富士時報
第79巻第6号(2006年11月)

特集 新水環境ブランド「GENESEED」

新水環境ブランド「GENESEED」の現状と展望

多田  弘・中村  靖・生駒 雅一

日本は世界でもトップクラスの上下水道設備を抱え,人々の営みが水環境の中で可能な限り親和性を保てるように日々邁進(まいしん)している。しかしながら,課題は山積し,今後も設備の増強・改良が必要である。富士電機では水環境にかかわる過去のノウハウと技術遺伝子を継承し,21 世紀の循環型社会における水環境インフラのライフサイクルサポートを目指した製品群「GENESEED」(ジェネシード)を提供していく。本稿では,GENESEEDの概要,基本コンセプト,現状の整備状況と今後の展望について述べる。

「GENESEED system」監視制御システム

高城 正文・荒川 恒弘・石橋  等

現在,上下水道事業では施設の老朽化に伴う「更新の時代」を迎えている中で,長期的な維持運営費用の削減や資産のより有効な活用が重要になってきた。またその一方で,電子機器のライフサイクルは短命化の一途をたどっている。本稿では,以上の背景を踏まえ安全・安心・安定と,永続的な変化への対応,ライフサイクルコストの低減を目標に開発を行った「GENESEED」監視制御システムを紹介する。

「GENESEED system」水処理プラントへの適用事例

秋元 省吾・浅野 隆幸・折茂 義文

水処理プラントの代表的な上水道分野,下水道分野の新設プラント建設および既設プラントの移行建設における適用事例について紹介する。適用に際し,「GENESEED」標準製品と最新のシステム技術を採用している。大規模プラントにはスケーラブルに拡張が容易なシステム構成とし,扱う多くの情報を分かりやすい監視機能で実現している。移行プラントでは,既存情報・新規情報の運用統一とスムーズな移行が行えるシステムを提供している。さらにフィールドに近い制御装置との情報連携を強化し,トータルシステムを構築している。

「GENESEED system」監視制御機能

中島  稔・岡部  太・梅木 聖己

水処理分野向け監視制御システムの画面種類と自動制御用標準ライブラリについて紹介する。「GENESEED system」の品質向上とエンジニアリング効率向上のために,水処理プラント制御用標準ライブラリを多数用意した。標準ライブラリ作成において,過去の納入実績調査を行い,運用面,設計面での使いやすさを追求した。これにより,設計のみならず試験業務においても業務効率向上を実現した。

「GENESEED system」監視制御機能のエンジニアリング

乳井 直樹・小島  博・脇本 雅也

水処理分野の監視制御システムの機能とそのエンジニアリングの概要について紹介する。従来のエンジニアリングでは,設備の制御を行う制御プログラムと監視を行う画面などの設計は,別々に行っていたが,本システムではライブラリのソフトウェア部品を用いて,一体化して実施することを特長としている。このことにより,従来行っていた制御プログラムと,監視操作データ間のリンクの定義やそのテストのためのエンジニアリングが一切不要となる。

「GENESEED system」エンジニアリングサポートツール

金子 昌幸・南  正純・蓬田  登

「GENESEED system」を,上下水道のプラントにフィッティングさせ,品質を保証できるように改善を進めた。今回はその一部として,エンジニアリング効率アップツールの概要を紹介する。エンジニアリングデータベースは,設計支援とドキュメント作成の効率化を目的に開発されたツールである。プラントシミュレーションシステムは,設計および試験の各場面でのプラント適合性確認など,作業の高効率,高品質化を狙いとして開発している。

「GENESEED system」中小規模監視制御システム

清水  浩・吉田  昭

中小規模監視制御システム「EXIONSTAR」は,中小規模クラスの水処理プラントをターゲットに開発された。従来の重厚なDCSに比べ,耐環境性,信頼性,長期保守性などの重要な機能を継承し,中小規模クラスに必要な機能と性能としたことで,コストパフォーマンスの高いシステムとしている。さらにWindows環境におけるクライアントサーバ構成やスタンドアロン構成を用意し,顧客ニーズに合わせたシステム構成を提供できるようにしている。

「GENESEED system」テレメータ・テレコントローラ

泉田 明男・佐藤 隆道・小林 茂洋

上下水道事業を取り巻く環境は大きく変化しており,より一層効率的な事業運営が求められている。遠方監視制御システムも通信手段の選択肢が広がってきたが,「安全・安心・安定」という上下水道施設の使命を考えたとき,高い信頼性を持ち,実績の多い通信手段としてテレメータ・テレコントローラは今後も重要な装置である。本稿では,「GENESEED system」におけるテレメータ・テレコントローラを適用した遠方監視制御システムの機能を紹介する。

「GENESEED system」HMIデザインコンセプト

塩  哲二・田村 正博

近年,監視制御システムは自動化が進み,専任の監視操作員が減少すると同時に,業務効率化のため,監視制御室のオフィス化が進んでいる。「GENESEED」の監視制御コンセプトは,「無指向性空間」であり,「自由度」と「広がり」を持つ監視制御空間を演出する。監視制御専用デスクは,作業・会議にも使用可能な多目的化への要望が増えている。新型デスク「Vario」は,これらを反映し「WORK からLIFE(監視操作空間から生活空間へ)」を基本コンセプトとした。

「GENESEED system」エコロジー配電盤

山本総一郎・鈴木 伸夫・増田 昌彦

上下水道向けの環境配慮型製品であるエコロジー配電盤は,ISO14020シリーズで規定されるタイプII,タイプIII環境ラベルに適合している。エコロジー配電盤は,経済産業省が進める3R(Reduce,Reuse,Recycle)政策やLCA(Life Cycle Assessment)データの第三者認証を盛り込んでおり,この分野では先端的な製品である。富士電機の環境配慮型製品への取組み,最新の縮小高圧盤での3R対応項目,低圧モータコントロールセンタの新旧機種についてのLCAデータ比較,今後の開発動向について説明する。

「GENESEED system」高信頼配線技術の検証

一戸  均・中村  靖

押締端子はダウンサイジングを目的とした高密度設計の切り札的存在である。また,機器調達のグローバル化により,今後は押締端子を採用せざるを得ない状況である。一方,ユーザーの立場からすれば,押締端子に対する情報が少なく,不安があるのも事実である。このため,押締端子の評価として,構造・素材の調査,JISに準拠した評価試験を実施した。その結果,押締端子は,機能的に現行のねじ端子と同等であり,さらに,ゆるみに対しては,より構造的に対策が施されていることが分かった。

「GENESEED system」水の安全・安心をサポートする水質計測システム

田中 良春・横山 勝治・金川 直樹

わが国の水道水源は主として河川水である。国土が狭いことから,河川水が上流域から下流域まで繰り返し循環使用される場合が多く,水質管理は水道水質の安全・安心を確保するうえで重要である。富士電機では浄水場において水源から給水まで「安全・安心な水の安定供給」を水質管理面でサポートするべく,重要度が高く特長ある水質計を開発・販売してきた。2006年10月に発売した新型水質安全モニタと2007年3月に発売予定の新型トリハロメタン計を中心に,そのラインアップと用途について紹介する。

「GENESEED solution」データ連携機能と応用

園村 泰彦・八代 一伸・喜多村 卓

監視制御機能と連携する各種ソリューションシステムにおける課題は,監視制御システムのシステム構成に依存することなくその機能を発揮することであった。「GENESEED」は,データ連携機能を介してソリューションシステムを構築することによりこの課題に対応した。本稿では,「GENESEED system」監視制御機能とデータ連携を行うプラットフォーム「GENESEED コネクト」を中心に,その上で動作する各種ソリューションの概要および「GENESEED solution」の可能性について紹介する。

「GENESEED solution」下水処理場機能評価システム

上野 隆史・福嶋 俊貴・古屋 勇治

下水処理場に対する社会的な期待は,「水処理工程の高度化」や「汚泥資源化の有効利用」を中心に高まりつつある。富士電機は下水道の運用ソリューションとして「下水道のまるごと最適化」に取り組んでいる。龍谷大学宗宮教授(京都大学名誉教授)が提唱された下水処理場機能評価表をベースとする下水処理場機能評価システム(PES)を開発し,「GENESEED solution」のメニューとしてシステム化を行った。本稿では,PESの機能と実データによる適応性の検証を行ったので紹介する。

「GENESEED solution」省エネルギーシミュレータ

小林 憲徳・安久津信也・福山 良和

「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)の改正に伴い,浄水場,下水処理場の受配電設備の最適な機器構成を計算する省エネルギーシミュレータを開発した。このシミュレータでは省エネルギー機器や高効率機器の導入,最適制御による効率運転などの対策による省エネルギー効果量を簡単に定量化できる。また,非線形システム安定性理論を用いた新しい最適化手法を応用した複数ポンプの最適制御機能を有し,全ポンプの消費電力が最小となるように,ポンプの起動・停止,流量配分を自動演算できる。典型的な浄化センターを例題として省エネルギー試算を行った。

「GENESEED solution」木質バイオマスガス化発電

横幕 宏幸・長倉 善則・村山 光弘

地球温暖化抑制のためには,化石燃料からの脱却が必要とされる。木質バイオマスエネルギーは,循環型社会実現の切り札として期待されている。本稿では,月島機械株式会社が岩手県葛巻町に納入した木質バイオマスガス化発電実証試験設備に採用したガス化炉の特長や,系統連系時の電圧降下対策,逆潮流防止用発電電力制御,力率制御方式の概要について紹介する。

「GENESEED service」水管理サービスの基幹技術

上野 健郎・桐野 秀明・秋山 浩秀

「GENESEED」の基本コンセプトであるライフサイクルサポートの一環として「GENESEED service」水管理サービスをビジネス展開している。これは,従来の事業領域を包含したうえで,公設民営などの経営領域にも踏み込んだ広い意味での水道事業ソリューションの提供を目指している。本稿では,富士電機における水管理サービスの取組み姿勢,基幹となる技術の考え方,提供しているサービス,ツールなどについて述べる。

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