富士時報
第74巻第4号(2001年)
保全・サービス技術特集
阿武 英文・中原 泰男・渡辺 修身
メーカーやベンダーが従来から提供している,お客様に納入した製品や設備の修理,保守・保全サービスは,それ自体,効率化や新しい技術を取り入れながら,お客様の設備の長期安定操業と保全業務の合理化を実現させていかねばならない。今後はさらに,お客様の設備全体のライフサイクルにわたる投資を最適化していくという視点に立ち,お客様の業績・価値を向上させるサービスソリューションとして発展していくと思われる。
滝沢 繁・佐藤 守・藤本 尚道
富士電機は1999年10月,お客様に対するサービス体制強化を目的に「コールセンター」の運用を開始した。コールセンターには,お客様のシステムに関するすべての情報を管理(集約,加工,分析および配信)するCRM24システム,要求案件を迅速に処理するためのCTIシステム,およびシステムを遠隔で監視・診断するリモートメンテナンスシステムの支援システムを設置し,24時間365日体制で対応している。本稿では,各支援システムの機能・仕組みをまじえながら富士電機のコールセンターを紹介する。
松井 幹雄・小鷹 照幸
COMETは,コンピュータ,分散型制御装置,テレメータ・テレコントロール装置,FAパソコン,無停電電源装置などの情報機器を対象とした保全内容のコンサルティング,定期点検・診断,障害修復および設備の運転・維持管理までも含めたサービスを体系化したものである。その体系は機器の設置環境に応じた保全計画と稼動状態に応じた保全により,ライフサイクルにわたる保全費用を低減しながらシステムの安定稼動を維持することが狙いである。本稿では,COMETのサービスメニュー体系と概要を紹介する。
福島 宗次・辻本 豊・西村 英二
近年の設備・施設管理においては,顧客サイドでの設備監視に代わってメーカーにおいて遠隔監視するサービス形態が一般化してきている。本稿では,富士電機が納入している設備(制御システム,クライアント・サーバシステム,無停電電源装置,自家発電装置,可変速装置など)の概要とそのリモートメンテナンスを紹介する。
吉田 浩・吉野 久男・北谷 保治
生産設備では,「操業安定」と「保守・保全の合理化」が重要な課題となっている。例えば,MTBF(平均故障間隔)は2倍,MTTR(平均修復時間)や保守・保全費は従来の1/2など,具体的な目標を目指す企業が出てきた。こうした要求にこたえるべく,回転機械系のみならず,電気系およびプラント・生産ライン系を含む,総合的なプラントオンライン診断システムを構築した。
久保 登士和
電子装置の劣化要因の一つである腐食は,湿度や腐食性ガスといった環境の影響を受けやすい。防食対策立案や予防保全を行うためには,電子装置の置かれた環境を調査することがきわめて重要である。本稿では環境因子のうち腐食性ガスについて,その種類・測定方法を述べる。また,周囲環境の変動を受けない製造環境実現や防食法検討のために環境調査を実施した事例も紹介する。
佐々木 洋敏・芳賀 弘二
富士電機では,産業界で幅広く使用されている交流機の固定子巻線の予防保全についての技術開発を進めている。高圧機に関しては,一般的な絶縁診断,絶縁診断データからの余寿命推定法,独自に開発した中・小容量機の新しい評価法,部分放電モニタを紹介する。また,高・低圧機に使用されている絶縁材料の熱劣化診断法,および高圧巻線とは異なる低圧巻線について焼損例から予防保全法を紹介する。
羽田野 伸彦・仲神 芳武・宮 良一
現在の高度な情報社会では,高品質の電力が安定に供給されることが要請される。一方,昨今の低成長経済下では増容量による設備更新は減少し,寿命ぎりぎりまで現状の設備を使用したいというニーズが高まっている。こうした社会情勢から,油入変圧器の劣化状態の把握や更新時期の判断を的確に行うべく劣化診断技術の向上が求められている。本稿では,変圧器の劣化診断の現況と,最新技術である測色による余寿命予測技術の取組みの一端を紹介する。
原 敏行・東谷 直紀・宮野 隆
インターネットをはじめとしたIT(情報技術)の発展は,保全業務の合理化・省力化を実現するうえで非常に有効な手段となっている。今後,お客様へのサービス向上を目的としたIT活用による保全サービスの提供や保全業務の効率化は,ますます進展していくと思われる。富士電機では,お客様の企業価値向上に役立てうるよう,ITを活用した保全・サービスを各種提供しているので紹介する。
江上 富三・佐川 学
上下水道施設は環境問題対策,公共工事コスト縮減,施設の広域化など,取り巻く環境が大きく変化している。また,ライフラインとしての高い水準の維持管理が求められる。本稿では複雑化・高度化する監視制御システムのリモートメンテナンスとこれからの維持管理の業務改善について紹介する。特に業務委託とさまざまな管理サービス,業務支援システムを提案する。
高橋 省・池内 一志
高い信頼性を要求される電力用監視制御システムにおいて保守業務は重要な役割を持つ。近年はシステムの更新周期の長期化が進み,技術者や保守部品の確保などの課題が発生している。一方,オープン分散化,マルチベンダー化など汎用製品を多用したシステムも増えつつあり,従来の定期点検や故障復旧にとどまらない保守が求められている。このような環境下での富士電機の電力用監視制御システムの保守への取組みを紹介する。
村田 幸雄・相澤 茂雄
地球温暖化防止策として,自然エネルギーを使用する風力・太陽 光発電などの導入が加速されてきている。また,既設水力発電装置の近代化による性能向上は,環境面や経済性に優れ最も身近に取り組むことのできる重要な手法の一つである。本稿では,環境変化や運転条件に適合させたランナの設計,固定子の近代化更新による低損失化の実績を紹介するとともに,最近の水力発電装置の改修技術として,ランナベーン用電動サーボモータ,ハイブリッドサーボモータ,耐土砂摩耗コーティング技術,軸受の近代化更新などを紹介する。
青山 敬
原子力施設の安全,品質に対する要求が高まる中,放射線管理システムの信頼性向上と予防保全が重要な課題である。本稿では富士電機が納入した放射線管理システムの保守,予防保全技術の現状を述べる。また,統計手法やAI(人工知能)を取り入れた異常診断機能を開発し,放射線監視システムに組み込んで納入した例を紹介する。このシステムは故障時の原因解析結果や対応策をコンピュータからリアルタイムで出力できる。
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注
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