富士時報
第61巻第9号(1988年9月)
配電自動化技術特集/予防保全技術特集
特集論文(配電自動化技術)
配電自動化技術の現状と展望
谷川 雅郎,大橋 一弘
情報化社会の進展につれ、電力供給への高品質化、高信頼度化の要請が高まり、この対策として各電力会社において配電自動化システムの整備が急テンポで進められている。ここでは、現在実用化されている開閉器遠隔監視制御システムを機能別に分類し、その特徴を比較している。また、配電総合自動化システムを構成する自動検針、負荷集中制御、需要家情報サービスなどの各システムが開発されつつあり、これらの技術開発動向について紹介する。
東京電力(株)配電自動化コンピュータシステム
横山 知弘,渡辺 計二,小林 彰
電力の安定供給に対する社会的要請が強まっている背景において、配電系統に対する運用の高効率化、業務省略化、より一層の供給信頼度の向上を目的とし、コンピュータを用いた配電自動化システムの開発が進められている。
本稿は、東京電力(株)沼津支店大仁営業所と茨城支店常陸大宮営業所に昭和63年年3月設置した、「音声を用いたマンマシンシステム」設備変更に対する「メンテナンスの容易化」などの機能を搭載した、配電自動化コンピュータシステムの概要を紹介する。
関西電力(株)開閉器遠隔制御システム
湯川 英彦,桑山 仁平,寒河江繁市
関西電力(株)と富士電機は、配電系統の運用業務を効率化・高信頼度化し、停電時間を短縮することを目的とした開閉器遠隔制御システムを開発し、実系統での試験運用を開始した。
本システムは、地理的に広がった膨大な設備からなる配電系統の制御を行うことから、フェイルセイフ、メンテナンスフリーなどの基本方針のもとに設計が行われた。
本稿では、開閉器遠隔制御システムの概要を示すとともに、これらの設計基本方針に根ざした仕様上の特徴について紹介する。
中部電力(株)配電線自動化システム
宮田 利昭,上保 龍ニ,小林 芳邦
配電系統の電力供給信頼度の向上と、系統運用の効率化を目的とした、配電線自動化システムを開発し、昭和62年3月に、中部電力(株)長野営業所、豊橋営業所に納入した。
このシステムは、操作性の向上、装置の小形化、高信頼度化及びフェイルセイフ方式の強化などに留意した設計としている。特に子局制御装置は、マイクロコンピュータ搭載機器であり、屋外柱上設置という過酷な自然環境さらされていることから、温度上昇、防水性、耐サージ性能などの耐環境性に対し優れた性能を有している。
自動検針システム
飯島 輝明,富島 和夫,村田 和久
自動検針システムは、広範囲に分布する需要家の計量値を伝送路を使って自動的に集約するものであり、現在、実用化に向けて研究が活発に行われている。自動検針の研究は昭和40年代に始まり、現在ではデータ収集のほかに、種々の機能、例えば負荷集中制御、ロードサーベイなどを取り込んだシステムが検討されている。また伝送路としては配電線搬送、専用線、加入電話線、更に光ケーブルがある。
本稿では、自動検針システムの技術動向として、システムの機能、伝送路、ハードウェア及び課題などについて説明する。
特集論文(予防保全技術)
火力発電設備における予防保全技術
大野 芳一,三村 一郎,近藤 栄作
設備の老朽化に伴って、その長寿命化が図られつつある。また、頻繁な起動停止を行う過酷な運用が高まっている。この条件のもとで、電力を安全供給するためには、予防保全技術が必要不可欠である。蒸気タービンについては、余寿命診断技術の方法とその実施例について紹介する。またタービン発電機については、主要部品の経年劣化とそれに対する保守項目、部品の寿命評価そして保護監視技術の概要を述べる。
変電プラントにおける予防保全技術
岡本 達生,金子 英男,堤 睦生
近年、センサ技術、データ処理技術の進歩により、変電プラントのためのいろいろな予防保全・異常診断技術が開発された。
機器監視システムは、その中心になるものである。
本稿では、機器監視システムの必要性について述べ、更に富士電機がこれまでに開発してきた変電プラント、特に、変圧器及び開閉装置を中心とした、予防保全・異常診断技術の概要を紹介する。
開閉装置の診断システム
八木裕治郎,岩井 弘美
近年、変電所の無人化による保守範囲の拡大、設備の老朽化が進む中で、保守のより一層の効率化・高度化及び予防・予知保全技術の適用による設備の信頼度向上が要望されている。
本稿では、四国電力(株)今治変電所に設置したGISの状態をオンラインで自動監視するGIS監視システムと中部電力(株)との共同研究にて開発した可搬形で巡視点検時に使用する遮断器動作特性測定器(CB-MEC)について、その概要を紹介する。
変圧器の油中ガス自動分析と診断
清水 康次,関本 雅之,内藤 裕宣
油中ガス分析による油入機器内部の異常診断法は、数多くの研究と実績の積み重ねにより、現在では予防・予知保全技術の一つとして定着している。富士電機ではこの技術分野において、油中ガス自動分析装置(GIO)と、変圧器異常診断エキスパートシステム(TREX)とを有機的に結合した診断技術を開発している。これらの装置についての概要を紹介する。
高圧回転機の絶縁診断技術
夏目 文夫,伊藤欣二郎,芳賀 弘二
高圧回転機はいろいろな産業分野で使用されており、いずれも重要な役割を担っている。近年の傾向として、10年あるいは20年以上の長期にわたって使用された機械の割合が多くなってきており、そのためこれらの機械に対する絶縁診断の必要性が大きく増してきている。
本稿では、診断のベースとなる絶縁劣化現象の大要、及びそれに基づいて開発、運用されている富士電機の絶縁診断システムの概要を述べるとともに、絶縁診断に関する最近の研究を二、三紹介する。
普通論文
インテリジェント形遠隔監視制御装置
安藤 皓二,佐藤 桂一,柴田 裕一
発変電所監視制御システムには、高機能なシステムへの要望、情報量や内容・速度などに対する高度化への要求がある。これらのニーズに対しては、現在のサイクリック方式テレコンでは対応が困難であるため、中部電力(株)と共同研究によりHDLC伝送方式を用いたインテリジェント形テレコン(ITC)の開発を行った。本稿では、伝送方式、装置構成、インテリジェント機能について紹介するとともに、正確な時刻付加に必要な高精度時計装置についても合わせて紹介する。
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注
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