することも可能です。

まとめ

ここまで環境試験の概要と、試験設備に求められる制御性やコスト感についてもご紹介してきました。
環境試験室/設備は、製品の品質や耐久性に重要な役割を持つ設備です。導入をお考えなのであれば、単に仕様要求に応えることができるか否か?という点だけでは不十分。

パラメータ制御への精通度やハード・ソフト両面に対応できるか?導入やランニングにおいてもトータルでコストダウンさせる提案力をもっているか?という視点も必要です。

富士電機では、『駆動試験機+環境試験室+インフラ・ユーティリティ設備関連も含めた丸ごとの提案』を得意とし、主に自動車メーカーさまからのご要望に応えて参りました。

環境試験室/設備に関する事柄は、是非、富士電機にご相談ください。

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