富士時報
第80巻第5号(2007年9月)

特集 応用が広がるドライブ・自動化システム機器
(1) インバータ・サーボシステム
(2) プログラマブル制御機器・システム

(1) インバータ・サーボシステム

ドライブ制御機器の現状と展望

吉田 雅和・松本 吉弘・藍原 隆司

汎用インバータやサーボシステムなどのドライブ制御機器は,機械や設備の自動化,省エネルギー化に寄与しながら今日に至っている。また,適用分野の拡大とともに,ドライブ制御機器単体として,機能・性能の向上,小形化・低価格化を図ってきた。最近ではRoHS指令などに対応した有害物質の使用排除や,グリーン調達の拡大による地球環境保護への対応,特定分野における電子部品の硫化ガス腐食対策など,新たな要求に応えた製品開発も進めている。本稿では,インバータ・サーボシステムの技術動向と製品系列について紹介する。

高性能・多機能形インバータ「FRENIC-MEGAシリーズ」

近藤  靖・田島 宏一・山嵜 高裕

汎用インバータの性能・機能は大きく進展し,その応用範囲は単純可変速駆動装置から工作機械,水平・上下搬送機へと拡大してきた。このような状況のもと,従来の汎用インバータを超えた,幅広い用途・設備への対応力が要求されている。これらの要求に応えるために,今回,汎用インバータの最上位機種として,制御性能,設備適応力,環境適合性を大幅に向上させた「FRENIC-MEGAシリーズ」を製品化した。本稿では,その特徴を紹介する。

空調熱源システム用インバータ「FRENIC-Eco Plusシリーズ」

井上 幸雄・来馬 守宏・大山  勉

インバータ化による省エネルギー効果の高いファン・ポンプ用途では,古くから汎用インバータが適用されてきた。しかし,これらのアプリケーションの一つである空調熱源システムでは,温度,圧力,流量を制御対象としており,外部のコントローラで制御を行っていた。これら空調熱源システムに対し,最適なHSAC機能を搭載する「FRENIC-Eco Plusシリーズ」を開発した。本稿ではその特徴を紹介する。

広がりをみせるエレベータ用インバータ「FRENIC-Liftシリーズ」

野村 哲也・米澤 裕之・加藤 宏明

近年のエレベータ業界は,永久磁石型同期モータを使用したギヤレスエレベータが世界的に普及し,インバータはより高度な性能が要求されている。また,欧州では旧式のエレベータをインバータ化する事業があり,速度センサなしでの運転が求められる場合がある。エレベータ用インバータ「FRENIC-Liftシリーズ」に,これらの要求に応える機能を搭載した。本稿では,広がりをみせるFRENIC-Liftシリーズの応用について事例を交えて紹介する。

マトリックスコンバータ「FRENIC-Mxシリーズ」

佐藤 和久・山田 達也・高岸 達也

インバータの適用範囲が広まっている中,電源高調波や発生損失の低減,制動エネルギーの電源回生など,環境への適合性が重視される傾向にある。今回開発した「FRENIC-Mxシリーズ」は,従来のインバータのように入力交流電圧をいったん直流に変換することなく,入力交流電圧から直接任意の出力周波数,電圧の交流を発生でき,モータが発生する電気エネルギーを電源に回生する機能とともに,入力電流の高調波が少ないといった特徴を持つ。本稿では,これらの特徴やインバータとの違い,運転特性例などを交えて紹介する。

高性能・コンパクト形インバータ「FRENIC-Multiシリーズ」の過負荷停止機能

樋口 新一

汎用インバータは,多機能化,高性能化が進み,その用途はますます拡大している。本稿では,「FRENIC-Multiシリーズ」に搭載したユニークな過負荷停止機能について紹介する。特に,新たに搭載した過負荷停止機能の一つである当て止めは,過負荷を検出するとモータのトルクを維持したまま減速し,減速後は当て止めトルク(押し当て力)を得られるという特徴がある。本機能の動作原理,応答性,安定性や従来機種との特性比較について詳細に述べ,本機能を生かした具体的な適用例を示す。

汎用インバータの硫化ガス対策

青山 昌弘・藤井 龍文・塩川 国夫

電動機駆動用インバータの普及に伴い,腐食ガスの環境下でインバータを使用する機会が増えており,特にインバータの硫化ガス対策を実施することが要望されている。このような要望に応えるために,硫化ガス環境で耐用年数を向上させたインバータの対策仕様を策定した。本稿では,未対策インバータの実力レベルの確認,対策が必要な箇所の洗い出し,インバータの寿命予測方法,対策仕様の策定について紹介する。

高性能サーボシステム「ALPHA5シリーズ」

中山 智晴・津崎 加代・松本 寛之

高性能と使いやすさといったサーボシステム市場のニーズに応えるため,「ALPHA5シリーズ」を新規に開発し,製品化した。本シリーズでは,周波数応答1,500Hzといった高応答化,20ビットエンコーダの採用による高精度化といった基本性能の向上を図るとともに,オートノッチフィルタ,新制振制御などの機能を搭載し,立上げ調整時間の短縮を実現している。また,小型化,長寿命設計,USB通信対応のパソコンローダといった使いやすさにも傾注した。本稿では,これらの特徴と仕様について概要を紹介する。

モーションコントロールシステムの適用事例

羽鳥 秀夫・羽鳥 秀夫

富士電機のモーションコントロールシステムは,専用モジュールを必要としないことを特徴としており,搭載するモーションソフトウェアを入れ替えたり,ソフトウェアの柔軟なカスタマイズに対応することにより,広範な分野の機械に適用することができる。この特徴と,高性能・高精度な新型サーボシステム「ALPHA5シリーズ」との組合せによる相乗効果で,機械の飛躍的な性能向上に貢献している。本稿では,最新の適用事例を基に応用技術を紹介する。

(2) プログラマブル制御機器・システム

プログラマブル制御機器の現状と展望

小髙 秀之・大原 浩一

自動化システムは,プログラマブルコントローラ(PLC),プログラマブル操作表示器(POD),インバータ,サーボシステムなど,多くの製品で構成されている。これらは近年,ネットワーク接続対応の促進や性能向上により,大規模分散システムや従来とは異なる分野への適用が進んでいる。同時に,自動化システムの信頼性と開発効率の向上,多機能化と低コスト化が求められている。

統合コントローラ「MICREX-SXシリーズ」の新冗長化システム

下川 孝幸・吉原 大助

統合コントローラ「MICREX-SXシリーズ」は,システムの安全性および信頼性を向上させる冗長化機能に対応し,安全性・信頼性確保とコスト低減の両立を追求している。本稿では,監視制御,データ収集機能を大幅に改善したCPUモジュール「SPH2000シリーズ」に冗長化機能をサポートした機種について紹介する。SPH2000シリーズの冗長化は,Ethernet技術応用による高速大容量等値化などを特徴としている。

ボードタイプ汎用PLC

斉藤  豊・長谷 淳一

近年,プログラマブルコントローラ(PLC)の応用分野はオープン化・多機能化をはじめとして多種多様に拡大・発展を続けており,PLCに対する市場要求は尽きることがない。統合コントローラ「MICREX-SXシリーズ」は発売当初から「グローバルなシステムコンポーネント」をコンセプトとして的確に市場要求に対応してきた。本稿ではMICREX-SXシリーズの技術を応用したボードコントローラについて紹介する。

透過通信によるリモート支援の強化

松本 雅好・福島 幸治・須長 祐悟

通信技術の急速な進展により,生産システムにおいてもネットワークを介した生産管理・保守が一般的である。生産管理部門から生産現場への生産指示,稼動監視など,リモート操作の充実化へのニーズは日々増大している。この課題解決のために,「MICREX-SXシリーズ」では,生産管理用の上位パソコンからEthernetなどで接続されたPLCを経由し,その下位のネットワークに接続されるインテリジェント機器へ透過的に情報を伝送できる「透過通信」機能を搭載した。本稿では,透過通信機能によるリモート支援の強化について紹介する。

多軸機械制御装置「簡単NC」パッケージ

相田 忠勝・田尻 賢二

一般産業機械にプログラマブルコントローラ(PLC)やプログラマブル操作表示器(POD)が使われているが,それぞれの機械ごとに制御プログラムと機械運転用の加工プログラムを開発し,PLCやPODに組み込む必要がある。本稿では,統合コントローラ「MICREX-SXシリーズ」の制御プログラムと,PODの加工プログラム編集機能をパッケージ化した「簡単NC」パッケージについて紹介する。

PLC・PODを適用した「SXかんたん計装システム」

伊藤 広治・若井 大資・比留川賢二

近年,プログラマブルコントローラ(PLC)やプログラマブル操作表示器(POD)など,汎用制御コンポーネントの機能・性能が飛躍的に向上し,従来はDCS(分散制御ステム)を適用していた水処理,鉄鋼,化学,薬品,食品などの業種における計装制御分野でも,これらの適用が拡大している。本稿では,PLCとPODを使って計装制御システムへ適用するためのエンジニアリング作業を飛躍的に効率化する「SXかんたん計装システム」を紹介する。

大規模・高速制御用拡張形CPU モジュール「SPH300EX」

石原 俊幸・永塚 一人

統合コントローラ「MICREX-SXシリーズ」では,最適な制御システムを構築するための革新的なハードウェアモジュールを提供してきている。CPUモジュール「SPH300シリーズ」の強化を目指し,多軸モーション機械などで要求される大規模な入出力容量の確保とこれを高速に同期制御するための実行エンジン,SXバスをそれぞれ2系統搭載した。本稿では,処理能力の飛躍的なランクアップを図った高性能な「SPH300EX」を紹介する。

新型プログラマブル操作表示器「UG40 シリーズ」

佐藤 晋哉・和田 太志

プログラマブル操作表示器(POD)はFA分野を中心にして,年々その役割が大きくなり,市場規模も拡大の一途をたどっている。こうした中で,機械や装置の高機能化・複雑化に伴う,PODへのユーザーニーズもますます多様化し,高度化してきている。さらに開発期間の短縮が求められるようになり,ユーザーの使い勝手や利便性の向上に注目の目が向けられるようになってきている。本稿では,こうしたユーザーの新しい要求に応えるべく開発した,新型POD「UG40シリーズ」を紹介する。

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