富士時報
第74巻第12号(2001年)

電力流通ソリューション特集

電力流通システム分野におけるソリューションの現状と展望

松村 基史 ・ 大橋 一弘 ・ 小林 直人

電力市場での自由化の進展,環境問題のクローズアップなどに伴い,電力流通システム分野のニーズは多様化している。これに対応する富士電機の技術シーズとソリューション,および今後の取組みを紹介する。系統・配電制御分野へのオープン分散技術適用による経済性・柔軟性の追求,保護リレーの高信頼度ハードウェア技術,パワーエレクトロニクス技術,系統解析技術などこれまで培ってきた技術シーズを基に,今後求められる高度情報化,高付加価値サービス,フレキシブル電力品質,電力流通システム設備のライフサイクルコスト低減などのニーズに対応していく。

多様化する電力品質問題への対応技術

小松木 和成

電力系統に,電力会社以外の発電事業者による発電機の設置や新エネルギーなどの分散型電源の普及・拡大が進展している。これに伴い,電力品質への阻害要素が潜在化してきている。これらに対し,需要家側自体での電力品質維持・向上に向けた対応機器の設置が必要となる。本稿では,需要家側として対応すべき事項とその概要を示すとともに,瞬時電圧低下や停電,無効電力補償,高調波電流補償など,電力品質維持・向上に向けた対応機器とその動作概要ならびに需要家側での差別化電源構成例を紹介する。

分散型電源連系系統の解析技術

中西 要祐 ・ 小島 武彦 ・ 仁井 真介

エネルギー消費や環境問題への優位性を持つ分散型電源が,今後,電力系統に多数連系されることが予想される。これは,系統においては,小規模の不特定多数の発電設備が連系され,給電指令外の潮流を生じることになる。また,系統に発生する事故に対する従来の発電機とこれらの分散型電源との協調が必要となってくる。このような背景から,分散型電源を考慮したより一層,効率のよい電力系統を構築するために分散型電源連系時の課題を整理するとともに,これらの解析に必要な系統解析技術について述べる。

電力会社の「お客さまサービス」に対する富士電機の取組み

桑山 仁平 ・ 備家 慎一郎

規制緩和を背景に,電力各社は需要家サービスの強化,事業化を推進している。富士電機では,こうしたサービス事業展開の動向を市場とし,省エネルギーソリューション,電力品質ソリューション,および付加価値サービスを柱とした「需要家ソリューション事業」のビジネスモデル策定を進めてきた。需要家ソリューション事業は,富士電機が保有する製品群に,最新の情報技術,解析技術,最適化技術などを融合させ,電力会社の保有するインフラストラクチャーほかのアドバンテージを生かすビジネス形態を特長としている。

電力系統分野への最適化技術の適用
新しい最適化技術「メタヒューリスティクス」の適用

高山 信一 ・ 林 巨己 ・ 福山 良和

電力系統分野では,現場のルールなどを利用したエキスパートシステム(ES)やファジィ理論(FZ)の適用が多く検討されてきている。しかし,ESやFZは,検討外の状況で適切な解を生成する保証がなかった。これに対し,現場のルールなどを容易に考慮でき,どのような場合にも,最適あるいは適切な解を生成できるメタヒューリスティクス(MH)が脚光をあびている。本稿では,電力系統分野におけるMH 適用に関する富士電機の取組みについて解説する。

電力系統運用システムにおける支援機能の高度化

上原 徳平 ・ 宮村 尚孝 ・ 高橋 省

本稿では,富士電機での電力系統運用支援システムの開発に関する取組みと成果を紹介した。また,系統解析技術,主に最適潮流計算(OPF)技術をベースとした高度な系統運用支援機能を提案した。さらに,IPネットワーク技術とオブジェクト指向のソフトウェア開発技術を用いて,新しい支援システムの構築動向も提示した。紹介した高度な系統運用支援機能により,柔軟かつ効率的な系統運用を支援することができる。

電力広域WebシステムへのLinux とオープン技術の適用

鹿川 泰史 ・ 林 伸治 ・ 細田 浩

電力広域Webシステムは,監視制御系システムから伝送される事故情報,系統情報などをデータベースに取り込み,それをイントラネット上で公開することを目的としたシステムである。公開用のWeb サーバは,広域に分散し,相互に連携し情報を配信する必要があるため,中心となるUNIXサーバと,多数のPCサーバの混在による統合的なWebインテグレーションが求められた。本システムの構築にあたり,サーバOSにLinuxを選択した理由とそれを支えるためのオープン技術について紹介する。

新型遠方監視制御装置「STC‐3500シリーズ」

宮本 文夫 ・ 和田 博之 ・ 鈴木 立夫

電力分野の遠方監視制御装置は,情報伝送量の大容量化,伝送速度の高速化が進み,ますます高性能なハードウェアが求められている。その一方で,小型化,低消費電力化の要望も大きい。本稿では,このような市場の要望にこたえるべく開発したSTC‐3500シリーズの新規開発コンポーネントの特徴と製品適用事例を紹介する。

変電所システムの合理化に向けた最新技術

松本 俊郎 ・ 吉田 高 ・ 戸井 雅則

変電所システムの合理化について制御,保護,監視システムが果たす役割は大きい。変電所システムはステーションレベル,ベイレベル,プロセスレベルからなる。各レベルにおける構成装置について具体的な技術的動向,社会的経済的側面からのユーザーニーズ動向を述べ,それに対する富士電機の実績と今後の方針,また方針実施に際しての課題を述べる。

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