富士時報
第75巻第5号(2002年)

太陽電池特集・燃料電池特集

太陽電池・燃料電池特集に寄せて <巻頭言>

伊藤 晴夫

新エネルギーの現状と展望

蟹江 範雄・中島 憲之

地球環境問題がクローズアップされる中,新エネルギー導入による温暖化ガス(特に二酸化炭素)の削減に期待が集まっている。本稿では新エネルギーの日本における現状と導入目標について紹介する。さらに,富士電機の太陽電池開発,燃料電池への取組みについて,現状の課題と展望を含め紹介する。

太陽電池開発の動向と展望

吉田 隆・藤掛 伸二

太陽電池開発の歴史,最近の市場動向を紹介する。1997年に世界の生産量は100MW/年へ,2000年には300MW/年へと急速に拡大している。これは,世界各国が導入促進のためのインセンティブを提供し始めたことが最も大きい。本格的な普及にはコストを現状の1/2とすることが必要と考えている。このため,富士電機は,量産性に優れたフィルム基板太陽電池の開発に取り組んでいる。ここ5年間で製膜速度は10倍に進歩,屋外発電期間が3年を超え,加速試験結果と合わせて屋外の耐久性にめどがついた。

アモルファスシリコン太陽電池の屋外発電特性

井原 卓郎・西原 啓徳

プラスチックフィルムを基板としたSCAF構造のアモルファスシリコン太陽電池と結晶シリコン太陽電池との発電特性比較を行い,アモルファスシリコン太陽電池は結晶シリコン太陽電池と比較して,容量あたりの年間発電量が1割以上高いことを確認した。また,発電量に及ぼす設置方位や設置角度の影響も評価した。さらに,表面をガラスで覆った従来型モジュールと表面のガラスを削除した瓦一体型モジュールのフィールドテストを実施し,モジュール封止構造を変えても発電性能に差が見られないことを確認した。

建材一体型太陽電池の鉄道施設への適用

仙田 要・牧野 喜郎

鉄道において駅舎のホーム屋根スペースの有効活用は大きなメリットとなる。屋根材の更新に際し建材一体型太陽電池を適用した京王電鉄(株)明大前駅と若葉台駅の実績をもとに特長を紹介する。太陽電池はアモルファスシリコンのセルを鋼板に張り付けた構造で比較的軽量であり,屋根の既設支持構造材の強化が不要である。電車の電磁波ノイズの測定を行い太陽電池に影響がないことを確認した。発電電力量データから算出したシステム利用率の値から順調な運転状態と判断できる。

富士電機能力開発センターの新エネルギー発電システム

堀内 義実・西原 啓徳・氏家 孝

富士電機は,富士電機能力開発センターの研修所にアモルファス太陽光発電システム,りん酸形燃料電池発電システム,マイクロガスタービンなどの新エネルギー,コージェネレーション設備,さらにこれらを統括管理するエネルギー運用システムを導入した。本システムは環境負荷の低減,エネルギー利用効率の向上を目指して運転される。今後は各種データを蓄積し,エネルギー利用効率が向上するような運転実証を行う予定である。

燃料電池開発の動向と展望

古庄 昇・工藤飛良生・吉岡 浩

富士電機が開発を行っているりん酸形燃料電池(PAFC),固体高分子形燃料電池(PEFC)の開発動向と今後の展望について述べる。PAFCは1998年から納入をしてきた100kW第一次商品機(FP100E)が高い信頼性と高稼動率で運転されており,2001年からは第二次商品機(FP‐100F)の販売を開始した。PEFCは,スタック単体では10,000時間を超える運転評価を行い,発電装置としては都市ガス燃料の1kW級システムを試作・評価して連続で約1,000時間の運転を行うなど,実用化開発を加速している。

りん酸形燃料電池発電技術の開発と納入状況

長谷川雅一・氏家 孝

富士電機は現在,低コスト化,耐久性の向上,高機能化を図った第二次商品機の販売と開発を進めている。その1台目を富士電機能力開発センターへ出荷した。その適用例を示す。1998年から出荷を開始した第一次商品機はこれまでに9台を出荷し,稼動率は98%以上を示し順調に運転を継続中である。その設置例としてオフィスビルへの適用例を示す。

固体高分子形燃料電池の開発

瀬谷 彰利・大賀 俊輔

固体高分子形燃料電池(PEFC)発電システムの実用化に向け,定置型燃料電池システムの実証と課題抽出のために,都市ガスを原燃料とする1kW級のPEFCシステムを試作して評価した。このシステムおよび適用した改質ガス用電池スタックの構成について説明する。また,システムの性能評価,連続運転試験結果および改質ガス用電池スタックの単セル耐久性評価,本システム用1kW級電池スタックの性能についても概説する。

バイオマスエネルギー利用の燃料電池の現状と展望

久保田康幹・黒田 健一・秋山 幸司

循環型社会の構築に向けた法整備や技術開発,ビジネスの動きがある中で,環境調和型の石油代替エネルギー資源として,自然エネルギーの中心となるのはバイオマスエネルギーといわれている。富士電機では,1999年から生ごみのメタン発酵ガスによるりん酸形燃料電池の適用開発に着手し,2001年から2002年にかけて,100kW りん酸形燃料電池を生ごみバイオガスと下水消化ガスに適用したものを納入した。本稿では,生ごみメタン発酵設備と下水処理場への導入事例について,そのシステムの概要について述べる。

小型パルスチューブ冷凍機

鴨下 友義・保川 幸雄・大嶋 恵司

パルスチューブ冷凍機は,膨張機に可動部を持たず,構成がスターリング冷凍機と比較してシンプルなため,低振動で長寿命という特徴を有している。このため,民生用,宇宙用として幅広い用途が期待されている。今回,人工衛星搭載用などで培った技術をベースに支持機構にフレクシャベアリングを採用した対向ピストン型の圧縮機とインライン型膨張機で構成される冷凍出力2.5W(70K時)の冷凍機を開発した。本稿では,構造上の特徴および代表的な性能を紹介する。

超音波複合分解装置

川上 幸次・田中 義郎・北出雄二郎

近年,有機塩素化合物などの有害物質による環境汚染が問題となっている。富士電機は超音波と紫外線の効果を組み合わせ,水中の有害物質を低濃度レベルまで効率的に分解・無害化する超音波複合分解装置を開発した。本稿では装置の構成・特長,分解のメカニズム,およびクリーニング廃液処理装置への適用例について解説する。本装置は小型,低コスト,無試薬で廃液中の有害物質を効率分解でき,特に小・中容量処理施設でのオンサイト設置に適している。

建設エンジニアリング情報標準化とXML応用

萩原 賢一・川上 一美・山本 隆彦

国土交通省が推進しているCALS/ECは,地方展開アクションプログラムが設定された。それに伴い,発注者側・受注者側ともに対応システムの整備に着手し始めた。CALS/ECの目標を達成するためには,エンジニアリング情報の標準化に基づく業務の構造改革が必要である。本稿では,富士電機が電子自治体や道路事業関連のCALS/EC対応システム開発,および自社のCALS/EC対応体制整備を通じて得た知見に基づき,建設エンジニアリング情報の標準化,およびXML Schema を応用した実装について紹介する。

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