富士時報
第76巻第6号(2003年)
原子力特集
早川 均・三木 俊也・岡本 太志
富士電機はわが国の原子力黎明(れいめい)期から,各種原子炉の実験装置の建設,わが国初の商用原子力発電所の建設を担当し,その後一貫して国の原子力開発に貢献してきた。本稿では,富士電機の原子力技術の特徴と原子力開発への取組みを紹介する。富士電機は,ガス冷却炉技術,遠隔ハンドリング・メカトロニクス技術,廃棄物処理技術,超伝導応用技術など,特徴ある技術をもって,高温ガス炉,高速増殖炉などの新型炉開発,MOX燃料製造,原子力プラントの廃止措置,放射性廃棄物処理,核融合開発などの分野で貢献を続けている。
木曽 芳広・神坐 圭介・辻 延昌
近年,高温ガス炉ガスタービン発電プラントが最も実用化に近い次世代原子力発電プラントとして注目されている。富士電機は,日本初の原子力発電所である日本原子力発電(株)東海1号炉,日本初の高温ガス炉である高温工学試験研究炉(HTTR)の建設に携わり,日本におけるガス炉の先駆者として,設計・開発に取り組んできた。本稿では,最近の富士電機の高温ガス炉への取組みとして,空冷方式を採用したHTTR使用済燃料貯蔵施設,HTTR用材料試験装置および固有の安全特性を積極的に活用した実用高温ガス発電プラント開発について紹介する。
林 裕至・荒井 康・吉村 哲治
富士電機は,国家的プロジェクトとして開発が進められている高速炉開発に参画し,高速実験炉「常陽」,高速増殖原型炉「もんじゅ」の燃料取扱設備,放射性廃棄物処理設備などを建設するとともに,高速炉の実用化のための枢要技術の開発に取り組んでいる。本稿では,富士電機の高速炉技術開発の概況と,その中で,「常陽」の燃料取扱設備の遠隔監視システムを取り込んだ自動化,新型燃料交換機の開発について紹介する。
乾 俊彦・永野 正規・山田 裕之
富士電機は,核燃料製造分野の取組みとして核燃料サイクル開発機構による技術指導のもと,プルトニウムとウランの混合酸化物燃料であるMOX 燃料製造にかかわる数々の設備を納入してきた。これらの設備は,燃料製造技術のさらなる信頼性向上と経済性を追求し,設備のコンパクト化・合理化とともに設備稼動率向上および信頼性向上を目指したものである。本稿では,燃料製造分野への取組み状況,ならびにこれまでに納入したペレット仕上検査設備と保管庫搬送設備の概要について紹介する。
藤沢 盛夫・片桐 源一・金子 能成
富士電機は,新型転換炉「ふげん」,高速増殖炉「常陽」「もんじゅ」の廃棄物処理設備を設計・製作した実績がある。液体廃棄物の処理に自然循環型の蒸発缶を採用し,気体廃棄物の処理用に高性能の活性炭吸着塔を開発した。固化処理には,マイクロ波方式を採用した。近年は,使用済樹脂の高減容処理を行う高周波誘導結合(IC)プラズマ廃樹脂減容処理装置を開発し,大型の実証プラントを川崎地区に設置し,コールド試験を行っている。固体廃棄物の切断用にパルス型YAG レーザも開発した。
白川 正広・児玉 健光
営業運転を終了した原子力発電所をはじめとする原子力施設は,廃止措置と呼ばれる段階に入り解体・撤去される。わが国では,1998年3月末に停止した日本原子力発電(株)の東海発電所から始まり,「ふげん」や軽水炉がそれに続き,今後,増加していく。富士電機は,プラント建設などで培った経験・技術を生かして,この分野に必要な技術開発に取り組んでいる。本稿では,原子炉遠隔解体技術をはじめ,廃棄物処理・処分技術などに関する最近の開発状況を紹介する。
上出 俊夫・今野 雅行・樋上 久彰
富士電機では四半世紀以上にわたって各種超伝導機器の開発を行ってきている。本稿では,これまでに開発した超伝導機器のうち,特に核融合分野への適用を目指し開発を進めている大容量電流リード,超伝導送電システムについて,開発成果を述べる。また,現在,超伝導分野の主流となりつつある高温超伝導体(HTS)を用いた機器の最近の開発成果として,HTS浮上コイルおよび伝導冷却型HTS 変圧器を紹介する。
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注
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