富士電機株式会社

ソリューション・事例

環境に優しい社会の実現に向けて3社共同プロジェクトで、VPP対応のEVリユース蓄電池システムを導入
~トータルシステムで電力の安定供給に貢献~

2050年のカーボンニュートラルに向け、いま世界中で地球環境への対策が進められている。たとえば欧州や米国を中心に、電気自動車(EV)の導入検討が急ピッチで始まっていることはご存知の通りだろう。日本でも、今後EVが普及していくと見られているが、そこで大きな課題になるのがEVで使用されている蓄電池だ。通常、車載用蓄電池は70%程度で寿命前に交換されることが多い。これら中古蓄電池を再利用して産業用に活用すれば、地球環境に配慮したリユースモデルを構築できるはずだ。2013年から住友商事様と当社はEVリユースの蓄電池システムの共同開発を進めてきた。2017年には日本ベネックス様と3社共同で新たなEVリユース蓄電池システムを開発した。

新型EVリユース蓄電池システムを工場の効率的なエネルギー利用実現のための調整力に!
さらに環境と共生を実現する「みらいの工場」プロジェクト開始

日本ベネックス様は、精密板金加工技術を基盤に産業・電気機器製造事業を手掛け、2012年に再生可能エネルギー発電事業をはじめとする環境エネルギー事業に参入した。

住友商事様は、日産自動車様との合弁事業であるフォーアールエナジー様と共同で、EVで使い終わった蓄電池を再利用・再製品化し、EVの普及促進に貢献する仕組みを作ってきた。今後は、開発した本システムをスケールアップし、大規模な蓄電池事業の実現を目指していく。

日本ベネックス様は、本システムを導入し、「バーチャルパワープラント構築実証事業」に参画した。バーチャルパワープラント(VPP ; Virtual Power Plant)は、分散する蓄電池や需要設備などのエネルギーリソースを、IoTを駆使して集約(アグリゲーション)し、統合管理することで、あたかも1つの大きな発電所のように機能させる仮想発電所だ。[■富士電機製品コラム:仮想発電所「VPP」を徹底解説!ピーク電力を上手く制御するには?

2018年に日本ベネックス様は、新型EVリユース蓄電池システムを活用し、太陽光発電設備やEV10台と組み合わせて、エネルギーの効率利用と環境との共生を実現する「スマート工場」の確立を目標とする「みらいの工場」プロジェクトを住友商事様と共同で始動した。自社に「スマート工場」のモデルを構築することで環境エネルギー事業のショーケースとする考えである。

新型EVリユース蓄電池システム3つの特長

特徴1. 安全性と実装密度に優れた新型コンテナで400kWhの蓄電容量を実現

新型EVリユース蓄電池システムの特徴としては、日本ベネックス様の高密度積載技術によって従来システムの2倍(1ユニット24基)のEVリユース蓄電池を20フィートのサイズのコンテナに格納し、実効蓄電池容量を約400kWhにパワーアップしている。


従来型蓄電池システムと新型システムの比較。実効電池池容量を2倍の約400kWhとし、安全性と実装密度に優れた蓄電池コンテナを開発。
複数ユニットを並べることで大容量化も可能。



特徴2.新型蓄電池システムは、VPP対応

「もう1つの大きな特長は、富士電機が長年培ってきた蓄電システム設計や制御技術のノウハウに加えてVPPへ対応したことです」と当社技術部の豊沢氏は語る。

「2021年4月より需給調整市場が開設され、VPP技術でアグリゲータを介して対価が得られるようになりました。現状電力消費が多くなる夏季冬季しか蓄電池を使っていない需要家様がいらっしゃいます。そこでVPPをマルチユースで設備利用率を上げれば、追加収入を見込めるようになるでしょう。また太陽光発電を併設している場合、電力使用量が少ない非操業日にせっかくの太陽光発電を余らせてしまうケースもありますが、蓄電池の活用により再エネの有効利用が可能となります。」と、当社技術部の寺田氏は付け加える。


特徴3.BCPの一助にもなるバックアップ電源としての役割

また本システムは、停電時のバックアップ電源としても役立つ。
「万が一の停電対策として、急場をしのげる蓄電池システムがあれば安心です。将来、太陽光発電などと連携させることで、さらに電力供給を継続させることも可能です」(豊沢氏)。

富士電機のトータルインテグレーション力

富士電機では、今回のプロジェクトにあたり、設計部門や工場部門や試験部門など、社内の多くの関係者が協力して開発を進めたという。

今回のシステムは、ユーザ側からみれば、一見すると普通のEVリユース蓄電池システムに見えるだろう。しかし技術面で多くの工夫が凝らされている。たとえば、PCS(パワーコンディショナ)とセットになった高機能コントローラによって、EMS(エネルギーマネジメントシステム)の代役ができるという。

使用電力の大きい時間帯の電力を減らすピークカット対応はもちろんのこと、電力を使用していないときは、VPPのアグリゲータからの指令による充放電が可能だ。

「VPPの標準プロトコル・OpenADRに対応しており、カスタマイズによって、そのほかの国内VPP仕様など、お客様のご要望に合わせた蓄電池システムを提供できます」(豊沢氏)。

もちろん蓄電池システムの安定稼働も重要だ。EVリユース蓄電池は状態の良いものが選ばれるが、多少のバラつきもあるため、運用をしていくなかで、なかには寿命に達する蓄電池もでてくる。システムに搭載された蓄電池の状態を監視し、異常となった蓄電池を切り離し、運用を継続することが可能だ。


コントローラはタッチパネル付きで、現場でのシステムの状態確認や操作・故障履歴、各種設定・制御が行えるほか、遠隔操作にも対応する。


「我々は、蓄電池システムと共にVPPの上位システムも開発しており、電力予測精度の向上や、電力取引機能などで、さらなる高機能化を目指しています。来年度から再生可能エネルギー関連の制度もFITから、売電価格にプレミアム(補助額)を上乗せするFIP制度に変わっていきます。それに合わせて上位システムの機能を向上し、トータルシステムをご提案していきます」(寺田氏)。

これからEV利用率が大幅に伸びてくることは、政府や世界のトレンドからも間違いないだろう。そうなるとEVリユース市場の活性化のみならず、新品EV蓄電池も手ごろな価格になってくるはずだ。富士電機は、今後も顧客ニーズをキャッチアップし、蓄電池システムの高機能化によって、地球環境へ配慮しながら社会貢献を果たしていく意向だ。

例えばこんなSDGs

産業と技術革新の基盤をつくろう

目標9

強靭なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な
産業化の促進およびイノベーションの推進を図る

再生可能エネルギーの導入拡大や災害時のレジリエンス強化に向けて、電力資源の分散化が進んでいますが、VPPは分散された電力資源の需給調整に欠かせない技術です。当社は長年培ってきた蓄電システム設計や制御技術のノウハウにより、VPP対応の蓄電池制御システムと上位システムも含めたトータルシステムで電力の安定供給に貢献します。