富士時報
第61巻第6号(1988年6月)
統合化制御システム特集
川上 拓,神原 貞夫
従来から統合形分散制御システムを開発してきたが、最近、マイクロエレクトロニクスの発展などにより、電気制御システム、計装制御システム及びコンピュータ制御システムの統合化がいわれるようになってきた。このような動向に対して、統合形分散制御システムをベースにして、新しい統合化制御システムを構築している。その時代的背景である産業界の動向、技術動向と富士電機システムに関する社内外の活動を紹介するとともに、将来のシステムについても展望する。
横山 常昭,杉浦 英徳
富士電機の統合化分散制御システムについて、そのコンセプト、統合化の概要、ねらいなどを述べる。分散方式と機能分担及び統合化の構想を説明し、次に実際のシステムの構成と統合化機能の概要をネットワーク、MMI装置、コンポーネントの標準化、データ管理、支援機能などに分けて紹介し、あわせて富士電機システムの考え方を説明する。更に、統合化システムのねらいと留意点を高機能・高性能化、操作・監視性、保守・拡張性、高信頼化などの側面から検討し、説明する。
野尻 裕昭,白子 宗治,石川 徹男
富士電機は、より効率的な制御システムを目指して電気、計装、コンピュータ一体の統合化制御システムの構築を推進している。
統合化のポイントは、データ構造の共通化、マンマシンオペレーションの思想統一、プログラミング手法の統合など、ソフトウェア技術による機能構築が主体となるが、ハードウェア面からみると、各種コンポーネントのアーキテクチャの統一、ネットワークの標準化などが需要な項目になる。本稿では制御システムを構築するハードウェアについて、技術的ポイントと具体的製品について述べる。
横山 常昭,大柴 正清
分散形制御システムのソフトウェアについて、機能構造・情報構造とシステム全体管理の面から、一般的な考え方富士電機の対応方針を述べている。次に分散システムにおけるソフトウェア基本構造の考え方を述べ、問題点を整理する。更に富士電機の統合化制御システムとして実現している統合化データ管理(FSINET)、MMI装置の統合化、ソフトウェア開発支援の統合化サービス(FAISES)について、その基本的な考え方を説明している。
最後に富士電機の今後の展開について触れる。
榎谷 端夫,谷本 雅之,垣堺 健
産業分野におけるネットワークシステムにおいて、マルチベンダ環境を提供するオープンシステムアーキテクチャの重要性が認識されてきており、このニーズに対して、ISO及びIECを中心とした国際標準化活動が積極的に展開されている。OSI、MAP、TCP/IP、フィールドバスの標準化動向を紹介している。この動向に対し、統合化制御システムにおける富士電機のネットワークの概要、及びオープンシステムに対する今後の取組みについて述べる。
野中 正樹,村上 敬三
プラントを制御するシステムの形態は、危険分散・段階的なシステム構築を可能とする分散処理化の傾向にある。分散配置された各コンポーネントを組み合わせていく場合、異機種間接続、運用・メンテナンス・コストのシステム全体に占める割合は年々増大している。この解決を図るのがトップダウン的に統合化する技術であり、中心となるのは相互間のネットワークプロトコルとデータの一元管理である。本稿では、以上の技術に関し、統合化データ管理ソフトウェア(FSINET)について、その概要を紹介する。
萩原 晴嬉,小山 深,生駒 雅一
近年のマイクロコンピュータの発展・普及は、プラント制御システムの構築方法に需要なインパクトを与えた。特にマンマシンインタフェース(MMI)装置について言えば、従来、電気(E)・計装(I)・コンピュータ(C)制御分野ごとに対応していた。マイクロプロセッサなどの飛躍的技術進歩に伴い、それぞれの境界の見直しと、コスト削減の要求にこたえ得る統合化マンマシンシステムの提供が望まれている。そこでEIC結合化MMI装置として、具備すべき技術的項目と現状について紹介する。
川原 浩,田中 裕平
制御システムの支援システムも単に一つの分野、一つのセクション、一つの機器をサポートしていく時代は終わって、統合的にサポートしていく時代に入ってきており、ソフトウェアの占めるコスト比率の増大に伴い、ますますその重要性は高まってきている。CIM化の動きと相まって、社内エンジニアリングの合理化を目指すCASEシステムを核として、分野別支援システムのCATS、FRENDSシステム及びDCSの統合化エンジニアリングサポートパッケージとしてパーソナルコンピュータ上で動くFAISESについて紹介する。
田中 春樹,吉田 裕,小平 和正
制御用ソフトウェアが大規模化・複雑化するにつれて、いかに効率良く、高品質なソフトウェアを工業的に生産していくかが大きな課題となる。このためには、基盤となる言語を統一することによりソフトウェアを統合し、それに対し工学的アプローチを行うことが不可欠である。ソフトウェア結合のための言語として、関数型中間言語FCLを開発した。本稿では、制御用ソフトウェア統合化におけるFCLの役割、その設計思想、及びFCLをベースとしたソフトウェア生産システムの例を紹介する。
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注
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