富士時報
第82巻第4号(2009年7月)

特集 進化する自動販売機の省エネルギー・環境対策技術

粋なものづくり ─ 技術から文化へ ─

加藤 征三
三重大学大学院工学研究科工学博士 特命学長補佐

自動販売機における環境対応技術の動向

北出 雄二郎 ・ 槙田 幸雄

自動販売機では、既に「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)の特定機器に指定されている缶飲料自動販売機を中心に、さまざまな環境対応のための技術開発が進められてきた。富士電機では、省エネルギーを推進すると同時に環境への影響を配慮した素材を積極的に用いるなどしてきた。缶飲料自動販売機では断熱の強化、ヒートポンプ技術などにより、過去11年間に年間消費電力量を1/4 に削減しており、加えて製造時・量産時に生じる環境への負荷の評価方法を確立するなどの取組みを行っている。

自動販売機における省エネルギーに関する法的規制の動向

福島 繁人

工業製品の省エネルギー(省エネ)促進を義務付けている「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(省エネ法)は、 トップランナー方式の導入以降21品目の製品を指定し、確実に効果を出しており、高い評価を得ている制度である。自動 販売機も21品目の中に含まれ、2005 年度の第一次目標を達成し、現在2012年度の第二次目標に向かって省エネ向上に取 り組んでいる。この法規制を受けて、地方自治体などからの自動販売機に対する省エネ要請が急増していることから、飲料メーカーなどと協力しながら、業界全体として省エネに取り組む自主行動を展開している。

飲料自動販売機に用いる冷媒の技術動向

滝口 浩司 ・ 土屋 敏章

缶飲料自動販売機の重要機器である冷凍機では、冷媒にオゾン層を破壊しない代替冷媒や温暖化係数の小さい低温室効果ガスを適用し、さらに省エネルギー技術の開発も積極的に行っている。温室効果の抑制を重視する場合にはCO2冷媒を採用し、消費電力の削減を重視する場合には高効率な運転が可能なR134a冷媒を採用している。さらに、各冷媒の特徴を生かせるように開発したヒートポンプを自動販売機に適用し、いっそうの環境負荷低減を図っている。

CO2冷媒対応缶飲料自動販売機

井下 尚紀

缶飲料自動販売機の冷凍機に使用する冷媒は、従来のハイドロフルオロカーボン(HFC)から地球温暖化係数の小さい冷媒への転換が必要であった。低温室効果ガスであるCO2を缶飲料自動販売機の冷凍機への適用を試み、製品化することができた。また、排熱を有効利用するヒートポンプシステムを開発した。R407C冷媒の同型機に比べ33% の低消費電力化 を達成した。

CO2冷媒対応コンパクトカップ式飲料自動販売機

江利川 肇 ・ 松本 尚男 ・ 高橋 裕一

カップ式飲料自動販売機ビジネスは地球環境意識の高まりとともに、環境・省エネルギー対策が最重要課題である。温暖化防止の視点から、省エネルギー特定機器への指定・低温室効果ガス冷媒への移行が求められている。富士電機では環境対応・省エネルギーのソリューションとして、CO2冷媒に対応し、かつ従来機比で消費電力量を44% 低減、質量を29% 低減した環境対応カップ式飲料自動販売機を開発した。

環境対応清涼飲料ディスペンサ

遠藤 伸之 ・ 佐藤 新二 ・ 大川原 豪

富士電機では清涼飲料ディスペンサの環境問題に対応した機種を開発した。機種の特徴としては、まず水槽および冷蔵庫に使用している発泡ポリウレタンの水処方(低温室効果ガス)化に取り組んだ。さらに製品本体の軽量化(リデュース)を推進し、三次元シミュレーションによるフレーム構造・板金板厚などの見直しを実施して、製品質量10% の低減を実現 した。また製品本体の特徴としては、エンドユーザの操作性を考慮し、分かりやすさおよび操作性の向上を図った。

超省エネルギー缶飲料自動販売機「J シリーズ」

阿部 順一 ・ 益田 真次 ・ 葛山 悟

設置環境における省エネルギー対応缶飲料自動販売機として、熱効率の良い冷媒R134aを採用したヒートポンプユニットと断熱強化構造を新たに開発し消費電力量を40%低減した。消費者の利用価値を向上するため、庫内ラック全長の縮小化で搬出位置を持ち上げ、商品の取り出しやすさを向上した。金銭関連の操作部は消費者が色彩判別しやすいように色を 統一し、分かりやすい、使いやすいという基本機能を追及した。

省エネルギーグラスフロント型自動販売機「FGE シリーズ」

川上 浩二 ・ 笠井 武司 ・ 山本 隆則

省エネルギーと1台当たりの売上げ向上アイテムを盛り込んだグラスフロント型自動販売機「FGE シリーズ」を開発した。 シミュレーションの活用による風周りの最適化、加熱庫と冷却庫の断熱強化、LED 照明の効果的な採用などを行い従来機比で消費電力量を26から30% 削減した。搬送動作と払出し動作を集約させた新商品搬送機構と、全段一体型商品収納ラックの開発により、高速払出しと運用操作性向上を達成した。

缶飲料自動販売機の電装品・制御における省エネルギー対応

濱田 公介

缶飲料自動販売機の消費電力のうち、80% は冷却・加熱に使われ、15% は照明に使われている。照明の省エネルギー技術として従来の蛍光灯に比べて大幅な省エネルギー(消費電力70% 削減)と長寿命(4万時間以上)を実現可能な白色LEDを光源とした照明の開発を行った。冷却・加熱においては、これまでに培った省エネルギー制御をベースに新たに開発したヒートポンプの制御をビルトインしたユニットを開発し、大幅な省エネルギー化を図った。

環境対応貨幣識別装置

松澤 光明 ・ 飯嶋 茂 ・ 植田 基之

2009年度モデルの硬貨処理装置・紙幣識別装置の環境対応の取組みについて紹介する。既存機種の改良である硬貨処理装置は単独で省エネルギーモードに遷移する方法を開発し、既存モデル(前年度モデル)に対し20% 以上の消費電力の削減を達成した。紙幣識別装置は、製品ライフサイクルを総合的に見直して、消費電力の削減、軽量化、組立・分解の容易化に取り組み、前年度モデルに対し、消費電力の20% 以上の削減、7% の軽量化、約20% の組立時間の短縮を達成した。

自動販売機におけるライフサイクルアセスメントから見た環境適合

中村 雅昭 ・ 丸山 直樹 ・ 岡本 元秀

自動販売機トップメーカーである富士電機は、環境負荷の低い自動販売機を社会に提供することが使命の一つである。 製品アセスメントに、環境に与える影響を評価する手法であるライフサイクルアセスメント(LCA)を取り入れた。製品の素材製造から廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全般を六つに分け、各段階のCO2排出量を算出するLCAを、自動販売機の製品開発の仕組みに組み込んでいる。その結果、自動販売機の環境への影響は年々減少している。三重大学と共同でこの成果の普及に務めている。

自動販売機におけるエコリーフ環境ラベル取得の取組み

岡本 元秀 ・ 渡辺 信広 ・ 福島 繁人

“環境配慮型製品の拡大と採用促進PR”を目標にして客観的な情報やデータを公開するプログラムであるエコリーフ環境ラベルの取得を目指し、提案元として業界をリードして取りまとめ、自動販売機LCA の業界標準を確立した。2007年2月に缶飲料自動販売機で業界初取得したのを皮切りに、2008年度にはカップ・たばこ・紙容器飲料自動販売機と全機種で取得するとともに国内10社目のシステム認証をも取得した。

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