富士時報
第60巻第7号(1987年7月)
自動販売機特集
石井 威望
井上 恵司,村上 博武
昭和61年末で日本における自動販売機の普及台数は524万台に達し、自動販売機による年間販売金額は3兆7,500億円に達している。
最近の自動販売機は、ファッション化、大形化、多機能化が一段と進み、制御システムは、マイクロプロセッサによる分散制御システムが増えている。また、カード利用システムや販売情報管理システムなどの情報化が進んでいる。
上田 治幸,萩野 憲三,冠野 恭範
サーペンタイン式冠自動販売機に対する最近の市場ニーズとして、デザインのファッション化、販売商品の多様化、多セレクション化、市場条件の多様化、省エネルギー志向がある。これらのニーズへの対応を図るため、ファッション性のあるラウンドデザイン、ANQBラック、五重サーペンタインラック、3室一体化庫内、3室1コンプレッサ式冷却装置を開発し、品質の向上を図りながら富士サーペンタイン式缶自動販売機の新シリーズを完成した。
本稿では、新シリーズ特長と主な構造について報告した。
小田 威夫,宮尾 哲也,田中 潔
缶入り飲料から各種容器に入った飲料を販売する併売用自動販売機は、年々、多セレクション化、大形化、多機能化が進むとともに、デザインに対する要求、すなわち自動販売機としての集客力を求める声が高くなってきた。このような市場ニーズの中で、従来デザインを刷新したラウンドデザインの採用、多セレクション化にはマルチラックの開発、多機能化には新制御システムの開発を行うことにより、本シリーズ機の開発に取り組んだ。
芦谷 秀夫
富士ホットアンドコールド、缶/紙パック併売自動販売機は、従来の紙容器入り飲料に加えて、缶、ドリンクの瓶飲料を販売可能とし、また、庫内を過熱できる構造の確立により新商品のホット用紙容器に対処した。更には、ローディング性、汎用性に優れ、収容効率の高い新直積み式販売機構の完成、デザインのファッション化、マイクロコンピュータ採用による多機能制御システム化により多様化する市場ニーズに対応する機械を開発した。
本稿では、それらの仕様、特長、構造の概要を紹介した。
中村 繁光,高木 利夫,福井 一夫
富士レギュラーコーヒー自動販売機は、昭和52年に第1号機を発売して以来、消費者の味覚の高級化、本物志向にマッチした商品として好評を得ている。このたび、市場ニーズに基づき、短時間で高濃度抽出ができる新形コーヒーブリュアを開発し搭載した新形機を完成させた。本稿では、コーヒーブリュアを主体に特長、構造について紹介した。
岩波 正夫,水谷 克己,太田 春夫
カップコンビネーション自動販売機は、オペレータにとって、夏期、冬期の売上げが平均化できるため、1台当たりの利用率の高い機械である。
本シリーズは、(1)衛生面のより一層の充実(2)いたずらなどを防止した移動式ベンドステージの搭載(3)顧客の多様化に対応する3種バリアブルカップ機構の搭載(4)集客力を向上させるざん新なラウンドデザインなど、多くの機能面、操作面での充実を図り、市場ニーズに対応したものである。本稿ではその特長、構造を紹介した。
大塚 義則
富士アイスクリーム自動販売機は、昭和56年、富士電機としてはじめて冷凍域自動販売機として開発を行って以来、市場で好評を得てきた。しかし、近年の市場ニーズは大幅に変化し、顧客は多セレクション大収容量機を要求するようになってきた。
今回、市場ニーズに合わせて開発した多セレクション大収容量機は、庫内のベンドラック及び内扉構造には、耐氷結性能を従来機以上に向上させ、また、外扉デザインは若い女性心理を取り入れたユニークなものとなっている。
桑木 政美,指川 好宏
自動販売機は、複合化、多機能化の進展に伴い、マイクロコンピュータを搭載した電子制御が主流になってきた。その中で、最近開発した分散制御システムを本稿で紹介した。その分散制御システムをVTSと呼び、自動販売機の機能をモジュール化しておき、各モジュールを組み合わせてシステムを構成するものである。特長は、(1)機能の変更・追加が容易(2)設計効率が良く短納期でシステム開発ができる(3)メンテナンス費が安い(4)配線数低減による組立作業性が良い、などがある。
桑木 政美,大森 明
自動販売機のリモートコントロールは、商品の価格設定などの操作部をワイヤードパラレル方式としたリモートコントロール制御システムである。
主な特長としては、(1)操作部のリモートコントロール化により自動販売機の正面で実物の表示、押しボタンで確認しながら設定、確認ができる(2)操作部は着脱可能で1台に1個でも、30台位に1個でも対応可能で自由度が高い(3)売上集計機能により効率の良い運用管理や故障診断機能によりメンテナンス性が良い、などがある。
山本 斉
最近の磁気カード応用は、日本電信電話(株)のテレホンカードやJRグループのオレンジカードに代表されるように、急速に普及してきている。このような背景の中で、富士電機も自動販売機や食堂管理にカードを応用した各種のシステムを開発している。本稿ではこれらのシステムのうち、既に開発を終了し実用化に入っている技術、機器を紹介した。また、実用化に向けて大きな課題となった既設自動販売機のカード対応化、前払いカードの残金清算手段、後払い方式での清算データ処理手段などについては、その対応策にも触れた。
梶村 亨,井上 正喜,海野 覚
日本電信電話(株)のテレホンカードは、発売以来人気を博すとともに、需要は増加の一途をたどり、昭和61年度においては、その年間販売数がついに1億枚を突破した。
富士電機では、従来自動販売機の中身商品といえば食品が中心であったが、今回、情報メディアとも言えるテレホンカードを売る自動販売機を開発した。本機は、お買上伝票発行機能や外部からの衝撃を検知する盗難防止装置を備えて、高額商品販売への対応を図っている。本稿では、これらの特長、仕様、構造について紹介した。
伊藤 肇,鎌倉 武
日本電信電話(株)が東京・三鷹地区で昭和59~61年にわたり、INS(高度情報通信システム)についての運用実験が行った。富士電機もこれに参加し、モデルシステムの一つとして自動販売機群管理システム及びストア群管理システムの運用実験を行い、情報伝送システム(INS)についての、実用化技術の確立とシステム機能の確認、その経済性並びに収集した情報の活用、利用とその評価を行ったのでその概要を紹介した。
横森 伸二,高橋 光伸,宮下 茂光
中・大形機の自動販売機ばかりではなく、小形自動販売機にも紙幣識別機が搭載されるケースが増えており、このため自動販売機における通貨処理の傾向として、小形の紙幣識別機及び紙幣識別機併用に適する釣銭容量の大きいコインメカニズムが開発された。
また、自動販売機制御部とのインタフェースにおいては、シリアル伝送方式のコインメカニズム、紙幣識別機が開発された。
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注
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