富士時報
第75巻第6号(2002年)
企業情報ソリューション特集
横田 四郎・松浦 由武
IT不況と叫ばれながらも,企業の情報化投資は,生き残りをかけた競争戦略の中で高い成長を維持している。加工・組立分野,電子・精密分野などの製造業や物流・流通・食品分野などの流通サービス業を中心に,企業経営における全体最適を目指した新たな価値創造を実現する富士電機の企業情報ソリューション群について,そのフレームワークと特徴を紹介する。
八尋憲太郎
製造分野の企業から情報システムに強く求められているのが,顧客ニーズの変化を鋭敏につかむ感度と,その変化にすばやく対応できる柔軟性である。まさに,「スピード」が企業の命運を握る時代といえる。富士電機は,長年培ってきた製造現場へのシステム適用技術とノウハウをもとに,最新のITを活用し,製造業が抱える諸問題解決のための製造ソリューションとして情報システムを提供する。
高橋 一仁・成國 哲仁
サプライチェーンマネジメント(SCM)の概念の導入により,バブル崩壊後,日本の物流分野においても従来の現場改善だけの取組みではなく,全体最適を目指したロジスティクス戦略へと発展し,ロジスティクス戦略が経営戦略の重要な課題として認識されるようになった。そこで本稿では,現在の物流の置かれている状況を紹介し,最新の技術動向と,富士電機が提供するロジスティクス戦略上重要な物流センターシステム(WMS :Warehouse Management System)を,その特徴および導入方法を中心に説明する。
及川 弘・清水 工・三島 麻子
現在,多くの企業が21世紀のあるべき企業戦略として,CRM(Customer Relationship Management)を一つのコンピテンスに位置づけた事業展開を行っている。富士電機は早くからこのCRM課題解決に着手し,豊富なコールセンター構築実績のある(株)メディアクリエイトや,強力な営業支援(SFA)パッケージを開発・販売しているソフトブレーン(株)と協力し,富士電機の顧客情報データベース構築技術とシステム開発力とを生かしたCRM ソリューションの提供を進めている。
殿原 秀男
多様化するマーケットニーズ,価格競争の激化,業界再編など企業を取り巻く外的経営環境は急速に変化している。古い企業体質から脱却し,競争優位なビジネスモデルを作り上げ,収益を確保することが生き残りの必須条件である。本稿ではビジネスプロセスモデリングを軸とした業務の可視化手法から,業務改革,IT導入へとシームレスにつなげる方法論をコンサルティングメニューというかたちで概説する。
田中 春樹・相馬 寛・久道 功
激動する経済状況下において,製造業各社は,従来の生産重視の生産方式から,全体最適生産により,リードタイムの短縮および在庫量の削減を実現しようとする動きが顕著になってきている。本稿では,上記を実現するための1.業務改革,2.基幹情報インフラストラクチャー整備,3.SCM思想,の各々の重要性についての説明およびこれらを実現するための富士電機のソリューションメニューを紹介する。また,(株)モリタに納入したシステムの事例紹介を通して,最新の動向についても説明する。
守本 修司・中川 雅史・久保 真人
1990年代に入ってから世界規模で製造業の経営改革が進められ,グローバルスタンダードへの対応が必須となる中で,経営と製造現場を直結することで経営の効率化とスピードアップが求められてきている。本稿では,全社規模での情報のシームレス化を基本として「製造現場の見える化」のコンセプトを実現する富士電機のMESソリューションを紹介するとともに,各種ソリューション事例やMESソリューションの開発の方向についても解説する。
津田 宗・東谷 直紀・黒谷 憲一
製品ライフサイクルの短期化,多品種化が進み,製造業はフレキシブルな設計から製品投入までの体制が一層求められる状況にある。本稿では製品の企画・設計から生産開始までの生産準備業務プロセスを支援し,製品品質,製造設備品質,業務実行品質および実行リードタイム改善を目的とした,富士電機の開発ソリューション商品について概説する。
水谷 博成・布施 正史・項 東輝
世の中は環境・省エネルギー問題に直面しており,各企業ではエネルギー消費削減など有効な対策の必要がある。富士電機では早くから環境や省エネルギーに関するビジネスを展開しており,従来技術と新技術を積極的に融合し,エネルギー計測から,総合マネジメントの環境整備,クリーンなエネルギー供給設備の導入,ユーティリティ設備の運用に至るまで,エネルギー全般の効率的な活用へさまざまなソリューション提案を行ってきた。本稿では,導入事例を交えながら,富士電機のトータルエネルギーソリューションを紹介する。
福田 和彦・三嶽 悟・船戸健太郎
従来から,工場内の努力目標であった製造リードタイムの短縮や,仕掛り在庫の圧縮にとどまらず,原料・資材調達メーカーや営業・技術部門(納入顧客との需要予測)との情報共有化の中で,より一層緻密(ちみつ)な製造現場のシステムづくりが求められている。設計・調達・製造・検査・出荷配送の流れの中で,設計・製造現場が果たすべき製造システムの合理化と情報一元化の構築について,富士電機が取り組む製造物流ソリューションの概要を紹介する。
高橋 一仁・龍崎 義紀・野田 直広
近年,食品や上下水など多くの分野で微生物汚染の問題が増加している。培養が必要な従来法では検査に24 時間以上を要するため,簡便かつ迅速な計測手段が切望されていた。富士電機は,酵素活性を利用して生菌を蛍光標識し,自動装置によって1 時間以内に菌数を計測する生菌センサ(仮称)を開発している。本稿では,生菌センサの実用性を従来法との比較で検証した結果を解説する。また,生菌センサの利用によって想定される各種ソリューションとして,在庫削減や,次世代HACCP,再利用水管理システムについても紹介する。
西村 誠・菅野 智司・福島 健吾
携帯電話に代表されるモバイル機器の飛躍的な普及に伴い,ワイヤレスネットワークの環境はますます充実されている。またインターネット網のブロードバンド化も並行して進み,そのビジネス活用への取組みが盛んである。本稿では,既存の基幹系システムなどとの連携を図れる企業情報ポータルを構築していくうえでのモバイルソリューションの実装概念と,富士電機の取り組む,オフィス,工場現場,自治体などの各種ソリューションにおけるモバイル適用例について紹介する。
福本 武也
富士電機の中期経営ビジョンに資するための「中期IT戦略の策定指針とIT中期計画の展開方法」を述べる。富士電機のビジネスプラットフォームを構成しているIT中期計画の重要テーマの中から,CRM,経営管理,統合バックオフィス,SCM,受注・手配システム,グループネットワークの拡充,ソフトウェア資産管理について概要を紹介する。社内ITシステムは経営・事業運営のための重要なツールであり,顧客の同様なニーズに十分活用可能である。
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注
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