
富士時報のご紹介


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特集 創エネルギー技術 解説 |

特集 創エネルギー技術
創 エネルギーの現状と展望
米山 直人 ・ 大澤 悟 ・ 吉岡 浩
富士電機は、“エネルギーと環境”をキーワードに新しい事業経営を進めている。グリーンエネルギー創出のため、次の
取組みをしている。地熱発電では、タービンの耐食性向上技術の開発やバイナリー発電に注力している。原子力分野では、
発電や水素製造などにも利用できる次世代の高温ガス炉の研究開発を行っている。太陽電池では、設置場所の可能性を拡
大する軽量で曲がるフィルム型の普及に向け本格的な量産を開始した。100 kW りん酸形燃料電池「FP-100i」を商品化し、
防災向けや消化ガス利用、水素ステーション向けなど、用途の拡大を図っている。 正誤表
地熱発電システムの取組みと最新技術
山田 茂登 ・ 牧元 静香 ・ 柴田 浩晃
富士電機は1980 年代に地熱発電への取組みを始め、現在では市場で上位のプラントメーカーとして認知されるに至った。
最近完成させたインドネシア・ワヤンウィンドゥとニュージーランド・カウェラウの二つの地熱発電所の概要を紹介する。
世界で初めて実用化した蒸気性状自動分析装置は、異常診断機能や運転支援機能を備えており、プラント利用率の向上に貢
献している。低温の地熱媒体も利用できるようにバイナリー発電技術の開発を経て200 kW の実証試験を終了し、2010 年度
内に市場投入する予定である。
蒸気タービンの最新技術
中村 憲司 ・ 田部井 崇博 ・ 高野 哲
グローバルな環境問題に対応して、火力発電の中心機器である蒸気タービンの高効率化、運転信頼性向上への要求が高
まっている。蒸気タービンの運転条件を高温・高圧にすることにより火力発電の効率向上を図るとともに、将来的な700 ℃
以上の高温条件への対応のため、経済産業省の先進超々臨界圧火力発電実用化要素技術開発に参画し、高温弁の材料評価と
信頼性検証を実施している。さらに、地熱発電用蒸気タービンでは、表面コーティングなどの耐食性向上技術を開発し、信
頼性を向上させている。また、低沸点媒体を使った地熱バイナリー発電用タービンの開発も進行中である。
回転機の最新技術
真下 明秀 ・ 中山 昭伸 ・ 日和佐 寛道
富士電機では、中規模火力発電プラント向けに世界最大容量クラスとなる型式定格300 MVA 空気冷却タービン発電機の
製作・出荷を完了した。大容量空気冷却発電機を実現するためには、詳細に機内の通風状態を把握する必要がある。このた
め、通風上重要な部位に対しては流れ解析を用い、その結果を反映した通風回路網計算にて全体通風への影響を把握し、冷
却効率の向上を図った。また、風力発電用の3,000 kW 級のダイレクト駆動大容量永久磁石発電機では、発熱部により近い
場所で冷却する機内通風方式や回転子への磁石配置を工夫してコギングトルクの発生を抑えている。
水車の性能改善技術
鈴木 良治
クリーンな再生エネルギーである水力発電を推進し、性能向上を図ることにより、温室効果ガス削減と電力系統の安定化
に寄与することができる。水車の効率やキャビテーションなどの改善と、安定運転範囲拡大のため、CFD(Computational
Fluid Dynamics)を有効に適用している。特に、近年大きなウェイトを占める既設水力発電所の改修では、落差や流量の
範囲、頻度などの運転実績を分析した結果を元にCFD を活用して設計している。既設水車の寸法の制約の中で効率を改善
し、年間発生電力量の増加に寄与している。
原子力の熱利用を拡大する小型高温ガス炉
岡本 太志 ・ 大橋 一孝
小型高温ガス炉は、軽水炉と比べて格段に高温(〜950 ℃)の熱が利用できるとともに、固有の安全特性にも優れた原子
炉である。発電以外の分野へ原子力の利用を拡大し、CO2 排出量の大幅な削減が可能なため、活発に開発が進められている。
富士電機は、わが国初の高温ガス炉である高温工学試験研究炉の開発で培った技術を生かして、小型高温ガス炉の実用化の
ための研究開発を進めている。主な研究テーマは、炉心冷却材有効流量確保のための耐熱炉心拘束機構の開発、事故時の安
全特性向上を狙った出力分布平坦(へいたん)化炉心の開発、自然放熱による原子炉除熱特性の評価精度向上などである。
りん酸形燃料電池「FP-100i」
長谷川 雅一 ・ 堀内 義実
富士電機は、1998 年から100 kW りん酸形燃料電池の商品機を25 台納入した。累積運転時間は、当初の開発目標の寿命
(4 万時間)を超え、信頼性・耐久性が実証されている。2009 年度に新たに開発した普及型りん酸形燃料電池「FP-100i」
の販売を開始した。FP-100i は周辺設備を一体化してユーザの利便性の向上と、装置の設置環境の拡大を図っている。今後
の普及拡大へ向けた展開では、災害対応機能付き燃料電池や純水素や副生水素利用の燃料電池のほかに、電気自動車用の水
素ステーションに水素を供給できる水素供給機能付き燃料電池などの用途開発を進めている。
下水汚泥消化ガスを利用した燃料電池
福村 琢 ・ 黒田 健一
富士電機は、下水汚泥消化ガスを燃料とする100 kW りん酸形燃料電池の商品機を計6 台納入し、良好な運転実績と導入
効果を得た。山形市浄化センターでは、累積運転時間も当初の開発目標寿命(4 万時間)を超え、下水汚泥消化ガスにおけ
るりん酸形燃料電池の長期間の信頼性・耐久性、導入効果を実証した。熊本北部浄化センターでは、再生可能エネルギーで
ある下水汚泥消化ガスの電力価値をグリーン電力証書として売却し、注目を集めている。国内外の拡販展開に向けて、標準
化設計と高効率化、海外認証の取得を進め、市場性を高めていく予定である。
フィルム型アモルファス太陽電池の高出力化技術
藤掛 伸二 ・ 佐藤 広喜
新型フィルム型アモルファス太陽電池を、2010 年1 月に熊本工場で生産開始した。この太陽電池は、従来型に比べて出
力を約2 割向上させた。高出力化するために、製造装置や製造条件を見直して、セル面積の拡大や無効領域を縮小して発電
領域を拡大した。さらには、電極などのパターンを最適化して集電性を改善した。出力電圧を従来の約半分の157 V に低下
させることで、各種パワーコンディショナへの適合性も向上させた。また、熊本工場で生産した太陽電池を工場内の屋根に
取り付けた。8 か月間の発電特性は良好で、規格化発電効率は0.98 と高い実績値を示した。
フィルム型アモルファス太陽電池モジュールとその適用技術
中村 哲郎 ・ 横山 尚伸 ・ 柳瀬 博雅
富士電機の太陽電池モジュールはプラスチックフィルム基板の上に作製した太陽電池を、ガラスを使用せず封止している。
軽量で柔軟性に富み、薄く、割れない特徴があり、建物の補強工事をしなくても設置ができる。 さまざまな材料や曲面を
持った鋼板と張り合わせることで、屋根材や壁材などの意匠性の高い建材と一体化できる。また、防水シートなどの非建材
との一体化や据付け方法を工夫すれば、設置箇所や利用方法などの可能性や付加価値の拡大ができる。集積型直列構造がセ
ルに作り込まれているので、簡単な配線のみでモジュール化が可能で、大面積化が容易であるという利点もある。

解説
*本誌に記載されている会社名および製品名は、それぞれの会社が所有する商標または登録商標である場合があります。著者に社外の人が含まれる場合、ウェブ掲載の許諾がとれたもののみ掲載しています。