
電子行政ソリューション コラム
デジタルマーケットプレイス(DMP)とは? 自治体の調達を劇的に変える新たな仕組みを徹底解説
「自治体DX」が大きなテーマとなるなか、推進の鍵を握るのがクラウドサービス(SaaS)の活用です。自治体ごとに個別で開発するのではなく、サービスとして提供されるSaaSを活用することで、導入期間やコストを抑えることが可能になると期待されており、デジタル庁も活用を推奨しています。
そうした取り組みの一環として注目されているのが、デジタル庁が公開した「デジタルマーケットプレイス(DMP)」です。自治体におけるシステムやサービスの調達を大きく変えるDMPについて、活用法やメリットを解説します。
デジタルマーケットプレイス(DMP)とは?
デジタルマーケットプレイス(DMP)は、簡単にいうと自治体向けのクラウドサービス(SaaS)を扱うECサイトのような存在です。ベンダが登録したサービスを、行政機関や自治体が検索・比較できるようになり、最適なサービスを効率的に選定・調達できる仕組みになります。その狙いは、調達プロセスの迅速化とあわせて、ベンダ参入のハードルを下げることによる調達先の多様化です。これまでの調達方法とは大きく異なる新たなアプローチとして注目を集めています。
DMPを活用した調達プロセス
DMPは、実際の調達だけではなく、前段階にあたる情報収集や企画、予算要求を含め、様々なシーンで活用できます。具体的に、どのように調達プロセスが変わるのか、詳しく解説します。
<企画検討フェーズ>情報収集・調査・比較を効率的に
施策立案は、自分たちの課題や要件に対して、どのようなサービスがあるのか、を調査するところから始まります。これまでは、インターネット検索などで1件ずつ調べ、必要に応じて問い合わせや資料請求をおこなうなど、情報を収集するだけでもかなりの手間がかかっていました。
DMPでは、登録されたサービスから要件に合致するものを簡単に検索でき、機能の詳細や付随するサービス、ライセンス数など、比較検討に必要な情報をまとめて確認できます。標準価格が掲載されているほか、ベンダへの見積もり依頼も可能で、費用感もスムーズに把握できます。
また、DMPでは、仕様や要件を整理するための「調達仕様チェックシート」を提供しています。サービスの調達で留意すべきポイントを踏まえて構成され、チェックシートの項目がDMPの検索項目と対応しているため、要件の確定からサービスの検索・選定まで効率的に進められます。さらに、この調達仕様チェックシートは、従来の調達仕様書と同等の役割を果たすとされており、入札・随意契約の根拠として活用できます。
<製品選定フェーズ>選定経緯をまとめた資料も簡単に作成
製品選定は、DMPの検索結果をベースに、必要に応じてベンダに問い合わせや個別ヒアリングを実施し、詳細な仕様などを確認しながら進めます。
最終的に調達するサービスが決まった際には、DMPにて選定の経緯などを記録した「ソフトウェア比較表」「サービス比較表」を出力できます。ここには、検索時の条件や選定結果がまとめられているほか、複数候補から選定した場合には選定理由を記載することも可能です。この資料も調達業務の根拠資料として活用でき、資料作成の負担が大幅に軽減されます。
<契約フェーズ>
サービスを選定したら、ベンダ(販売する事業者)と個別に契約をおこないます。各自治体のルールに基づいての契約となりますが、競争入札をおこなわず、随意契約で進めることも可能です。

※デジタルマーケットプレイス 行政向けご利用ガイド「標準ガイドブック(地方公共団体向け)」をもとに作成
DMPを活用する3つのメリット
<メリット 1>調達プロセスを効率化できる
まずなによりも、調達プロセスの効率化が挙げられます。調達対象の調査や予算感の把握についても、まとめて情報を確認・比較検討できる点は大きなメリットです。手間をかけずに情報を収集し、目的にあったサービスを迅速に調達できるようになります。さらに、調達の根拠として利用可能な資料を作成できる仕組みとテンプレートがそろっているため、資料作成などの業務効率化にもつながります。
<メリット 2>競争入札を経ず、随意契約が可能に
自治体の調達では、原則として競争入札が求められますが、DMPでは公平性を確保した検索・選定が可能な「調達モード」が用意されており、これを活用することで、DMPによる調達プロセスを経て、随意契約として選定を進めることが可能になります。競争入札は、どうしても担当者の負担が大きくなるため、競争入札手続きが不要となることで、この負担が解消され、また、SaaS調達自体のハードルも低くなると言えるでしょう。
また、随意契約には、価格など条件があり、各自治体のルールに準拠して進めることになるため、その点は事前に確認が必要です。
<メリット 3>交付金の採択時の選定において加点措置の対象となる
地方公共団体による地方創生の取り組みを後押しする「新しい地方経済・生活環境創生交付金」では、デジタル技術活用を支援する「デジタル実装型」が設けられています。このタイプでは、DMPの調達モードを活用してSaaSを調達した場合に、一定の加点措置が適用されます。
DMPで実現する、これからの自治体のDX
自治体のDXの推進にあたって、システムの“標準化”が重要とされています。ベンダが提供するパッケージ製品やサービスは、様々な自治体の業務を踏まえ、各社が考えるベストプラクティスを反映したものです。個別にシステム開発をおこなうよりも、これらの製品・サービスをそのまま活用し、業務自体を標準にあわせることで、効率化につながると考えられているのです。この流れもあり、ベンダの標準機能をクラウドサービスとして提供するSaaS製品は、自治体のDXにおいても大きく注目されており、その調達を後押しするものとしてDMPがリリースされました。
自治体の業務のシステム化・デジタル化は、これまで財務関連や人事給与といった優先度の高い分野を中心に進められてきました。今後、自治体DXをさらに加速させるには、様々なシステムの中核となる「公文書管理」「決裁業務」のシステム化が重要なテーマとなるでしょう。
DMPで探す文書管理システムの最適解
文書管理システムも、もちろんDMPで調達できます。サービスを選定する際に確認したいのは、「必要な機能がそろっていること」です。あたり前のように思えますが、各種機能について、機能の有無だけではなく、自治体の業務に適した状態で利用できるかどうか、までを確認することが重要です。特に、民間企業向けサービスをベースとしたものでは、業務フローが大きく異なり、自治体特有の業務に対応できない、または対応できるが、使いづらい(手間が増えてしまう)といったケースも見られます。また、自治体における文書管理では、電子決裁と密接に関係するため、両者の機能が一体型で提供され、スムーズに業務が進められるか、なども確認したいポイントです。
富士電機株式会社が提供する文書管理システムのSaaS版は、20年間で100団体以上に導入した実績のある製品をベースに、SaaSとして提供しています。公文書管理法に準拠し、文書の収受・起案から保管、廃棄まで必要な機能を網羅。電子決裁機能も標準で提供し、自治体の業務にフィットするサービスを実現しました。
今後、自治体のDXを加速するためにも、基盤となる文書管理のシステム化は、早期に取り組む課題と言えるでしょう。まずは、DMPで検索・情報収集から始めてはいかがでしょうか。