富士時報
第76巻第5号(2003年)
情報ソリューション特集
横田 四郎・松浦 由武・殿原 秀男
経済は,右肩上がりの成長を確約された「つくり手の時代」から,「消費者の時代」へ実質的に変化し,企業や自治体は「顧客」に対して「明確な価値」を安価で供給することが使命となった。富士電機の情報システム事業は,知識の活用と弾力的な工場運用をソリューションの形で提供し,お客様のニーズに応える。本稿では,その狙いと展望について概説する。
久道 功
日本の製造業を取り巻く市場環境は一層の厳しさを増している。そして激変する市場環境に適合し,将来的にも生き抜くための「あるべき姿」を実現する仕組みの再構築が求められている。富士電機は製造業の仕組みの再構築,それを実現する情報システム構築サービスを提供する。情報システムに求められる要件は,迅速な経営の意思決定を支援するための経営情報や製造情報を提供するスピードであり,また環境変化への適合力を保つシステムの柔軟性であるといえる。本稿では,富士電機の考え方について事例を交えながら紹介する。
東谷 直紀・王 喜宏・鈴木 聡
製品企画から生産開始までのさまざまな活動の総合的支援環境を提供するデジタルファクトリーソリューションについて,その核となる次のシステムを紹介する。(1)新製品立上げプロジェクトの実行ノウハウを収集・共有化する「ナレッジフローシステム」。(2)生産ラインの能力情報および製造ノウハウを収集・有化する「生産ライン設備情報システム」。(3)生産ラインの設備情報を一元管理して提供する「生産設備台帳管理システム」。(4)生産ラインでの製品の組立性・加工性を事前検証する「生産シミュレーション支援システム」
津田 宗・水谷 博成
ディスクリート型製造業,すなわち電機・電子,機械などの加工・組立分野では,新たな生産システムの構築を模索するとともに,計画系システムと制御システムをつなぐMES(Manufacturing Execution System)の重要性が再認識されている。富士電機は,古くから生産現場のリアルタイム情報制御システムを納入しており,MESは最も得意とするところである。本稿では,富士電機の加工・組立分野MESへの取組みと各種事例を紹介する。
高橋 一仁・東谷 直紀
食品製造業を取り巻く環境は,顧客ニーズの多様化,製造ライフサイクルの短命化と厳しい状況が続き,市場変化に柔軟に対応できる生産の仕組みと食品の安全・安心の確保が求められている。本稿では,多品種少ロット生産に耐えうる柔軟な生産体制を構築するうえで重要な位置づけとなるMES(Manufacturing Execution System)および生産・製造,流通の各段階での食品の安全性確保を可能とする業界のキーワードであるトレーサビリティについてHACCPシステムを交え紹介する。
西田 廣治・伊藤 徹
電子政府,電子自治体構築の動きが活発化している。付加価値の高い住民サービスを住民の合意を得ながら提供することが求められており,複数自治体のシステム共同利用も具体化する方向にある。富士電機は文書管理システム,庶務事務システムを中心に納入実績を積んできている。本稿では,スピーディで質の高いサービスにより,行政評価の向上を実現する富士電機の「e-自治体ソリューション」について,概要とソリューションを効率的に機能させる基盤機能を中心に紹介する。
白井 英登・安東 圭司・小俣 昭浩
少子・高齢化社会の到来に伴い,地方自治体の現場レベルにおける保健・福祉サービス,特に高齢者,障害者など社会的弱者に対する社会参加への促進サービスの充実化は必須テーマとなっている。このたび,富士電機では,地方の中核都市である多治見市向けにWeb上での保健・福祉・医療向けの情報ソリューションを納入した。本システムでは,音声案内,文字拡大,タッチパネルなど,さまざまな操作性の配慮をしている。
永田 隆之・小久保直人・萩原 賢一
CALS/ECは,公共事業の計画・設計・入札から施工・維持管理に至る全プロセスの情報を電子化・共有して,開発期間短縮,コスト削減,品質向上などを図るものである。国の「CALS/EC地方展開アクションプログラム」策定に伴い,発注者側・受注者側ともに対応システムの整備に着手し始めている。本稿では,発注者向けおよび受注者向けのCALS/ECソリューションと,それらを支える基盤技術について富士電機の取組みを紹介する。
榊原 行良・野本 哲夫
都市部と地方の情報格差を是正するための情報化補助事業について紹介する。街中を光ケーブルで敷設し,出先機関をブロードバンドネットワークで接続する。地方公共団体における情報化基盤として位置づけ,CATVやインターネット接続サービスなどのアプリケーションを住民に提供する。また,富士電機の納入事例として,情報化先進自治体として北海道西興部(にしおこっぺ)村のシステムを紹介する。
中山 明子・篠之井洋彰・小谷 俊彦
農業には,生産・流通・消費にわたるさまざまな面からの変革が求められている。本稿では,農産物の品質向上という業界が抱える根本的な課題に取り組み,システム開発から商品化に至った事例を紹介する。本システムは,農業協同組合が生産者に対して品質改善指導をする際のデータ収集・分析を支援する営農指導支援システムを中心とした商品群から成る。販売支援システム,農薬の安全使用を支援する病害虫防除支援システム,統合的に整備したデータベースを活用し,トレーサビリティシステムに発展させている。
塩谷 滋・立石 辰男
米国エシェロン社が開発したオープンな知的分散制御ネットワークLONWORKS を基盤にした富士電機の社内外に対するマルチベンダー制御ネットワーク事業を紹介する。LONWORKSはインターネットを統合したシームレスな制御用ネットワークで,富士電機は2002年4月にエシェロン社と包括的パートナー契約(OSA契約)を結び,現在までに標準化推進,教育,技術サポートを含めて国内有数のLONWORKS対応・普及促進体制を築き上げている。説明には最近エシェロン社から発売された新製品の紹介を含む。
福田 英治・上村 猛
業務分野のエネルギー消費の伸びが大きく,1990年に対し2010年には1.7倍になると予測されている。この分野の省エネルギーが進まない理由は,省エネルギーを推進する技術者がいないことだといわれている。そこで,他力で省エネルギーが推進できるESCOが脚光をあびるようになった。富士電機は2000年度からESCO事業を開始し,2002年度までに4件の経験を得ている。本稿では,富士電機大阪ビルを事例として取り上げる。
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注
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