富士時報
第75巻第11号(2002年)
エネルギーソリューション特集
松村 基史・蟹江 範雄・大橋 一弘
1997 年に京都で開催された「気候変動枠組み条約第3回締約国会議」(COP3)以降,地球温暖化問題が世間一般にも広く認識されるようになった。一方,「電気事業法」の改正により,電力の規制緩和,自由化も進んでいる。「環境問題」と「エネルギー問題」は,今や同時に解決しなければならない大きな課題である。本稿で はこれらの課題解決に向けた富士電機のエネルギーソリューションに対する取組みの概要を紹介する。
福田 英治・上村 猛・尾上 和敏
日本も循環型社会,二酸化炭素(CO2)抑制社会へと変貌してきており,エネルギー消費量の削減が急務となってきた。本稿では省エネルギー法の再改定の内容やデータベースを活用したソリューションという観点からとらえた実際の省エネルギー対策の実施手法,実施事例を紹介する。また,省エネルギー推進の投資資金,専門技術者の育成や省エネルギー対策アイテムの発見などをアウトソーシングでき,かつ省エネルギー普及・拡大の最適な手法として期待されているESCO事業を紹介する。
斉藤 哲夫・大和 昌一・桜井 正博
新エネルギー導入促進の具体的動きの一つとして,電力供給の一定割合を新エネルギーで賄うことを義務づけ,再生可能エネルギー発電者に対して証書の保有,売買を通じて,その達成を義務づけた「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS:Renewable Power Portfolio Standard)が2003年度から施行されることとなった。本稿では,RPSの対象となっている風力発電および中小水力発電の富士電機の取組みを紹介する。
松本 祥一・横内 達和・大室 善則
企業の環境経営へのシフトが加速しており,これまでの経済面のみに重きをなしたエネルギー対策でなく,環境面へも配慮したエネルギー対策が重要となってきている。エネルギー対策を環境面でとらえた新しいエネルギー管理システムの概要,導入例,また,その中核をなす環境データベースの概要について述べる。
北川 慎治・松井 哲郎・福山 良和
工場,事務所,大型ビルなどに電気,熱,蒸気などのさまざまなエネルギーを供給するエネルギープラントの最適運用のために富士電機が開発している各種ツールを解説した。構造化ニューラルネットワークなどを利用した負荷予測ツール,およびメタヒューリスティクスなどを利用した最適運用決定機能により,年間1から5%程度運用費用を削減することが可能であり,省力化にも貢献可能である。
濱村 昌己・須川 俊一・大澤 悟
受変電設備は,高品質で安定した電力を公共施設あるいは工場,ビルなどの設備へ直接給電し,生産設備,情報処理,防災,保安などのあらゆる電源を確保する重要な責務を持っている。したがって受変電設備に対する高信頼度の要求は非常に高く,高度情報化社会への進展が顕著となるにつれ,電力は量よりもむしろ質への要求がより一層強くなっている。また最近は,受変電設備を構成する機器についても省エネルギー化,省スペース化,インテリジェント化への要求とともに,環境への配慮が必要となってきている。本稿では,受変電設備の最新機器について紹介する。
中西 要祐・湯谷 浩次・仁井 真介
電力品質ソリューションは,課題を抱えるお客様に対し,系統解析技術により,現象分析とその対策を検討し,各種の対策装置の提案から解決まで一貫したサービスを提供するものである。本稿では,需要家側,供給側の両者に対する対策を提供する電力品質ソリューションに対する考え方,課題と,それに対する富士電機の取組みについて紹介する。
桑山 仁平・岡林 弘樹・山野 博之
環境問題のクローズアップや電力市場での自由化の進展により,省エネルギーを目的としたエネルギー計測の需要が高まっている。富士電機ではこうしたニーズに対応した,エネルギー利用状況の把握,分析,対策の提案までを一連の省エネルギーソリューションとしてお客様に提供している。富士電機は省エネルギーソリューションを実現するための数多くのエネルギー計測ツールをラインアップしており,本稿では,それを活用したシステムの構築例とさらなる付加価値サービスへの展開について紹介する。
金子 英男・小山 守・腰 一昭
ESCOを適用したコージェネレーションシステム(CGS)は最小限の負担で大きな省エネルギー効果を得ることができることから,CGS普及促進の新形態として注目されている。富士電機は(株)シーエナジー,川崎重工業(株),岩谷産業(株),伊藤忠商事(株)とともに(株)エスエナジーサービスを設立し,この分野にいち早く取り組んでいる。本稿では(株)エスエナジーサービス松本事業所の熱電可変形CGS,運転支援システム,高速限流遮断装置の概要を紹介し,CGS建設にかかわる届出,補助金,運用について述べる。
仁井 真介
夜間電力を活用した負荷平準化は,電力ピークの削減と負荷率の上昇をもたらし,電力需給の安定確保,省エネルギー,CO2排出抑制,ならびに電力供給設備の投資抑制を通じた電力供給コスト削減などの利点をもたらす。本稿では,負荷平準化の種類と効用について述べるとともに,電池電力貯蔵装置としてナトリウム-硫黄電池,レドックスフロー電池ならびに双方向インバータの紹介と,ディンプル方式の氷蓄熱装置の紹介を行っている。また,負荷平準化による経済性検討の考え方についても述べる。
矢後 賢次・堀内 義実・長谷川 雅一
カーボンニュートラルかつ再生可能な資源であるバイオマスは,地球温暖化の防止,循環型社会の形成,新規産業創生などの観点から,その利用を推進していくことが求められている。富士電機では1999年からメタン発酵ガスによるりん酸形燃料電池の適用開発に着手し,良好な運転結果を得てきた。これをもとに2002年,下水汚泥消化ガスに適用した100kW りん酸形燃料電池を山形市浄化センターへ納入した。本稿では導入事例について,システムの概要,導入効果などについて述べる。
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注
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