富士電機株式会社

富士電機製品コラム

日本の自動車産業を支える陰の立役者、自動車試験装置(環境試験室 編)

日本の基幹産業として重要な役割を担っている自動車メーカー。完成車や自動車部品の研究・開発・設計、品質管理を陰ながら支えてきたのが「自動車試験装置」です。縁の下の力持ち的な存在であるため、あまり知られていませんが、様々な種類の試験装置が現場で活躍しています。

近年、自動車が従来のガソリンエンジン車から、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、EV(Electric Vehicle)へと変化しつつあります。さらに、自動運転車の段階的な実用化も始まっており、自動車メーカーには、新しい技術が求められています。そうなると、ますます裏方の試験装置の重要性が高まってきます。

これらの試験装置を大別すると、「駆動系」と「環境系」に分類されます。ここからは、主に環境試験室について説明します。駆動系の試験については、こちらをご覧ください。

環境試験室には建屋や空調などのトータルな設計ナレッジとノウハウが必要

環境試験を実施する際には、温度・湿度・風速など、一定の環境条件を設定できる設備が必要です。どの自動車メーカーにも「試験ベンチ」と呼ばれる台上試験設備が数多く用意されていますが、それらを取り巻く環境試験室も重要になるわけです。

というのも、駆動系の自動車試験を実施する際には、環境条件を一定に整えておかなければ、データの再現性や整合性が担保できなくなるからです。屋外の天候などに左右されない環境試験室で、様々な環境を再現することで、研究・開発に関わる試験を効率的かつコストを抑えて実現できるのです。

とはいえ、環境試験室を自社に構築するのは簡単なことではありません。建屋や空調などを含めたトータルな設計のナレッジとノウハウが必要だからです。例えば、自動車試験ではガソリンやオイルを使うため、建屋ひとつ取っても、構造的に安全であり、消防法に則った設備が求められます。

環境試験室には、ダイナモメータなどの駆動試験システムだけでなく、試験の再現性を保つための精密な制御空調技術、ムダのない電気・熱エネルギーの省エネ技術、各システムの稼働状況を一元的に集中管理・遠隔監視できる技術なども、必要不可欠な存在です。

環境試験室に求められる要件と典型的な試験施設の構成とは?

車両やエンジンのテストを行う際には、実際に屋外を想定して、あらゆる環境での試験が求められます。環境試験室に求められる具体的な要件としては、全天候対応型であればどんな環境も模擬でき理想ですが、非常にコストが高くなります。よって車両やエンジンの試験要件(目的)に応じた環境を作り出すことが重要です。

日本の自動車は世界中に輸出されています。灼熱の地域もあれば、極寒の地域、1日の寒暖差が激しい地域、湿度の高い地域もあります。場合によっては、山間部のように気圧が低い地域も想定しなければなりません。そこで、温度・湿度・気圧、赤外線や路面の輻射、降雨、降雪、風などの各種条件を、試験要件に応じて再現できるような環境試験室が必要です。

環境試験室の典型的な構成を、以下の図で解説します。駆動試験装置(シャーシダイナモメータ/エンジンダイナモメータなど)、空調設備、冷凍器、熱交換器、大型送風機、車風速ファン、エンジン排気設備、風洞設備、温調設備などの集中制御システムがあります。

環境試験設備風洞フローの一例

このような試験室内で、室内の温度を下げてエンジンを始動させたり(コールドスタート)、温度を上げてエンジンを始動させたり(ホットスタート)、一定の負荷のもとで長時間にわたる耐久試験を実施するわけです。最近では、EV車用の部品試験で温度を60℃以上にして試験をすることもあり、特殊な耐熱性の環境槽が使用されます。

さらに、耐久試験より難しいのが燃費試験です。従来、日本では「JC08モード」という基準で燃費を計測していましたが、2018年10月から「WLTCモード」というグローバル基準の燃費計測になり、市街地/郊外/高速道路の各モードの燃費がカタログに表記されています。特に、高負荷で急にブレーキがかかる高速道路モードの燃費試験において室内を恒温に維持することは、非常に難易度が高くなります。

まだある!高地を想定した低圧試験など、難易度の高い環境試験

そのほかにも、環境試験室の中では様々な試験が実施されます。完成車の空力性能については、定速、あるいは加減速で走行する際の空力騒音(風切り音)や空気抵抗などについて測定します。その場合には、時速300kmに相当する風速に対応できるような大型風洞が設置されます。また、騒音を正確に計測するために、風洞より小型で音が反響しない無響音室を採用する場合もあります。

難易度の高い試験に、蒸発(エバポレーション)試験もあります。この試験は、排ガスではなく、ガソリン自体が蒸発して気体となった蒸発ガスを対象にするものです。走行時だけでなく、駐車時や給油時に排出される蒸発ガスは公害の原因になるため、排出規制が設けられています。このような大気汚染成分を測定するには、特殊なシールドルームが必要です。

また、高地を想定した低圧環境での各種性能や排ガスの評価も、難易度が非常に高い試験の1つです。試験設備の中には、高度4000m(630hPa)もの低圧の条件から、平地での気圧条件をシミュレートできる設備もあります。

環境試験室イメージ

最近の自動車は、電子部品が多用されており、まさにエレクトロニクスの塊です。今後もEVやHEV、自動運転車などの登場によって、ますます電子化が進むでしょう。そうなると電子機器の誤動作を防止するために、自動車から発生する電波ノイズを計測しておかなければなりません。ノイズ対策や電波遮へいに関するノウハウも求められます。

このように自動車の環境試験を行う場合は、かなり設備も大掛かりになります。もし、自社に設備を作る場合は、総合的な技術力のあるメーカーに依頼することになるでしょう。あるいは、一般財団法人 日本自動車研究所(JARI)といった外部試験機関などで、試験室ごとレンタルする方法も選択肢の1つ。ただし、その場合は必ずしも試験したい時に、自社の予定を組めるわけではないことを念頭に置いたほうがよいでしょう。

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