富士時報
第60巻第4号(1987年4月)
自動化を推進するシステム技術特集/ソフトウェア生産技術特集
特集論文(自動化を推進するシステム技術)
自動化システムの動向
吉田 昌弘,香川 崇明
産業の生産活動の歴史は自動化システムの歴史である。ここでは、これからの事業展開を分析し、自動化システムを考察した。事業としてコスト重視形とソフト重視形があり、更に後者には、先端技術直結形と先端マーケット直結形がある。今後は、ソフト重視形が重要であり、そこでのポイントは"高度な柔軟性"の実現である。それはホロニックなオートメーションシステムによって実現されてくる。ホロニックとは、インテリジェント分散とネットワークによる"部分"の協調・完結性と"全体"の同期・統合性を意味する。
富士電機における自動化システムの展開
黒岩 重雄,斉藤 幸則,榎谷 端夫
富士電機の自動化システムの体系と基本的な考え方を述べた。各種コンピュータと電機用プログラマブルコントローラPC、計装制御用分散制御システムDCSの階層的構成が、2階層のLANを用いて統合的システムを構成できる。コンピュータとしては、パーソナルコンピュータレべルから汎用機に近いレベルまで各種の機種が提供可能であり、各種のFA/CIMに対応できる。これらを用いた代表的な応用例も示した。
自動化システムにおけるネットワーク
榎谷 端夫,谷本 雅之,野中 正樹
自動化システムにおける階層構成を構築する主要な要素であるネットワークシステムについて、その全容を述べた。CIMを構成するネットワークは、各レベルにより要求機能、要求性能が異なる。富士電機は、OA分野向けLANをはじめ、FA,PA分野向けLANまで一貫したネットワークシステムの提供が可能である。各レベルのLANの用途・特長を述べ、今日、国際的に注目されているMAPの取り組みについて述べた。
自動化システムを構成する情報機器
須山 悦明,渡辺 裕,水津 佳紀
富士電機における自動化システムを構成する情報機器について、その開発・設計思想に触れ、併せて、その代表的なコンポーネントであるミニコンピュータ、マイクロコンピュータ、制御用システムコンポーネント、産業用プログラマブルコントローラ、マイクロステーションについて主な仕様をまとめ、それぞれのシステム構成例を示した。
自動化システムを構成するソフトウェア体系
横山 常昭,長友 安之
自動化システムがPA,LA,FA,SAなど種々の分野で使われるようになるにつれ、ソフトウェアについても、ソフトウェアの統合化、プログラミングレスのソフトウェア作成、分散化システムや人工知能の応用など新しい動きが見られる。これらの動きに対する富士電機の自動化システムのソフトウェア体系を、ベーシックソフトウェア、パッケージソフトウェア、ネットワークサポート、人工知能構築ツールなどの諸面から整理して、最近の考え方とその特長について述べた。
特集論文(ソフトウェア生産技術)
富士電機におけるソフトウェア生産技術への取り組み
磯貝 裕久,大山 泰司,神原 貞夫
ソフトウェアの役割は以前にも増して重要度を増し、従来のコンピュータ部門以外でも必要とされるようになってきている。そのためソフトウェアの開発環境はコンピュータ部門のみならず、関連する部門も含めた総合的な環境を必要としており、富士電機は過去の実績により培われた技術を生かし、エンジニアリング部門を含めた総合的なソフトウェア開発支援システムCASE(Computer Aided System and Software Engineering)システムを構築している。
制御エンジニアリング業務支援システム:CASE
長友 安之,古村 紀夫,長尾 英夫
富士電機では制御エンジニアリング業務全般にわたる部門間連携による業務改善と機械化に取り組み、CASEシステムの構築を進めている。ハードウェア的には部門間連携を支えるネットワークがあり、大形コンピュータや各部門に配置されたワークステーションが接続されている。各部門の業務を支援するツールは汎用性の高いツールを用いて実現されている。更に、業務分析・改善やシステム構築を継続的に進めていくためのCASE化技術がCASEシステムの大きな特長となっている。
プラント制御における要求定義支援システム
田口 嘉之,小平 和正,阿武 英文
プログラマブルコントローラの高機能化に伴いプラント制御の内容もますます高機能化、複雑化しており、制御用ソフトウェアの生産性、品質の向上のための対策を急ぐ必要がある。コンピュータのソフトウェアにおいても同様な問題をかかえており、要求定義技術、支援ツールの研究が進んでいる。
富士電機は、知識工学を応用した要求定義支援システムをプラント制御の分野に適用すべく開発を進めている。
制御用コンピュータシステムのソフトウェア生産技術
佐藤 實,亀山 素和,斉藤 文弘
制御用コンピュータシステムのソフトウェアは、近年、ミニコンピュータの高機能化、高性能化によって複雑かつ膨大な量に及んでいるが、その生産活動はいまなお人間の知的活動に多くを負っている。
富士電機では、ソフトウェア生産における品質確保、向上のために設計、製作、試験の各工程をカバーするソフトウェア自動生産システムを開発した。本稿では、上下水道プロセスを適用対象とするFAINS(Fuji Aqua INformation System)のソフトウェア自動生産システムを紹介した。
プログラマブルコントローラシステムのソフトウェア生産技術
紙本 博史,乳井 直樹,吉田 裕
PCは身近で便利な制御装置として不可欠なものとなっており、需要は年々増大してきている。これに伴い、PCに搭載するソフトウェアの生産性向上、品質向上及びソフトウェア設計者に依存する不必要な個人差をできるだけなくすことが問題となってきている。
本稿は、これらの問題解決のため、AIの導入、SFCの採用、合理性チェックなどの新しい機能を搭載したソフトウェア生産支援システムを中心に紹介した。
普通論文
東京電力(株)配電自動化コンピュータシステム
福田 康正,大橋 一弘,堀口 浩
東京電力(株)と富士電機は、共同研究により、配電自動化コンピュータシステムを開発し、1986年3月、神奈川支店平塚営業所に設置した。
このシステムは、東京電力(株)の給電、変電、配電をネットワーク化した設備総合自動化構想の下に、配電系統運用・管理業務の効率化と、より一層の供給信頼度の向上をねらいとし、特にマンマシンの「わかりやすさ」と「使いやすさ」並びに頻繁に行われる設備変更に対する「データメンテナンスの容易性」を最大限に追求している。
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注
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