富士時報
第75巻第2号(2002年)
社会システム特集
笹本 利治
富士電機の社会システム事業部門の取組み内容を紹介する。現在,社会システム分野を,大きく五つのビジネスユニットに分けて取り組んでいる。(1)施設管理システムなどを中心とした情報・通信基盤,(2)施設電機品から情報・環境を目指す道路施設・情報・通信,(3)社会システム事業部門の基幹事業である施設用電機品,(4)IT化を進める医療・介護,(5)環境・エコビジネスまで取り組むクリーンルーム。それぞれに対し,市場の動向と富士電機の考え方,取組み方を簡単に展望した。
柄沢 隆・西永 博・永池 幸男
大学組織のあり方が社会的に議論される中で,施設整備の現状や課題も重要視されている。施設整備の手法としてのファシリティマネジメント(FM)を提案し,コンピュータによる支援システムであるFMS(Facility Management System)を紹介する。FMSの実体はCAD図面データに基づいた図面データベースと,これにリンクする台帳その他のデータである。このデータベースを中心にFMサイクルをまわすことによって,長期的な施設整備と運用を計画的に実施できる。併せて最近のシステム構築例を紹介する。
(箱根小涌園「ユネッサン」)
白倉 善積・増倉 孝好・福田 尚
プールや温泉などの温浴施設において,利用者の利便性向上と施設運営の効率化を図るために,リストバンドを用いたキャッシュレスサービスシステムを導入することが有効である。本稿ではワンツーワンマーケティングを目指し,藤田観光(株),富士電機冷機(株)と共同で開発したシステムを箱根小涌園「ユネッサン」に納入 した事例を紹介する。本システムでは,リライトシートと非接触ICを備えたリストバンドを用いることにより,利便性向上,運営の効率化に加え,高いセキュリティ性を確保した。
澤田 朋之・大塚 喜彦・矢代 緑
欧米から10年ほど遅れているといわれる日本の噴水ビジネスにおいて,ハウステンボス(株)へ納入の噴水システムは,ノズルの数量,規模ともにそれに対抗できるレベルのものである。本稿では,水・音・光が一体となったウォーターショーを支える噴水をはじめ,エアレーション効果,特殊フローティング,音響・照明・噴水制御技術などについて紹介する。
川上 一美・古澤 武三
最近話題になっているITS(高度道路交通システム)の大きなテーマの一つとしてETC(自動料金収受システム)がある。富士電機では1999年11月から沖縄地区のETC 設備設置工事に携わり,全国で二番目のETCとして,2000年10月末に竣工(しゅんこう)した。本稿では,富士電機が納入した沖縄自動車道のETCについ て,システムの概要,ならびに本格運用開始前の2000年6月から2001年3月までの9か月間にわたりETC の実用性検証のために実施した,一般モニターを対象とした試験運用の概要について簡単に紹介した。
(ハイウェイB to M )
福田 尚・川村 秀行・奈良 悟
IT 革命に向け政府によりe‐Japan 構想が取り組まれる中,富士電機の道路交通事業では新たにB to M (Business to Machine )をコンセプトとする情報化事業を推進している。基本コンセプトは,(1)ネットワーク化,(2)オープン化,(3)ユビキタス化である。B to M ビジネスは,B(道路利用者・道路管理者)の革新とM(機器・システム)の資産価値向上,さらにC(利用者)の満足を目指すものである。
福田 尚・川村 秀行・浅野 隆幸
道路施設などの広域施設管理分野では,光通信網によるネットワークが構築されており,富士電機ではこれを利用する通信設備として,遠方監視制御装置などを製品化している。今後は,これらネットワークの高度利用が検討されていくことが予想される。本稿では,日本道路公団向けに開発した新型遠方監視制御装置を紹介するとともに,直結可能な簡易伝送装置の採用およびIPネットワークに対応する入出力部構成品を使った今後の展開例を紹介する。
安本 浩二・日浦 禎・山村 辰男
1999 年度からサービスが開始されたETC(ノンストップ自動料金収受システム)はITSの中でも中核技術となっており,自動車,電機,通信などの関連各社が激烈な開発競争を繰り広げている。ETCでは自動課金のため,車両側の車載器と車線側の無線機の間でデータ通信する。この通信をスタートさせるタイミングを送信するため,80km/hで走行する車両を検知するETC用車両検知器が使用されている。本稿ではETC用車両検知器について種類と機能を紹介する。
瑞慶覧 章朝・河野 良宏・安本 浩二
トンネル内の視環境および大気環境保全用の電気集じん装置に関する技術動向について報告する。ディーゼル排ガス粒子を電気集じん装置で集じんする場合,再飛散現象によって,集じん率低下が発生することを示した。この対策として,(1)誘電体被覆型,(2)水分噴霧,(3)交流電界型の3タイプの開発結果を述べた。また,NOxと浮遊粒子の同時除去を目的とした無声放電の応用結果を述べた。無声放電型は再飛散現象防止にも有効であることが分かった。
大庭 茂男・前田 顕一
現在,大手の病院を中心に医療情報システムが導入されてきている。しかしながら,病院の経営は厳しい状況にある。このような状況のもと,富士電機では医療情報システムをネットワークという観点からアプローチしている。具体的には,中規模(300床)以下の病院,診療所を対象にオーダーシステム,画像解析システム,医薬品総合システムなど,高性能,スタンダード型のシステムを低価格で提供する。このシステムは,単に病院内のIT化だけでなく,病院と病院,病院と診療所間の連携,病院・診療所(病診)連携といわれるネットワークシステムを構築することが可能である。
平林 丈英・菊池 英樹・小泉 和裕
2000年4月の介護保険制度施行に伴い,今まで聖域といわれてきた介護・医療の分野でも急速に規制緩和が進み,介護・医療現場は厳しい競争にさらされている。富士電機では,こうした世の中の流れに対応するために,(1)介護センサによるネットワークシステム,(2)ケアプラン実行支援システム,(3)在宅医療ネットワークシステムを提案中である。(1)は高齢者の安全を確保するのに寄与し,(2)は施設の職員の業務効率化に役立つ。さらに(3)は,近い将来に在宅医療の切り札になりうると考えられる。
峰岸 裕一郎・日下 豊
半導体,液晶,医薬,食品などの分野で幅広く利用されているクリーンルームで,ファンフィルタユニット(FFU)は,1工場あたり1万台以上(大規模の場合)採用されている。本稿では,FFUの保守管理の省力化を図ったFFU監視制御システムを紹介する。FFU監視制御システムは,高信頼性,高機能,システムの拡張性が要求されている。また,小規模(FFU数十台程度)から大規模(FFU数万台)クリーンルームまで適用できるようにメニューを取りそろえた。
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注
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